話題の本や特集で紹介した本など、人事マネジメントに関わる編集部員自らが選んだ本の読書感想コーナーです。以前紹介した「君たちはどう生きるか」は20世紀版の若者の教養書といえるものでしたが、今回は21世紀の子供たちを対象にした教養書であるこの本を紹介します。

BOOK DATA

【タイトル】ミライの授業
【著者】瀧本哲史
【出版社】講談社
【発売日】2016年6月20日出版

ミライの授業

 以前このコーナーで取り上げた吉野源三郎「君たちはどう生きるか」の21世紀版を目指したものというのが本書に対する著者の評であり、私の読後の第一感でもあった。本書は、厳しい環境変化の中で若者が変革者、イノベーターとなるための教養書である。

 大学教員でありエンジェル投資家である著者が、実際に全国の中学校を回って行った出前授業の内容に加筆したものを基礎とし、「14歳のきみたちへ」を書き出しに、今若者が置かれた厳しい現状について問題提起する。そのうえで、若者の周りを取り巻くほとんどの大人がその答えを知らないということを説明して、逆説的に「きみたちは誰にも代替されない未来をつくる人になろう」と語りかける。そして5つの論点を20の人物の事例紹介や事実の補足を元に、ロジカルかつラディカルに説明する。

 特に秀逸なのは本書の序論にあたる「きみたちはなぜ学ぶのか」という部分である。若者が誰しも1度は持つ疑問「なぜ勉強しなければならないのか」に対し、「きみたちは魔法を使う方法を学んでいる。なぜなら」と丁寧に答えている。さらにそういった違和感・疑問を若者が持ち続けることが大事であって、大人はそれを忘れてしまっていることが多い上、その疑問を持つことを止めさせている。しかし君たちは違うし、それに流されないためにしっかり学ぼうと著者が主張することには共感すると共に、非常に危機感を覚えた。また、著者によると、若者のための未来をつくるのが大人の大事な役割の1つであるはずが、大人自身がそれを潰しているという事実があるという。日々を今の外部環境に合わせていかに効率的するか。いかに重要な問題に答えるためにそれ以外の重要ではない問題を選別し捨てるか。と、いう戦略の中で生きる大人が、今を優先し未来を捨てているということは、考えれば当たり前かもしれない。だからこそ、本書は大人が、AI等のデジタルテクノロジーを活用して未来をつくろうとする、我々人事担当者が率先して読むべきものだと感じた。

 本書の他にも「僕は君たちに武器を配りたい」「戦略がすべて」等はベストセラーとなっている。それらの著書の中で若者に問いかける一貫した主張は「事実を知り、それから逃げずに野心をもって強く生きよう」というものである。時に生きていく中では妥協を重ね、世の中の事象に不条理を覚えることがどうしても出てくるかもしれない。そんな時に子供や若者はそれに対してストレートな疑問をぶつけてくるものだ。その時に「大人になればわかる」「きみは何にもわかっていない」「若い」という逃げ台詞で若い世代の未来を潰すことのないよう、本書を読み返したいと思う。

文:葛西 達哉(Insights編集部員)