HRMの分野では幅広い知識・見識をもとに、さまざまな角度から課題を検討・検証することが求められます。それら知見の「マナビ場」として、JSHRM活動以外で実施されている勉強会やセミナーなどをレポートします。
今回は8月6日に実施された東京商工会議所主催の人材育成シンポジウム「社員による自律的な学び×企業のバックアップ=人が育つ組織・企業」をレポートします。

 東京商工会議所の委員会の一つである若者・産業人材育成委員会が、中小企業経営者・人事担当者を対象に開催したシンポジウム。経営を支える重要な人材育成策として、従業員の自律的なキャリア形成と企業の支援のあり方を考える場として、「人が育つ組織・企業」をテーマに、人事・組織論の第一人者である高橋俊介氏の基調講演と従業員の自律的なキャリア形成支援を行っている企業をパネリストとしたパネルディスカッションが行われました。

◆基調講演「人が育つ組織とは 主体性が学びを引き出す」

高橋俊介氏による基調講演

 はじめに人事・組織論の第一人者である慶應義塾大学政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介氏より、「人が組織をつくる~個人のキャリア自律と企業の継続的支援のあり方~」と題した基調講演が行われました。

 昨今のテクノロジーの進歩によって、職場内のコミュニケーションが少なくなり、若者の社会性が低下、上司や先輩の経験や知識が役に立たない場合も多く、「背中を見て育てる」縦型のOJTが崩壊し、立ち行かなくなっていることが指摘されました。

 そのような環境下では、「腑に落とす」「腹落ちする」コーチング型のコミュニケーションや、横型OJT、多面的なフィードバックが必要であるとのこと。個人を成長させるのは業務支援ではなく、気づきと内省を促す場を作る精神的な支援であり、自ら背伸びをしてチャレンジする組織風土を作ることや、チャレンジするにあたって必要なスキルを提供し期待を伝えることも重要で、パラレルワークや社会活動など外部の刺激や経験の機会を提供することも、主体的なキャリア形成の支援となると解説されました。

◆パネルディスカッション

パネルディスカッションの様子

 次に「人が育つ組織の特徴~社員の自律的なキャリア形成を支援する企業の先進事例から学ぶ~」と題し、高橋先生をコーディネーターに、自律的なキャリア形成支援を行っている企業として受賞経験もある有限会社川原代自動車電機工業所の代表取締役湯沢文一氏とイーソル株式会社の管理部人材開発課課長澤田綾子氏、東京商工会議所の研修講師である株式会社ワークセッション代表取締役鈴木泰詩氏をパネリストにディスカッションが行われました。

 それぞれの会社概要と人材育成への取組について紹介がなされた後、質疑応答の形でセッションが行われました。

 10年以上かけて人材育成施策を整備してきて、人事施策関連で受賞したことなどにより、従業員のキャリア形成支援に熱心な会社として定着しつつあり採用に好影響が出てきていること(イーソル)、今まで故障車の故障箇所は経験で見つけてきたが、現在はCTスキャンで探すなど全く新しい技術が導入され、中高年がその技術を習得するのはなかなか難しいが、まず自ら外部の研修などに参加して主体的に学ぶ雰囲気作りをしていること(川原代)、従業員の主体性を引き出すため、課題設定して問題解決する研修や節目にキャリアを考える研修などを行っていること(イーソル)など、具体的な事例や現状が紹介されました。

 多くの企業事例を見ている鈴木氏からは、「集合研修が共通言語となって経験が継承され、共通言語が増えれば求心力が高まる」との話がありました。

 両社とも、経営理念や人材育成方針が創業当初から明示されていたわけではなく、改革を進める中で必要を感じ、明文化していました。経営理念や人材育成方針といった「共通言語」が企業の求心力を高め、主体性を醸成し、自律的なキャリア形成の土台となっていることを再確認しました。

 参加者から「会社の規模に関わらず、創意工夫が発揮できることを学んだ」という感想が寄せられたそうで、このように他社事例をじかに聞くセミナーは「外部の刺激」となって、人事担当者としての主体性を引き出す一助になるのではないかと改めて思いました。

取材・文:土田真樹子(Insights編集部員)