今後、日本の労働力人口は減少することが予測されています。2065年の労働力人口は4,000万人弱と約4割減少し、労働力率は50%程度まで低下すると予想されています。このような環境の中、生産性改革と希少な労働力の有効活用が議論されています。人事の分野でも、テクノロジーの活用によって人材育成や採用活動、人事評価など人事領域の業務改善を行うソリューションが注目されています。今回のぶらり企業探訪では、労働力人口減少社会における働き方の鍵を握るRPA(Robotic Process Automation)について大角暢之さんにお話を伺いました。

聞き手・文:岡田 英之(Insights編集長)

株式会社RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 大角暢之

株式会社RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 大角暢之
一般社団法人日本RPA協会代表理事/RPAテクノロジーズ株式会社代表取締役社長。早稲田大学を卒業後、アンダーセンコンサルティング株式会社(現アクセンチュア株式会社)に入社。2000年オープンアソシエイツ株式会社を設立し取締役に就任、ビズロボ事業部を発足し、「BizRobo!」の提供を開始。2013年ビズロボジャパン株式会社(現RPAテクノロジーズ株式会社)を設立し代表取締役社長に就任。2016年7月一般社団法人日本RPA協会を設立し、代表理事に就任

RPA革命の衝撃

岡田英之(編集部会):本日は、労働人口減少・低生産性・イノベーション不足といった課題に直面している日本において、多くの企業組織で活発な議論が交わされているRPA(Robotic Process Automation)について、RPAテクノロジーズ株式会社代表取締役社長の大角暢之さんにお話を伺います。早速ですが、自己紹介いただければと思います。

大角暢之(RPAテクノロジーズ 代表取締役社長):1970年生まれの広島県出身で、1990年大学進学のタイミングに上京して、大学在学中に起業を経験しました。バブルの末期で、同じ地元出身同じ学校で東京に出てきた仲間と一旗あげようと、起業の真似事みたいなことをやっていたという感じです。法人設立したわけではないのですが、当時はバブルの末期、学生起業がちょうどブームになっていました。そうした環境の中、会社に就職するということに関して非常に違和感を持っていたという部分がありました。

岡田 会社に入るということは、選択肢のひとつに過ぎないのではないかと思いますがいかがでしょうか。

大角 そうですね。仲間と一緒に仕事するという経験をして、そのまま一生過ごせばいいという考え方でしたので、就職活動に対してすごく違和感がありました。ところが1995年にバブルが崩壊し、起業も真似事でしたから、生活に対する危機感のようなものもありまして、一度就職しようという時は就職氷河期も重なり、あまりピンとくる会社はなく、結局アクセンチュアというコンサル会社に就職させて頂きました。学生時代あまりに勉強しなかったものですから、入社したら勉強できるという向学心に飢えて入社したというところでしょうか。

岡田 コンサルティング業界はいろいろな意味で勉強になりますし、早いスピードで経験を積むこともできますよね。

大角 当時コンサルティング業界という言葉もなかったですし、パン屋にでも入社した程度の感覚で、どのような業務内容の会社かも理解していない状況でした。しかしそこでの5年間は、本当に今でもずっと生き続けている経験をしました。金融機関の業務改善、BPR、システムインテグレーターの仕事を一生懸命取り組みました。

岡田 BPRというのは「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」、要は業務改善ということですね。

大角 はい、業務改善を行っていました。具体的には保険・銀行系のバックオフィス系の事業を担当していて、インターネットの時代が到来し、事業環境も変化していくというタイミングでした。インターネットバブルのタイミングでもありました。

◆懐かしい渋谷ビットバレー

岡田 渋谷周辺に多くのネットベンチャーが立ち上がり、隆盛していた頃ですね。

大角 そうですね。その時にちょうど30歳くらいだったと思います。コンサルの世界での仕事は面白かったです。素晴らしい方々にめぐり会いましたし、業務も順調に進んでいました。ただ元々の起業というものにこだわりがあったのですが、30歳を超えたらもうダメだなと思ったのです。転職についても今のように一般的ではなかったですから。
 ですので30歳前に起業しようかと思っていたところ、ソフトバンクファイナンスという会社からお話があり、金融事業とインターネットを掛け合わせて事業化を進める立ち上げメンバーのチャンスを頂き転職しました。引っ張ってくれたのは、旧アクセンチュアの先輩でした。

岡田 ソフトバンクファイナスといえば、ベンチャーキャピタルですか?

大角 当時はまだベンチャーキャピタルではなくてインキュベーターでした。eトレード証券などです。我々は保険会社案件を担当していました。

岡田 単純にファイナンス面の事業投資ではなく、事業化し継続的に成長・発展させることが目的ですね。よいチャンスでしたね。

◆日本にユニコーン企業が育ち難い環境とは?

大角 そうでしたね。1999年にその事業をサービスインするまで、業務開発の方をずっと担当しました。無事立ち上げたメンバーが旧アクセンチュアのメンバー4人で、当時ネットバブルでしたし、今まで人が注文を取っていた証券業務がネットに変わるという本当に劇的な事業の変化を目の当たりにしましたから、自分たちでもできるだろうということで、2000年にその4人でお金を出し合って独立して創ったのがオープンアソシエイツという会社です。
 この会社は現在18期を迎えていて、社名はRPAホールディングスになっていますが、RPAの分野ということでマザーズ上場したのが、このオープンアソシエイツという組織です。

岡田 大角さんも出資者なのですね。

大角 そこでまたコンサル稼業に戻るかなど色々考えることもありました。それこそもう一回アクセンチュアに戻るかとか4人ともいろいろな葛藤がありました。会社を経営するということの厳しさのようなものがありまして、そこで活路を見出したのが新規事業を創造するというフェーズ、フィールドのコンサルティングと、立ち上げの代行でした。日本の場合、欧米と違って基本的にはシーズもお金も全て企業の中で握っていて、アメリカみたいにエコシステムになってないのです。

岡田 合理的なエコシステムにはなっていないようですね。特に、ファイナンスの面で間接金融主体なので、バリエーションがないですよね。資金調達の手段が限られてしまいますね。

大角 はい、ですので大学時代に起業し、立ち上げてうまくいったらグーグルのような儲かりそうな企業を買収します。失敗すれば再チャレンジする。こういう循環システムがないのです。やっぱ日本の場合はその良さもあるなと思っていまして、ただやっぱり千三つの世界というか、せっかくいいアイディアも実行力が足りてないなということで、我々がそれを請け負いますという、要するに予算もない、少ない、コストリスクの世界の中で、突破していくっていうのですかね、バカじゃないとできない世界なのかもしれません。

岡田 イノベーションのシーズだとか、いろんなアイディアだとかってものを、形にするまでのところも含めて持っているのに、それを媒介するというか、媒介する上でのマイナス点というかそういうところが、少し脆弱なのでしょうかね。

大角 起業家の皆さんは、総じて課題意識は明確です。実際にビジネスを立ち上げ、一定の収益を上げるようになると、会社を運営する事務的な業務における課題感が出てきます。ここの部分で僕らはサポートできるのです。

岡田 若いプレーヤーにとっては、ものすごくエキサイティングな世界なのかもしれませんね。成長実感があって、スピードも速い。

大角 確かにエキサイティングですね。当社の場合は新卒中心の組織文化で、頭の良さに加えて実行力、独り立ちして売上を自ら上げていくという力をつければ、これはもう経営の道、事業化の道というのが見えるという信念があるので、それを一生懸命やってきました。大手の企業様の新規事業立ち上げやリビングデッドになっているような事業案件のストップの支援など、いろいろな形で我々のリソースを使って継続的にやっていました。

日本にユニコーン企業が育ち難い要因とは!

岡田 それが2000年代の頃でしょうか?

大角 2003年位でしょうか。何もブランドもない状況下では厳しい環境に直面しましたし、そこに向き合ったということで、みんなで成長できたのではないかなと思います。

岡田 スタートアップのタイミングというのもあって、貴社でお持ちのリソースをいろいろ探索しながら、マーケットの状況を見ながら、何がベストフィットするのか、トライアンドエラーでやってきたということですね。

大角 そこからビジネスプロデュースドサービス、新規事業創造集団が生まれて、今でも続いています。自分たちの新規事業創造も並行してやっていたのですが、RPAというのはその中の一つでした。これが2007年、ちょうど10年前にビズロボというロボット派遣サービスを私がずっとやりたかったのです。当初は賛成いただく方とそうでない方の両極端でしたが、これは非常に必然性があると私は腑に落ちていたので、ずっと続けていました。ロボット派遣はBPO、人材派遣、人材ビジネスとして当初から捉えていました。

◆かつて議論されたBPOとRPAの違いとは?

岡田 BPO、ビジネスプロセスアウトソーシングですね。

大角 はい。ロボット派遣ビジネス、ロボットBPOサービスということで、お仕事はかなりいただきました。このデジタルレイバーという労働者は、画期的なパフォーマンスを叩き出すことが証明できてくるとさらに否定する人とさらに応援してくれる人がだんだん増加してきましてですね。2011年になるとですね、日本生命さんが、ロボット事務センターというのを3年かけて稟議を上げていただいて、テレビにも出ていただきましたけれども、これは本当にHRなのだと、次世代の、ということで、ただやっぱり日本生命なので、やっぱり最後止まるのです。

岡田 意思決定が止まるということですか?

大角 意思決定。稟議が2011年に通ってですね、無事ロボット事務センターといったものができて。そうするとやっぱり、BPOは順調だったのですけども、少しまともな経営技術として見ていただいたとうこと、私肌感で感じたのが、戦後のレジームの終了だなということで、次から次へと、次三菱UFJ銀行さん事務センターさん、WEBから、日生の後にすぐ問い合わせいただいて、説明して、すぐ見に行きたいということで、見てもらって、これもすぐ採用したいってことで、一週間後にちょっとした案件の発注をいただいたぐらいが、2013年だと思うのですね。その時に、時代の変化をすごく感じたのは、大手企業の方が結構発注いただくっていうのは、我々の結構アピールポイントだったのです。

岡田 なるほどですね、ブランディングという意味合いでしょうか。

大角 ベンチャー企業は信用力がないので資金調達が難しい場合があります。さらに新規のお客様と取引を行うとなると、信用調査会社で調査されて、与信されて、等々、乗り越えなければならないハードルが結構あります。
 僕ら非常にこだわっていたのが、他社の下請けは絶対やらないことで、ビジネスプロデュースの方では、直接営業してまずプライマリーの仕事をするということに結構こだわっていて、易きに下請けでではやっている意味がないという文化がありました。

岡田 例えば、銀行が持っているSI屋的な子会社の下請けみたいなのはしないということですね。

大角 はい、絶対に受けないというのを社員5人くらいでずっとこだわっていたので苦労しましたけど、そこは結構自慢でした。ちょっとベンチャーっぽく、かつ大企業と仕事ができるというのをブランディングしていたのですが、銀行からは引き合いがなかったです。ところがこのビズロボだけは、すぐにアカウントが来て、ああこれは時代が変わるなと、テクノロジーといったものを結構フラットに取り込んでくるようになるなと思いました。

岡田 今で言えばフィンテックですね。銀行内部でそういう考え方の転換があったのでしょうね。

大角 そうですね。当時ベンチャーといっても、銀行が研究開発するというのは、IBMや富士通と言ったブランドの中の話で、ビズロボなどというすごく怪しいものというのをパッと取り込んだところからだいぶ潮目が変わっていますね。

岡田 そのタイミングで一気に御社のビズロボというのが注目されたのですね。

大角 ビズロボが、経営技術になりましたね。実はアンピエという技術はテクノロジーではないと思っていて、単なる人材開発、経営技術でITではない、インフォメーションテクノロジーではなくて、新しい経営技術の一つだと思っています。どちらかと言うと、これは今でもこの原理はことごとく変わらず、というところなのです。

岡田 そこが面白いところですね。

大角 そうなのです。生命保険会社と銀行のジャパンツートップ、日本生命と三菱UFJ銀行が採用したというので、皆さんの見る目が結構変わりまして、そこから一気にパートナーが10社ぐらい増えました。我々は人材ビジネスなので、当初からの直販ということ、ここまで叩かれた経験からすると、あまり社会の為にならないと考えています。これ今でも変わらない基本的な考え方なのですよ。人材派遣の営業と一緒なんです。やっぱり銀行業務を理解していないですよね。しっかりと銀行業務の型がわかっている方、コンサルファームさんだとかSIの方だとかとビズロボを組み合わせれば、イノベーションのサービスが起こると、そういう考え方で元々立っていました。

岡田 単なるテクノロジー先行ではなくて、実務やビジネスプロセスが、融合というか掛け合わされないと効果が出ないということですね。

大角 効果が出ないし本質ではないと思っていまして、その考え方に寄ってきていただいたのがその10社ぐらいです。一番古くて今でも当社のビズロボの主力パートナーのビームコンサルティングさんが、2008?9年あたりです。

大角 生産性向上というコストサイドではなくて、リードタイムと品質サイドに劇的なインパクトがあるというのがこの効能だというのが、デジタルレイバーということです。

岡田 単なる一過性のコスト削減ではないということですね。

大角 全然違います。で、2016年1月、その頃テレビ取材等から複数お話しをいただきました。2015年に撮影して、2016年に年明けて春ぐらいに、放映されるっていうことでした。トップリーダーズという番組です。僕はデジタルレイブを行動化しようってことで、人工知能に着目したのです。僕がやりたかったのは欠品予測して発注するとかっていう、そういう手足のRPA今までなかったビズロボと、ブレインパッドさんのアルゴリズムみたいなのをシステムに搭載させたかったのです。高度な、昔家電量販店のコンサルとか行っていましたけど、欠品を防止なんていうことは結構難しかったです。
 日本国の一番の強みというのは、属人性なのですよね。この点に僕気がついたのが、なぜ戦争に負けたのに、1980年代時価総額世界ランキング5位に全部日本企業、今のGoogle、Facebookみたいなところに、1位三菱UFJ銀行と、全部日本企業だったですよ。なんでなんだろうと。

岡田 かつてはジャパン・アズ・ナンバーワンと言われ、製造業が隆盛を極めていた時代もありましたね。

大角 なんでなんだろうと、なぜそこまでゼロから行ったのだろうといった時の、僕の中ので一つの答えは、工場なのですよ。

岡田 物作りの現場。

大角 物作り、現場。じゃあ物作りの現場って何、何でそうなのかっていうと、やっぱりブルーカラーの人たちの職人技っていうものがあって、そこにまず、すごく世界的にこだわりとか、練成技術があるっていうことだと思うのですよね。

岡田 熟練技術とコスト削減の両立。とても興味深いですね。

大角 ところが蒲田の町工場もそうですけが、ネジや釘というツールを使って一生懸命作業しても、ブルーカラーの職人技だけでは、リードタイムや品質原価の改善というところはまだまだということで、ブルーカラーの職人技を代行するファクトリーオートメーションという概念が出てきたのだと気づきました。ネジを何ミリ締めるという作業をファナックさんのFAロボットが代行しているのです。自動化ではなく代行なのです。

岡田 自動化という概念ではなくって、職人さんが持っている熟練度の高い技術をロボットに代行させる。あれはロボットではなくて、ある種やっぱり人間なのですね。

大角 人間なのです。人間として捉えるべきで、ブルーカラーの職人技を代行する技術をつくったから、24時間365日働いても問題ない。工場に就職して一日中ひたすら鉄を拭く作業をやっていると、飽きるし疲れるし腱鞘炎になる。代行する技術は延々可能なわけです。トヨタもカローラを1時間で作るし、日清食品もカップヌードルのあらゆる味のものを100円で商品化できる。一律のクオリティで。
 FAがもしなかったと考えたら、大量生産できず安くできないことがわかりました。では淘汰されたときに、どちらかという僕らコンサルも間接部門ですから、なんで経理部に人が100人いるのだと、まあ、100人というのは大げさかもしれないけどいますよね。

岡田 まあ、座っているだけの人間って存在しますよね。企業で言えば何万人規模を超えるとそうかもしれないですね。

大角 経理、人事、総務、いわゆるバックオフィス、なんのイノベーションも起こってないなと思いました。複式簿記の誕生以来、勘定科目が増えるわけでもない、なんのイノベーションも起こってないなと。

岡田 ひたすら仕分けを切っていたりとか伝票切っていたり、つまり定型・単純な業務を遂行する。そういう世界ですね。

RPAのヒントは製造業の現場プロセスにあり!

大角 ルールは決まっていると。一方で、ブルーカラーは世界と戦っていてイノベーションは起きまくっているのに、なぜ間接部門はいつまでたっても生産性が低いのか。しかも癌を気づいて、そりゃそうだよなと、ホワイトカラーの人とITという二層しかないということに気づきまあした。だからホワイトカラーの業務もそろそろFAのように代行する技術がないといけないなということで、全社にロボット派遣を導入しました。

岡田 専門家の中では技術的失業の話題が注目を集めていますが、ホワイトカラー業務の今後はどのようになってしまうとお考えですか。

大角 これからは、人間とITと代行層という三層という経営技術になるというのが見えたので、否定されようが何しようがそれを続けていきます。ところが話を戻すと、RPAというバズワードが米国から聞こえてきたのが2014年ぐらいで、日本には来ないと鷹をくくっていた部分があります。
 経営技術としてしっかりと、RPAブームが来る前に実践できたら一般化しますよ。デジタルレイバー100、200という全社展開です。今度は自分たちの直感とかアイディアを、デジタルレイバーを活用して売上を上げるという世界です。ある意味自由で表現し放題の世界です。なのに、今はRPAのこの変な、変というか、テクノロジーですっていうブームが来ているのに、簡単にいうとアプリケーション開発と同じアプローチをしてしまう。設計、開発、テストをしてリリースするような世界です。

岡田 コールセンターなどで、お手上げというやつですね。スーパーバイザーが来て、イレギュラー対応するような世界。

大角 これどうしたらいいのですかと、スーパーバイザーみたいなのが来てイレギュラー処理、で、これちょっとほっといてとか、これはこうしてって日本語で伝えると、わかりましたで直りますよね。一緒なのです。だから、私どものアプローチは、デジタルレイバーなのだと思います。
 三つの体感と僕は言っていて、一つ目はまず実際に今現場やっている簡単な仕事をロボットに代わりに働いてもらうという体感です。例えばTBS「がっちりマンデー!!」に出演した時のケースだと、人事担当が800名の従業員ンケートを、個人情報があるのでと一人で集計しなくてはいけなくて、偉い人には報告書作らなければという仕事で丸2を日かかりました。それをビズロボがやったら10分で終わった。コストではなくリードタイムと品質が劇的に上がり、結果コストパフォーマンスが上がって当たり前なのです。そうなると、これまでなんとくだらないことをやっていたのか、この仕事は8時間かかるようなことなのかと。現場に行けば行くほど、そこからだんだんアイディアが出て来ます。日本人は改善意識が強いですから。

◆デジタルレイバーとインスパイアの重要性

岡田 そこが狙いなわけですね。そこでビズロボという少し風変わりだけど自分たちの働く仲間が来ることによって、既存の自分たちの仕事、これまで惰性でやってきた人たちが覚醒するわけですね。インスパイアして、もっといろんなことができるのではないか、もっとこいつにこういうことを任せようと、ものすごくそこで創発が起こって自分たちの仕事を改善しようという気持ちがインスパイアされると。

大角 そう、インスパイアが当たり前なのです。よくデモでやるのですが、経費の申請書を探して作成するという繰り返し、1件3分、20件で1時間かかる。ロボットだとピット押して20秒で終わる。180倍違います。それを目の当たりにした時に人間はどう思うかっていうと、スゴイと思うのですよ。自分の仕事がなくなると思う人は一人もいないのです。
 次の体感は例外処理です。例えばこのロボットが見積書を見てSAPに登録する仕事の時に、項目をずらしたインプット入力をすると止まります。多くの顧客が導入すると夜中に働かし始めて、24時間体制で動かすので、朝出社して止まっていてマズイとなるのです。止まるのはエラーではなく、こういう時はどうしましょうっていうメッセージですよと。基本的な処理だけやらせておいて、例外の時はスキップするようにしとけばいいのです。そうすると後から人がカバーできるのです。100ある作業のうち初日は50をロボットにやらせて、50を人間が行う。その50を見て、例外処理のパターンを直すわけです。業務が異なった時にこのロボットにどういう対応をさせますかという体感をすることによって、初日50%のロボットがだんだんチューニングしていって一週間後に98%だったりするわけです。

岡田 ある種人間がロボットの人材育成をしていくイメージですね。

大角 そう言うことです。だから人間なのです。だからデジタルレイバーなのです。ITではないのです。その2つの体感によって、誰がどう運用して行くかという発想になって運用体制ができあがります。マクロを構築している女の子にやってもらおうか、システム子会社のSE一人で可能なのか、徐々にデジタルレイバーと一緒に人間が働き、何かの時にカバーしていくような体制ができて、それができればデジタルレイバーがどんどん増えていきます。
 現場の女性、現場の職員、とにかく日本のお母ちゃんを救うというつもりでこのビズロボ始めました。実際の例で保険会社でよくあったのは、大口契約で人が死亡した場合、死亡しましたというデータがファイルサーバーに発生したら、2時間以内に契約照会と代理店検索をして、データをコピペしてチェックして、保険金支払いの書類を作るというのが絶対に発生してくる。絶対に2時間以内で、たまたま食事時間に発生して慌てたとか、毎朝出社してから夕方退社するまでエネルギー使っているのですよ。顔つきも正直悪くなると思うのです。夜帰ってどんな顔でお子さんに会うのかなと。シェアサービスセンターや、コールセンター、BPRセンターがありましたからALT、TAB、IBMが作ったシステムを駆使して、一定時間の中で大量のしょうもない書類を作成しなければならない。それがこのビズロボやデジタルレイバーで初めて解決されていって、ストレスがどんどんなくなるわけです。

岡田 そうなると、その日本のお母ちゃんたちは次に何をするのでしょうか。

◆仕事が無くなる?の誤解

大角 その仕事が全くなくなるわけはなくて、アイディアがどんどん出て来ます。仕事がないということはその会社が倒産するということです。私がビズロボを始めた一番の理由は、そこなのですよ。こういうことあったらいいなという、現場のissue、Wishが一生懸命上がって来るのですが、まずは業務効率化委員会やシステム化委員会などで投資対効果の議論があります。この人の仕事を人件費の安いワークシェアリングに出します。そうするとリードタイムと品質が落ちてくるので生産性は上がらない。私がここでビズロボを始めたのはここのところだったのです。ノルマを持った営業の方などはどんどんアイディアが出てきます。人間の貴重なエネルギーを労働にしがみつかずに、遊んでおけばいいのですよ。デジタルレイバーが働いて、オペレーションや生産性、品質も上がっているわけですから、給料は上がります。同じ体制で会社の経営効率が上がるわけですから。

岡田 最近だと、AIを研究している駒沢大学の井上智洋先生や、実業家の落合陽一さんらが、人間と労働との関係やデジタルレイバーの発達により、私たちの労働をどうデザインするかについて、活発な議論がなされています。少し解釈が異なるようですが。別に雇用が奪われるわけではないですよね。

大角 奪われるわけではないです。実際ストレス軽減の方が先です。ところが今のRPAプロジェクトでは、大衆型にしかデジタルレイバーを入れない。

◆HRテックについて

岡田  HRテック、いわゆる人事領域において、RPAというものをちゃんと理解しないと、またかつての給与計算アウトソーシングブームみたいなことで終わってしまうので、最後に人事の皆さんに、勘違いしてはダメな点やRPAやHRテックというのはこういうことが本質だというお話しをいただきたい。

大角 私が1995年に就職した時、全く考えてなかったプログラミングというのをいきなり覚えさせられて、コーディング、プログラミングして、パソコンもインターネットも携帯電話もない、ポケベルみたいな時代の時に自分が何をやってるのかが分かりませんでした。それが97?8年くらいになると、インフォメーションテクノロジー、ITという言葉になり、情報システムが一般化して行って、パソコンもメールもできて、情報システム部が経営組織化しました。こんな風にデジタルレイバー部もしくはデジタルリソース部が必ずできると思います。経営企画と人事をミックスしたような経営組織化が間違いなくなると思っています。
 それからもう一つは、デジタルレイバーを作るのは社員全員、特に若者です。経営技術として一般化して行くことを考えていくと、このRPAというツールの議論ではなくて、こういったデジタル人が会社の中で縦横無尽に派遣されて働く。ある意味IT、テクノロジーの進化という意味でいくと、デジタルレイバーのスケールが増えて行くという話でしたけど、もう一つはデジタルレイバーの高度化ということを考えていて、AIの民主化で人工知能がつき、非常にカジュアルに需要予測ができるようになるなど高度化して行くというイメージです。

岡田 認識技術も上がってきますからね。

大角 そうです。そういうデジタルレイバーのプラットフォームがあるからこそ、様々な技術が附帯されている感じです。あとは業務ロボット、人事系、経理系、総務系、営業系、契約系のように、人と同じでデジタルレイバーにもスペシャルなプロファイルがついて来る。あと業界。そういうようなものが最終的にはデジタルレイバーの進化がオープンになって行くと思います。これからは、もっと創発的なものを提案したいと思っています。

対談後の1枚!

岡田 創発的なものとは?

大角 これからの労働の在り方を根本的に変えたいですよね。これまでどれだけ無駄なことに膨大なエネルギーを浪費してきたのか、それによりストレスやプレッシャーを感じ、生産性を低下させてきたのか。メガバンクをはじめ多くの銀行業務ではこうした点が数多く見られます。

岡田 大変刺激的な内容のお話ありがとうございました。