話題の本や特集で紹介した本など、HRMに関わる編集部員自らが選んだ本の読書感想コーナーです。

BOOK DATE

【タイトル】漫画 君たちはどう生きるか
【原作】吉野源三郎
【漫画】羽賀翔一
【出版社】マガジンハウス
【発売日】2017年8月24日出版

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

 1937年に出版された吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか」は、2003(平成15)年の「私が好きな岩波文庫100」で5位にランクされるなど、世代を超えて数多くの人に読み継がれ、出版から80年となる昨年、「あらゆる世代の人たちが生き方の指針となる言葉を物語の中に見いだした」という羽賀翔一さんの漫画で蘇った。出版半年過ぎた現在も書店では平積みされ、児童文学というカテゴリーだけでなく、倫理学や哲学などのカテゴリーでも上位にランキングされている。

 主人公のコペル君が、中学校の友達や社会との関わりの中でさまざまなことを感じ、悩み、考え、それらを打ち明けられた叔父さんが、自分の考えをノートに書きためていく。「ものの見方について」「人間の結びつきについて」「貧乏ということについて」など、コペル君の思いに寄り添い、自分で考えさせ、時には異なる見方を紹介し、アドバイスし、期待を表す。コペル君の亡き父から「息子を頼む」と託された叔父さんはコーチそのもの。上司にしたい小説キャラクターランキングがあったら上位にランクされるだろう。

 貧困、格差、勇気、いじめなど、軍国主義下という現代とは大きく異なる社会環境にもかかわらず、テーマとなるものは現代と変わらないことに若干の驚きを覚え、最もハッとさせられたのは「人類の進歩に役立つ人であれ」という考え方である。現代では「社会の役に立つ」「人の役に立つ」という考え方はあっても、「人類の進歩」にまではなかなか考えが及ばないように思う。戦争ムードが高まっているという社会背景もあるだろうが、今の社会を是とするのではなく進歩させる、しかも人類規模で、という考え方を80年前の先人が説いているのに、現代でそれが浸透しているかというと、自戒を込め大きな疑問符が残る。人類とまで行かずとも、「世界の進歩」や「日本の進歩」に役立つことに個々人が目を向けていれば、現在の日本の閉塞感が少しは解消されやしないだろうか。まずは「日本の進歩に役立つ」ことに目を向けてみたい。だいぶ長くなってきた人生を振り返り、この先の人生を考えるよい機会になった。

 漫画といっても、ノート部分はテキストでそれなりに読み応えがあり、漫画で身近な場面を想像し、ノートで抽象的な概念を考えさせられ、漫画好きでも好きでなくても、子供から大人まで楽しめる本だと思う。普段漫画は読まないが、蔵書として保存し、時折読みかえしたいと思っている。

文:土田 真樹子(Insights編集部員)


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