今、人事部に求められる役割は何でしょうか。そもそも人事部は誰のために存在して、どういう機能を果たすべきなのでしょうか。こういった問題提起は昔からあるのですが、人事部の中の内輪だけ、あるいはトップマネジメントとの議論(からの批判)に留まっているように思います。加えて、人事を巡る事象は多くに秘密保持が求められるからか、外部にはうかがい知れないところがあります。それらの実態はどうなっているのでしょうか。本連載ではこれらを座談会やアカデミックによる検証、実務家によるモデル創出等でエスカレーションしていきます。
連載第1号となる今回は、人事未経験者と人事経験者との対談です。人事部の意思決定や行動、コーポレートガバナンスの観点から俯瞰して見た人事部のアカウンタビリティに関心を持ち人事部未経験者の村上氏と、組織変革や人事部そのものの改革を人事部門長として手掛ける井川氏に対談していただきました。

聞き手・文:葛西 達哉(Insights編集部員)

ゲスト:金融機関勤務・FED事務局長 村上茂久(むらかみ しげひさ)
1980年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、金融機関に勤務し、証券化や不良債権投資業務に従事した後、現在はプロジェクトファイナンス業務や投資業務等をマネージャー職として手掛ける。一方、プライベートでは「未来の金融をデザインする」をミッションとする、金融と経済を中心とした勉強会を開催する任意団体FED(Financial Education & Design)を2011年に発足させ、事務局長として主宰している。FEDでの勉強会開催は通算200回を超え、参加者数は延べ約1,000人にのぼる。
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ゲスト:株式会社エスアールエル人事部長 井川憲一(いかわ けんいち)
1974年生まれ。青山学院大学卒業後、大手商社に入社。商社入社後は営業職でスタート。その後人事の仕事に関心を持つも、人事部への異動は困難と判断し退職。人事コンサルタントとして2団体で約6年人事領域のコンサルタントとして活動後、当事者として人事に携わりたいという思いから事業会社へ転職。外資系ヘルスケア企業にてHRBP(HRビジネスパートナー)等で8年間勤務した後、みらかホールディングスの人事企画部マネジャーとして入社。ホールディングスの人事企画部として全グループ企業の人事制度統合をリードする一方、グループ事業会社の一つ株式会社エスアールエルの人事部長を兼務し、組織風土改革や組織開発、人事部そのものの改革に取り組む。

葛西 達哉(編集部会) 今回は人事部未経験ながら、人事部の意思決定や行動に関心を持ちつつマネジャーを務める村上さんと、人事部の現場で働く井川さんに対談していただきます。まずお二人から自己紹介をお願いします。

村上 茂久(金融機関勤務・FED事務局長) 私は研究者になりたくて大学院まで金融の研究をしていましたが、もう少し現実社会を見ようということで銀行に就職しました。人事の業務からは遠く、金融機関のプロダクト部門で働いています。それとは別にプライベートでFED(Financial Education & Design)という金融と経済の勉強会を主宰していて、すでに200回ぐらい開催しています。
 その会で経済や金融、組織論などの勉強をする中で、人事の在り方や終身雇用・年功序列も変わっていくと感じました。マクロ経済学で市場は、「財・サービス市場」「金融市場」「労働市場」の三つに分けられます。これらの市場は「制度的補完性」と呼ばれるように、互いに密接に関連しあっています。人事部門の人はどうしても人事の話ばかりしてしまいますが、その背後にある財・サービス市場や金融システムなどの変化の議論も必要だと感じております。金融の変化が人事の在り方や組織の在り方に影響してくると思うのです。その辺りが最も関心があるところです。

井川 憲一(株式会社エスアールエル人事部長) 私のキャリアのスタートは人事ではなく、はじめは商社の営業職でした。私が当時感じていた人事のイメージを色で表すと、「黒になりきれないグレー」で絶対に白ではない。いいイメージは全然ありませんでした。そう見えた人事だったからこそ自分がやってみたいと思いました。商社の営業職を志望して就活、キャリアをスタートさせた理由は、私の親が会社経営しており、それを継ぐために商売を勉強したいと考えたからでした。ただ、入社した会社では部下に関心を寄せているリーダーポジションの人に出会えず、職場がよい風土とは思えませんでした。昔、父親との何気ない会話で「経営者の仕事で大事なことは人を観察し、気を配り、その気にさせることだ」と言っていたのを思い出し、「人に関心を寄せることが大事なことと、経営者に気づかせる仕事がしたい」という思いが芽生えました。社会人2年目の時、親の会社を継ぐことをやめ、人事の仕事に就こうと決断しました。
 その商社では自己申告制度があったので、制度を活用して人事への異動を希望し、自身でも所属の部課長、人事の部課長に希望を申し入れに行きましたが、人事部への異動が3年続けて叶わなかったため、自ら人事領域の仕事に就こうと退社しました。その後人事コンサルとして経営の課題を人事的側面から解決することは大変充実していましたが、人事の課題は人事がつくり出すわけではなく、会社が何かをしようと意図したとき生まれます。コンサルは、そこの問題の出どころ、すなわち問題の現場や解決するために課題を特定する現場にいられない、いつまでも第3者という立場がものすごく歯痒いと感じていた時、前職の外資系ヘルスケア会社に人事として移る機会に出会い、コンサルから事業会社の人事へチェンジしました。
 前職ではHRビジネスパートナー(HRBP)として大変充実した経験を積ませて頂きましたが、私の職場だった日本法人は、本国から見たら所詮アジア地域にある一支社という立ち位置で仕事をするところで、自分たちで「なぜこの問題を解決する必要があるか」と課題を特定し、その課題を解決するために「何を」「どうやるか」を決められる環境に移りたいという思いが、年齢・立場と共にグッと高まり、そのタイミングで現職の上司と出会う機会があって今の会社に移ることとしました。
 今の会社では、経営会議メンバーの一員として、事業戦略の実現のために人・組織の観点から色々な課題を発掘し、解決施策を提案すること、また決まった施策を規程や手続きに落とすにあたり、部員たちに「なぜこの施策を行う必要があるのか」を伝え、人事が「ビジネスリーダーの考えた施策の下請け」「決まったことを進めるだけの手続き屋」にならないよう、目的意識をもてる組織にしようと心掛けて日々自部署を運営しています。

◆人事は本当に企業のパフォーマンスを高めているのか

葛西 人事の命題として、戦略との一致や企業業績につながらなければならないということがあると思います。ところが今の人事は管理が仕事になっています。人事部に求められる役割を人事は果たしているかということについては、どうお考えですか。

村上 金融機関では人事がブラックボックスになっていると思います。数年前に流行した某銀行のドラマにおいても描かれていましたが、キャリアの中で人事部門を経ることは、エリートコースとみなされています。しかし、人事で本当に企業のパフォーマンスを高める意思決定がなされているのかというのは非常に疑問です。何かあったら飛ばされるとか、うまくいったらエリートコースに行くというスタイルが、今の時代の環境変化とマッチしているのか疑問です。
 今まで終身雇用・年功序列でうまくいっていたものが、環境が変化する中で、今はうまくいっていない感じがしています。なぜ一括採用をするのか、なぜ終身雇用・年功序列を前提にしているのかをもう一度きちんと詰める必要があると思います。それが機能していた時代もあったはずですが、今は機能していないならば、今の状況で機能させるべき人事の役割が必要ではないかと思うのです。
 例えば、金融機関に多くある例として、優秀と目された人材が人事部へローテーションで配属され、実務の管理をするだけになっていることがあります。「人事部で働く事でブラックボックス的な金融機関の仕組みを理解しておけ」ということです。おそらく金融機関の人事部によっては、従業員のことを「玉突き的にこっちにこう配置するかな」と、将棋の駒のように思っている人もいるのではないでしょうか。異動の仕組みが全くのブラックボックスになっていて、だからこそ人事の権限が強い形になっています。
 このような仕組みが組織の業績につながっているならいいのですが、つながっていなければそれはおかしいですね。組織のパフォーマンスにつながっていないのにブラックボックスとなると、誰のためにやっている経営ですかということになります。今はそこを見直すべきだと思います。「人事の意思決定がなぜこうなっているのか」という疑問に対する回答が「ずっとこうやってきたから」しかないのです。それでは「人事部自身が人事のことを分かっていないのではないか」と思ってしまいます。
 また人事はいろいろな施策を打っていますが、多くの場合やっただけで終わっています。人事の施策は評価がされていない状態です。人事異動もきちんとデータを見た上で、どういうものが最適なのか見なくてはなりません。データをしっかり使うには仮説が必要です。ちゃんと仮説があれば、駄目だったときもそれが何かしら生きるはずです。でも、企業の場合は駄目だったものは表に出したくないので、きちんと生かされずにあやふやになっています。こんなことで本当に組織のパフォーマンスに貢献しているのかなと思います。施策がうまくいかなかった際の多くの場合、「偉い〇〇さんが考えた施策だから失敗とは認識してはいけない」といった変な個人のプライドを守ろうとしていると思うのです。人事は人を動かす仕事なので、そういったものが多いのではないかというのが個人的な印象です。

葛西 つまり施策に対する後追いの検証ができていないということですね。

村上 そうです。異動になった場合、上から言われて異動になっているだけで、自分ではどういった役割期待での異動か何も分かっていない場合があるし、状況によっては異動先の上司さえもわかっていない場合がある。異動させてから考えるといったようなこともあるかと思います。そして本当に組織のパフォーマンスが上がっているのかという検証もない。人事のプロが異動させているなら、それに対するパフォーマンスはちゃんと証明してほしいと思います。それができていないならば、人事の人材配置というのはどこにアッドバリュー(付加価値)があるのだというのが素朴な疑問ですね。

井川 今のお話を聞いていて、私の考える人事の役割と、村上さんから伺う人事の前提が違う感じがします。決定的に違うのは、人事は「決める権限を持つ役割ではない」ということです。人事の役割は人・組織の意思決定者を支援する立場であるべきと考えています。部の中でメンバーをどう配置しどう処遇するのか等は部の責任者が決めるべきだと思います。その決め方が適正かどうか一緒に考え、必要な提案や必要な意見具申をし、結果としてその部の責任者の決断が「理由を明確にできる決断」にするお手伝いをする、それが人事だと思っています。逆に言えば、人事が最終決定権を持っていて、部の責任者が人事にお伺いを立てるような関係性があれば、極力それを排除するようにしています。そういう点が、前提として違うところかなと思いながらお話を聞いていました。

◆「なぜ」が明確でなければ変えるべき

井川 今の会社で現職について1年弱ですが、従来の仕組みや規程で違和感を覚えたものについて部員に質問し、「ずっとこの通りやっています」「過去の経営幹部の指示です」という言葉が出てきたら、それは「合理的な理由がないものと同じ」と見做し、変えられる要素をできる限り正しく変えるようにしています。既存の仕組みや規程の生い立ちに合理的な理由があるかどうか、そこはちゃんと聞いています。それが「なぜ」の部分だと思います。その「なぜ」が明確であれば、はじめ違和感を覚えた仕組み・規程であっても残しますが、特段の理由が無ければ、現在・これからを見据えて必要な改訂を行おうと思って、経営幹部に働きかけ、随時変えていっています。
 私は部員たちに、人事が最終承認権限を持つ立場を目指すのではなく、ビジネスリーダーたちが、「これをしたいと思うけれど、どう思う?」という相談を持ちかけられるような立場になろう、相談したいときに最初に顔が浮かぶ組織になろうと言っています。私自身がそういうスタイルを目指そうとずっとやってきて、人事のプレゼンスを上げることにおいては一定の成果を出せたと思っていて、今の会社でもそのスタイルを浸透させようとしています。まだ富士山でいえば1合目に到達するかどうかぐらいですけれども。
 社会人になってから、ずっと人事にいる人だと気付かない部分もあるのかなと思います。例えば新卒で何も分からず人事に配属され、そのままずっとそこにいると、何かを実現しようとか、人事という機能を通じて事業の成長にどう貢献しようかと考える機会もなく、ただ正しく管理する業務をやるだけになってしまうという人が生まれても仕方がないのかなと思ってしまいます。比較検討する機会が得られない状態では、価値をどう出そうとか、事業を育てるために人と組織を健康にしようとかいうことを考えるのも難しいのではないかと思います。
 私は現場出身であり、コンサルで経営者から話を聞いてきた立場として、人事が貢献してほしい経営や現場の期待は何か、ということがメンバーに伝わるよう、自身で実践しながら、その意図を話し続けているところです。

村上 井川さんの1社目の商社の人事部はどういう感じでしたか。

井川 村上さんがおっしゃったような感じでした。なぜこの人が異動したかというのは、部長も課長も分からずに「取りあえず、次はここだ」と。それを人事に聞きにいっても「そろそろだろう」としか言わない。人事部の人は重役や部長とべったり話をしているけれど、平の社員が話し掛けても真摯に向き合った会話してくれた印象は持てなかったですね。何というかあまり好感が持てない人たちでした。

村上 そういった人事は日本企業ではまだまだ残っている可能性があって、そこは企業の伸びしろになるかなと思っています。私が人事に興味を持ったきっかけは、あるときハーバードビジネスレビューの特集が戦略人事※1だったことです。人事部が不透明に将棋の駒を動かすような、よく分からない人事をしているところを何とかしたいと思うと、戦略をしっかり考えるような人事が求められます。例えば「こういう人材が欲しいです」と言ったときに、人事が相談役になるような仕組みが望ましいのかなと、個人的には思っています。
 戦略と組織は両輪であるべきだと考えています。でも多くの企業ではここの一体感は全く感じられません。ごく一般的な認識としては、経営者は社長というイメージですが、CEOやCFOやCHRO(最高人事責任者)も経営者として動く形が今後は求められてくると思います。そこで従来型の人事の役割に疑問を感じているわけです。

※1 DAIMONDハーバードビジネスレビュー2015年12月号「特集:戦略人事」/2015年12月ダイヤモンド社

井川 私も経営者を目指そうと思っていた人間だったので、社長ではなく、人事という立場から経営したいという気持ちでした。社長でなくても会社を元気に動かすことができるのではないか。そのまま家を継いで社長をやるよりも面白いと思ってこの道を選んだので、今聞いていてそのとおりだなと思いましたね。

◆人事が経営者の目を持つということ

村上 日本の場合は、社長が断トツで権限を持っていて、その下に人事部長がいて社長の言うことを聞く、みたいな感じで、人事が自ら経営をしていこうという意識は弱かったのではないかと思います。今後、戦略人事といった形で人事がパフォーマンスを上げていくには、CHROが経営をするという視点がますます重要になると思っています。

井川 前職のときに、「人事とファイナンスは常に俺の横にいろ」と言うビジネスリーダーがいました。そのリーダーに「お前たちは俺の目線を持て」と言われました。そのリーダーのおかげで、経営者の目線を持って物事を考えられるよう努力していかないと、経営の立場から相談される人事、本当の意味でのビジネスパートナーにはなれないのだと気付きました。そこで自分なりに「突然、自分が事業部長たちを束ねるボスになったらどうするか」と考えてみました。例えば製品開発に関する知見はないけれども、人をどう動かすか、どう組織をつくるか、どうやってみんなをその気にさせるか、どういう空気をつくるかに関して等の観点から事業をどう進めるかを考え、議論をしながら、ビジネスパートナーとしての人事としてどうありたいかをより追求するようになりました。
 私が今の会社に移ったのは、そのビジネスパートナーの人事組織を自分でつくりたかったからです。日本企業にはビジネスパートナーとして立ち振る舞う感覚を持つ人事は少ないと感じています。大きな部門のトップたちが人・組織の決断で迷い悩むとき、先ず最初に相談される相手となる人事のチームをつくりたい。それがあったほうが有機的に組織を動かせるというのは、前職ですごく実感がありましたから。その組織が確立されてないところで自らチームを立ち上げ、認めてもらう状況をつくるチャレンジをしたいという思いがありました。そのような思いが高まった時、ある出会いがあり、今の会社に移ったわけです。そしてこの10月からようやくビジネスパートナーのチームを立ち上げることができました。
 そんな構想を社長や部門のトップに話していくと、どの部門のヘッドも肯定的でした。「人事部長だけが相談相手というのではなく、うちの組織をどうしようかという相談相手が欲しかったんだ」と言う声をいくつも頂きました。ビジネスをどう推進・成長させるかだけではなくて、人と組織をどう育てるかという部分も組織のトップにとって大事な役割であることを認識してもらえるサポートをしたいという思いで、来月から本格稼働させていきます。だから村上さんのご意見はそのとおりだと思います。

◆議論の場に最初から呼ばれるのが人事の価値

村上 日本の場合は経営者が弱いということがあり、いかに経営者人材を育てるか、社外取締役を増やしていくかという議論があります。外資系に経営人材がたくさんいるというのは、組織の運営の方法が結果的に経営人材を育てることにもうまく機能しているからだと思います。一つの事業でも人事、財務などがコミュニケーションをとることによって、ビジネスをより全体的に見ることができる。そうなるとより良い意思決定ができてくるのかと思いました。

井川 より良い意思決定とおっしゃられたように、やっぱり意思決定の支援が重要です。意思決定の権限は組織の長に持たせるべきです。それを覚悟させるのも人事だと思います。組織のトップが「人事が決めるのでしょう」「人事はどうするの」という自分の意思が見えない発言をどうやってなくしていくか、それも人事の仕事だと思っています。その代わり「こうしようと思っているんだけど、どう思う?」という問い掛けをされる、これが組織のトップと人事の正しい関係ではないかと思います。議論が決まった状態で呼ばれるのではなくて、これから議論をしていこうという段階から声を掛けられるかどうかが、人事の存在価値だと思っています。
 私が来る前の人事部は、「ビジネスリーダーの悩みを相談される」人事ではなく、「ビジネスリーダーが決めた後に正しく手続きを依頼される」という立ち位置でしたので、組織や人を決める議論に人事が呼ばれたことがなかったのです。給与計算等を正しく行って、組織図を正確につくり、人事異動発令の名前を間違えずに正しい日付で掲示することが仕事だったんですね。議論に呼ばれない、議論された後に頼まれるだけの人事って何だろうと思いました。そこから変えなければいけないのは相当に高いハードルでした。まだ人事が提供できる価値を感じてもらえていなかったのです。
 例えば営業の人事を決めるところに人事の人間が行っても、事業の戦略を決めるところには口出しはできません。しかし、「それを実行するのに、このメンバーの能力や人数で足りますか」という問い掛けをいろいろ出していくと、皆が「はっ」としてくれる場面も出てきくるのです。「もう一回議論をはじめに戻ってみませんか」と水を向けることで何か価値を感じてもらえてからは、逆によく呼ばれるようになりました。
 人事の仕事は正しく事を進めたり、問題を解決したりすることだけではなく、触媒の役割もあると思っています。そこにいることで物事が円滑になり、新しい視点を提供したり、明るくしたり、あるいはある種の緊張感を生んだりできるということかなと思います。そこには人事管理、人的資源管理論の知識だけではなくて、むしろプレゼンテーション、ファシリテーションのスキルが求められてくると思いますので、自分なりに意識して磨いているところです。

葛西 会社のビジョンのためにはどういう人が必要で、どういう組織が最適かという経営課題に対して、人事としての解答を出せるのがいい人事部だというのは、お二人の会話を聞いていて感じました。しかし、現状の人事部ではそれを果たせていない部分も多いのではないでしょうか。そこでお二人にお伺いしたいのは、どうしたら人事はそういうものにアサインしていくことができるのかということです。それは人事部の問題なのか、人事部にいる人の問題なのか。そういったことについてどうお考えになりますか。

井川 人事をうまく使いこなす人がいるかどうか、というのもあると思います。つまり人事を使うのがうまい経営者、ビジネスリーダーがいるかどうかが大きいかと思います。人事部の問題は、機能としての存在価値・意義を示せるかどうかです。だから人事部の責任者が人事の在り方をどう定義し、それをメンバーにどう伝え、共に実践するかです。
 人事にいる人の問題としては、「現場が人事にどうあってほしいと期待しているか」について気付いていないだけだと思います。それは最初から人事に配属されたとしてもフィードバックを受ける等で勉強できると思うし、1度サービスを受ける側に行ってまた戻ってくるのもいいでしょう。ビジネスリーダーや人事部の責任者は、人事部員に「気づく」きっかけを与える責任があると思います。人事にいる人については、その人が良い・悪いではなくて、気付く機会をどう見つけるか、そういった双方の組み合わせが大事かなと思っています。

葛西 村上さんは人事のご経験がない中で、どうしたらいい組織づくりに人事が役割を果たせるかというお話はありますか。

村上 以前は特段人事に興味を持っているわけではなかったのですが、会社や組織のことを議論していると、結果的に人事のことを議論することになっているわけです。結局、組織のことなので、誰もが関係してくるわけですよね。そういう意味で人事の業務はやりがいがあると思います。いろいろな部署の人とも知り合える、非常に魅力のある、とても大事な仕事だとは感じています。でも一方で、なんとなくローテーションで配属されただけで人事のことがよく分からないという感じで、みんなが人事の魅力に気付いていないところが大きな課題だと思っています。「人事はなぜ重要なのか。どういう戦略的な視点が大事なのか」ということを、上の方や周りときちんと常に話す。そんな雰囲気ができれば、より良くなるのではないかと思います。
 人事には二つ役割があると思っています。一つは人事のプロフェッショナル。本当に人事のことに詳しくて、人材育成ができること。もう一つは、別の部門から人事に来て、人事の知見を得て、それを部門に持って帰ること。それによって人事の理解をより深めてもらうような役割もあると思います。異動で3年間人事に行き、その後営業の現場に戻ってきた人に、「人事はどうだった?」と聞いても、何も有益な示唆が出てこない。人事部としてはおそらく現場に人事の考えを還元させるために、現場から人事へ、そして人事から再度現場へ異動をさせたはずですが、残念ながら人事部で学んだ知見を現場に還元できているようには思えません。今の日本のローテーションでは、本来あった理屈が形骸化してしまって、異動が行われる中での学びも非常に弱くなってしまっている。本来の趣旨にいかに気付くかですね。

葛西 会社のビジョンのためにはどういう人が必要で、どういう組織が最適かという経営課題に対して、人事としての解答を出せるのがいい人事部だというのは、お二人の会話を聞いていて感じました。しかし、現状の人事部ではそれを果たせていない部分も多いのではないでしょうか。そこでお二人にお伺いしたいのは、どうしたら人事はそういうものにアサインしていくことができるのかということです。それは人事部の問題なのか、人事部にいる人の問題なのか。そういったことについてどうお考えになりますか。

井川 人事をうまく使いこなす人がいるかどうか、というのもあると思います。つまり人事を使うのがうまい経営者、ビジネスリーダーがいるかどうかが大きいかと思います。人事部の問題は、機能としての存在価値・意義を示せるかどうかです。だから人事部の責任者が人事の在り方をどう定義し、それをメンバーにどう伝え、共に実践するかです。
 人事にいる人の問題としては、「現場が人事にどうあってほしいと期待しているか」について気付いていないだけだと思います。それは最初から人事に配属されたとしてもフィードバックを受ける等で勉強できると思うし、1度サービスを受ける側に行ってまた戻ってくるのもいいでしょう。ビジネスリーダーや人事部の責任者は、人事部員に「気づく」きっかけを与える責任があると思います。人事にいる人については、その人が良い・悪いではなくて、気付く機会をどう見つけるか、そういった双方の組み合わせが大事かなと思っています。

◆人事を事務屋にしているのは制度設計の間違い

村上 組織や人が大事だと言うけれども、人事が事務屋になってしまったのでは魅力的に感じることはないと思います。事務屋にしてしまっているのは、組織の制度設計の間違いだと思います。意思決定をサポートするといったこともそうですし、本質的に人事の担う大事な役割はもっとあるはずです。そこの知見を全く引き出せずに、単にオペレーションだけをやるとなると、組織にとってもマイナスですし、十分なパフォーマンスを発揮できていない状態です。日本企業の場合は、そこをもっとてこ入れすれば、パフォーマンスが上がる可能性が高いのかなと思っています。

葛西 人事部がせっかくの資源を生かし切れていないという感じでしょうか。

村上 かつてはうまく機能した時代があったのだと思います。人事部を通らないと出世できないという慣行があるぐらいですから。
 人事というのは、ある意味非常にチャレンジングな部署だと思っています。戦略は簡単に変えられますが、組織は簡単には変えられません。戦略を変更したときに、組織の変更は物理的に遅れてしまいます。戦略を変えたので組織も全部変えますとなると、混乱が起きてしまう。だからこそCEO、CFO、CHROのコミュニケーションが非常に大事になってきます。戦略がきちんとあった上で人事をやるという説明をすれば多くの方が人事に興味を持つと思います。組織の視点から見ると人事部は経営にも近いですし、むしろ花形部署であるはずです。それが「決められたことをしっかりやればいいだけ」となってしまうと、モチベーションが下がることは否めません。

井川 私が社会人になった90年代の後半ぐらいまでは、そのビジネスに詳しい強烈なリーダーシップのあるトップが「この計画を私の言うとおりにやれ」といって、みんながその通り一生懸命頑張ったら何となく成功していたという感じだったと思います。でも今はリーダーの言う通りにやっても本当に成功するかどうか分からないし、むしろ失敗するかもしれない。だからリーダーには強烈なリーダーシップだけではなく、チームの本音や知恵を引き出すファシリテーティブなリーダーシップスタイルも必要ではと思います。
 人事も戦後から、正しく事を動かし、管理することが求められて、それで成功していました。今はそれだけでは間違ったときにどうしようもできない。正しく手続きを執り行うのも仕事ではあるけれど、これまで通りのやり方を否定してでも「ちょっと待って」と言える人事も必要だと思います。今の人事はそこが転換できていないのではないかと思います。世の中の環境が変わったということで、人事の役割は管理仕事から、触媒、組織開発、意思決定支援といったところにシフトしてきていて、そこが大きいのではないかと思って見ています。

村上 本当にそうですね。「正しい手続きをしっかりやればうまくいく。うまくいかないのは、正しい手続きを踏んでいないからだ」という罠に、まさに金融機関が陥っています。例えば、融資が失敗するのは正しい手続きを踏んでいないからだというのです。正しい手続きをすれば融資がうまくいった時代もあるのですが、今はたとえ手続きが正しくてもうまくいかない時代になっているのではないかと思います。手続きは大事なプロセスではありますが、環境の変化に伴って、手続きについては適宜再検討することが必要になります。再検討をしないのは、既存の手続きをする方が楽だからだと思います。手続きに沿って進めれば怒られませんから。
 しかし最終的には「企業価値をいかに高めるか」について、全従業員が最も価値を置けば、組織のパフォーマンスが上がるはずです。その企業のパフォーマンスに貢献しない手続きであるなら、積極的に変えるべきだと思っています。金融機関や人事部など、オペレーションをしっかり行うことが大事な部署は「手続きさえしっかりやっておけば良い」という罠に陥りやすいのですが、それを自覚した上で、手続きを超えて新たなことをやっていくことが、今後はより求められるでしょう。

◆人事にこれから求められる意思決定支援者としての役割

井川 これまでどおりのことをやっていたほうが楽という意識があることは非常に感じます。でも、「それで本当にいいのか?」という視点を持たないと、その組織の本当の価値は引き出せないと思います。私は昔から、リーダーがどう振る舞うかで、人がどういう気持ちになり、どんな職場風土が生まれるのかを考えてきました。つまりリーダーの意識行動がメンバーになんらかの影響を与え、それがよい影響であればきっとよい職場の状態が生まれて、結果業績が上がるだろうという考えを持っています。従って、リーダーポジションに就く人の意識行動を変えるところにどう働き掛けられるかも人事の役目かなと思っているのです。
 成果を上げるために正しいことを行うには、場合によっては会社にとってリスクを取るという状況もあると思うのです。我々の会社では「リスクを取ってチャレンジした人を褒めよう」ということを人事から強く発信しています。会社で定めた新しい行動基準にもそれを入れています。
 前職の外資系ヘルスケア企業は会社の核となる信条(クレド)のある会社で、そのクレドに基づくリーダーシップが定められていたのですが、その中に「思慮あるリスクテイキング」という項目がありました。マネージャーがどうやって部下の成果達成を支援するかについてクレドを通じて学ばされたし、そういうリーダーがいるかどうかを人事としては注視していました。
 ところが今の会社では、リスクを取ってチャレンジして失敗したら、その人を上位者が叱り飛ばしている光景が散見されました。これでは自ら動くというより指示を待つだけの人や上位者が言った通りにしか動かない人が生まれやすいと思い、新たな行動基準の下、チャレンジしたことを褒めようと、部門のトップや部長といった評価する立場のリーダーたちに働き掛けています。

村上 企業が意思決定する場合に、「正しい」意思決定を行うというのは非常に難しいです。そのクレドをよりどころにすると、「我々はこういったビジョンやミッションがあるから、こういったアクションをとるのです」という説明もできますし、それは企業の個性にもなると思っています。その大事さは私も分かっているつもりですが、それが組織に根付かない難しさもあるように思います。残念ながら、現場ではクレドに対して冷めた目で見てしまうのではないかと思っています。

井川 前職の基準ではありますが、私は今でもそのクレドを持ち歩いています。何かの意思決定をするときの拠り所の一つに今でもしています。
 どの会社も素晴らしい価値観は作られ、会社で掲げられているけれども、それを「判断の拠り所」として人事が現場に問い掛けているところは少ないと思います。クレドでなくても、人事が意思決定支援をするためのツールは会社にあると思います。社員を格付けする等級定義もその一つです。それをしっかり読み込んで、「この人は本当にここにある定義の役割を果たしていますか」という問い掛けをする。こんなことをやり続けることで、クレドをはじめとした会社の基準というものは浸透していくのではないかと思います。イベントやサーベイなどをやるだけでは絶対に浸透しません。責任ある人が何かを判断するときに、「会社の基準があるんだから、忘れないように使おうよ」と、それを人事が思い出させてあげることが一番浸透すると思っています。

村上 日本の企業は人が入れ替わらないことで企業文化が残りやすいわけです。一方で、外資系は人が頻繁に入れ替わっているのに企業文化は残っています。そこはクレドなりバリューというのが大きいのだろうと感じます。日本企業は終身雇用・年功序列やローテーションで暗黙知という形で企業の文化が引き継がれてきたけれども、欧米の場合は可視化というのを大事にしていて、「クレドにこう書いている」ということを拠り所に企業文化を醸成してきました。他方、日本企業は空気を読むことが得意すぎて、可視化せずに暗黙知でやってきたというのが一つあると思います。
 外資系の場合はクレドという後ろ盾があるおかげで意見が言えると思いますが、日本の場合はそこが可視化されていないので、何となく上の顔色をうかがいながら意見を言う感じですね。

井川 外資系はリーダーになったら責任をとる覚悟を決めさせられます。だから何かあったら「すまん。俺が決めた」と言うのですが、日本企業は「結局誰が責任者?」と責任の所在が曖昧だというのは感じます。

村上 「どういうプロセスを経て」というのがあるからこそPDCAが効いて、失敗は学びに生かせるわけです。けれども、日本はうやむやにしたままにしていて、気が付いたら末期がんみたいになってしまっている。なぜそうなっているかは誰も分からない。今の時代においてはそこが足かせになっています。そこはある意味、組織・人をどうするかというところですから、人事が貢献できます。かつての日本の人事とは違った形で、今後人事部は、戦略人事として企業のパフォーマンスを上げることが大事になってくるのではないかなと思います。

井川 当社は最近、会社全体の組織を再編しました。その組織の形、要職の人事を議論するために社長、部門のトップを集めた議論を3カ月ほど積み重ねましたが、そこで私はファシリテーターを務めてきました。私は、組織で要職を担うリーダーには「自分が覚悟を持って決め、その決断理由を伝えられる」人でなければ、絶対に務まらないと思っています。組織の議論においては、参加者にその覚悟があるかどうかを確かめるための質問を投げかけましたし、会議の参加者の参画の姿勢も観察して、考察結果や懸念をどんどん社長に上げていきました。それを社長の意思決定をするための一参考情報として欲しいのです。こうしたことでも、人事の役割の一つを示せたかなと思っています。

村上 日本企業の場合は部門の縮小ができない傾向があります。でも今の時代、それではパフォーマンスが落ちてしまいます。そういう意味では、人事は本当に厳しい意思決定をサポートしなければいけないと思います。

井川 実務を動かすのは現場で、その直属の上司である課長はとても大事だと思います。従ってこの階層はよく観察しています。人事への問い合わせが個人から来るか課長から来るか、この傾向を調べることで、その課の課長は自分の言葉で部下にちゃんと伝えようと努力している人か、伝える努力をせず部下に「人事に聞いておいて」としているだけの人かを見極めようとしています。自分の言葉で伝えるために努力している人は、ピープルマネジャーとしてはポテンシャルがあると考え、そういう方をマネジャーポジションに配置していくことを推奨していくことは人事として必要なところかと思います。異動させる権限はなくてもいいのですが、こういう振る舞いができる人たちが組織のハブのポジションにいるかどうかを観察し、その判断軸を上の人に伝えていくのも人事の仕事かなと思っています。

村上 これまでの日本の人事は、集まった情報を隠すことによって価値を保つという感じですが、そこをちゃんと組織に還元することによって、組織のパフォーマンスが上がるということが、結果的に人事に対する評価、信頼にもつながります。「遠慮なく人事に相談してほしい」という形であれば、私もいろいろ相談できるし、今後もコミュニケーションをとれればいいなと思いますね。

葛西 人事というのはマネジャーのポテンシャルを見抜いて伝えるという役割を果たさなくてはいけないのに、現状は果たせていないとこが多いのではないかというお話をいただきました。

◆人事部だけでやることの危険性

岡田 英之(編集部会) 理念経営やクレドというものを組織づくりに活用しようとしているけれども、それは本質ではないような気がしています。私は社訓、社是、クレドがマイナスに作用することもあると思うのですが、その辺はどうお考えですか。

井川 クレドはどこに力点を置くかによって災いする部分もあります。無理やりあるところだけクローズアップして強引に決めようとするような動きが出てくると、危険なものになるというのは感じました。そのせいで、「クレドって結局きれい事じゃないか」という声が出てきているのも事実です。

岡田 人事以外の人から人事がどう見えているかということが今回のテーマですが、人事もいわばビジネスとしてやっているところはあって、それは現場の人も分かってはいる。そういう清濁含めた相互理解をいかに構築していくかにご苦労されていると思います。

井川 人事が実施しようとしている施策に対して、あるビジネスリーダーたちにその施策を考えるに至った問題の背景や実施後の狙いを話したら、「何をするのか期待されていないところから出されてもその気にならないから、まず人事は何を期待されているかから考えようよ」と言われました。つまり「人事部だけで問題の定義や狙いを定めるのは危険ではないか」と言われて、はっと気付いたのです。確かに自分たちは考えて提供する側だけれども、内輪だけで考えてしまうと独りよがりになる。管理系の部署が陥りやすいこととして、自分たちだけで考えてしまったり、その部署と社長等の上位者だけで合意してしまうことが多いのではと思います。それが続いてしまうと、現場から「何をやっているか分からない」「自分たちがやりたいことをやっているだけじゃないの」などと言われてしまいます。
 前職で人事がクレドを学ぶトレーニングや手引きをつくっていると、「これを実行しただけで目標を達成したことになるのだから、人事は楽でいいよね。実行して効果が出なかったからといって責任を問われない。やったかどうかだけで評価してもらえるっておいしいね」と言われたことがあるのです。ビジネスリーダーから言われました。すごく悔しかった。的を射すぎていて悔しかったですね。

岡田 ですから、他の人たちは人事をディスる(批判する)ほうがいいと思うのです。人事も他社からディスられる経験をもっとすれば、そういったところから学ぶことも出てきます。現在は周りがディスらないから、余計ブラックボックスになってしまう。いじられていれば、ぼけ方もうまくなるし、そこからコミュニケーションも起こると思うのです。

井川 私は結構ディスられ続けてきましたね。でも逃げずに受け止め続けてきました。するとある時点で急に仲間として認めてもらえる転換期がありましたね。逃げるとただの負け犬です。そういう批判を受け止める経験は振り返ると全てが学びになります。だって何を期待しているのか相手がヒントをくれているわけですから。何でもフィードバックをもらえることが大事だなと思いますね。

葛西 人事の方が、恐れず怯まずフィードバックを他の部門から受け続ければきちんと信頼されるようになり、いい循環が生まれるということですね。
 最後に、読者の人事部の方に向けてメッセージをお願いします。

◆戦略人事で経営に関わってほしい

村上 日本企業において人事部というのはまだ潜在能力を発揮できていないと思います。今の日本企業の人事に必要なこととは、これまでのオペレーションを主にやるような人事ではありません。もっとしっかりとビジネスサイドとコミュニケーションをとりつつ、戦略人事という形でより積極的に経営に関わっていくような人事です。なるべく情報を還元するような形で、企業のパフォーマンスに貢献するようになれば、フロントサイドや営業サイドからも信頼され、より魅力的でやりがいのあるものになります。そのポテンシャルは高いはずです。私も人事には興味がありますので、そういった流れを今後サポートできればと思っています。
 私のよく知っている友人の会社の人事部は、新人や中堅で優秀だと思われる者を集めています。でも半端でないオペレーションの量をパフォーマンスの高い者が必死にこなしているという状態のようです。それはそれで大事ですけれども、本当に優秀な人を集めているのだったら、経営の根幹的な人材育成や人事戦略というところでもっと汗をかいてもらう形のほうが、本来的に企業のパフォーマンスには貢献するのではないかと思っています。

井川 人事部の方に伝えたいのは、現場からフィードバックをもらうようにしてほしいということです。自分のことは自分で評価できません。ディスられることでもいいです。それを逃げずに自分からもらいにいく努力を続けてほしいと思います。つらい場面があるかもしれないけれども、それを積み重ねると、「こいつは本気だ」と認めてもらえるところに絶対つながります。それは実体験からそう思うので、それをやり続けましょうというのが一つです。
 もう一つは常に自問自答する観点を持ってほしいということです。私は自分の部のビジョンとして、「居てくれてありがとうと思われる人事部であろう」と掲げています。いるだけではコストしか生み出さない人事部だけれども、コストをかけてでも、ヘッドカウントを増やしてでも人を置いてもっと価値を提供してと現場から言われるようになろう。それは組織戦略を考える等の上流部分の手伝いをすることでなくてもいいです。ちょっとした問い合わせにただ回答するのではなく、転ばぬ先の杖のようなアドバイスを添えることで、「なるほどね。ありがとう」と言われるようなことだっていいと思うのです。大小関わらずそういうことを積み上げていく。「お前がいてくれて良かった」を積み上げていこうと言っています。それを意識して、逃げずにフィードバックをもらい続けると、必ず現場からヒントをくれるだろうし、ちゃんと向き合えるいい関係ができるのではないかと思います。逃げずにフィードバックをもらうことと、常に「ありがとうと言ってもらえることをしているだろうか」と考えること。お勉強も大事だけれど、そういうことも大事だということを、ぜひ皆さんにもお伝えしたいと思います。

葛西 本日はありがとうございました。

左から村上氏、井川氏、編集部葛西





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