今号(2018年度春号)特集は、「ダークサイドから考えるこれからの組織、人事、キャリア~キレイごとからは見えてこない真実~」です。表と裏、明と暗、陰と陽など世の中の多くの事象には二面性が存在します。人間の思考や感情においては、二面性どころかより複雑な多面的側面を有しています。組織や個人が何かを決定(意思決定)しなければいけないとき、二面性や多面性が影響することがあります。特に組織における誤った意思決定は、企業不祥事という問題に発展し、大きな代償を払うことになります。最近では、川崎重工の新幹線台車亀裂問題、大手ゼネコン数社の談合疑惑、森友学園問題、日本相撲協会の隠蔽体質問題などが記憶に新しいところではないでしょうか。

 民間企業組織では、コーポレートガバナンス(企業統治)改革元年と言われた2015年以降、組織・機構改革(社外取締役増員やコーポレートガバナンスコードの厳格適用)や役員報酬体系見直し、行動指針・倫理規定の整備等あるべき姿とのギャップを急ピッチで埋めてきたと主張しているようです。しかし、実態はどうでしょうか?多くの専門家は、『ガバナンス(企業統治)改革を進める際は、形式を整えるだけでは不十分で、「魂」を入れて実行性を高めることが肝要である』と主張します。

 この「魂」とは将に人間の思考や感情ではないでしょうか?二面性どころか多面的側面を有する捉えどころのない代物です。つまり、「魂」を入れ実効性を高めることの重要性を語る時点で思考停止に陥っているとも言えるのではないでしょうか。

 人事評価制度の世界でも、「仏作って魂入れず」というようなことが頻繁に言われます。意味については説明するまでもないですが、要はそれほど魂=人間の思考や感情は捉えることが難しいということです。行動経済学や意思決定論分野において、「後知恵バイアス」という考え方があります。物事が起きてからそれが予測可能だったと考える傾向のことを意味します。わかりやすく言えば、物事の結果(特に失敗など予期せぬ悪い結果)をキレイゴトに正当化してしまうということです。

 人間の思考や感情は多面的である上に、キレイゴトに正当化されてしまうと、いよいよ物事の本質(真実)が見えづらくなってしまいます。このような場面(局面)が、多くの組織で散見されているのが現状ではないでしょうか。

 今号のインサイトでは、組織、人事、キャリア的問題(課題)の本質(真実)に迫るために、敢えてダークサイドから問題(課題)を考えることにチャレンジしたいと思います。企業不祥事やコーポレートガバナンスの話においては、「そもそも、○○にはこういう悪巧みをすることで△△というメリットがあるよね」とか、「誰も損をしないのならば、隠して(放置して)おいた方が楽だよね」というダークサイドと向き合うことから人間の思考や感情の多面的側面にアプローチできればと思います。読者の皆さんも、自身を取り巻く環境のダークサイドに意識的に目を向けることで、キレイごとからは見えてこない真実にアプローチしてみてください。

岡田 英之

JSHRM 執行役員
Insights編集長 岡田 英之


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