JSHRMでは、会員が自発的にテーマを設けて立ち上げ、会員同士の悩みを解決し自己研鑽に励む「自主研究会」活動を行なっています。「自主研究会おじゃMap」では、各自主研究会の活動内容や様子を紹介します。今回は「(wLc)!ワークライフキャリア研究会」です。

 2018年6月、JSHRM14番目の自主研究会として、キャリアについて議論する場を作りたいと考えていた渡部由樹子氏を代表者とする「(wLc)!ワークライフキャリア研究会」がスタートしました。
 「キャリア」を取り巻く環境はここ最近大きく変化しています。個人の働き方の多様化、価値観の多様化が進み、日本の従来型の昇格管理をモチベーションとする人事施策が行き詰まりを見せる中、2016年4月には職業能力開発促進法も改正され、個人のキャリア自律と組織による支援が求められています。
 組織の中の一人ひとりが、個性や成長、ライフステージに合わせて能力を発揮でき、やりがいを感じられる環境づくりのため、組織はどのように個人を支援し、それを組織の活性化につなげていくのか。自分の納得のいくキャリアの実現のために、組織と個人はいかに共生していくのか。これらの課題について熱く議論し、行動につなげていくことを目的としたワークライフキャリア研究会の第1回の様子をレポートします。

 6月22日(金)19時、日本生産性本部のセミナー室に9名のメンバーが集まりました。
 それぞれ立場や環境に違いはあるものの、共通していたのは、これまでの職業経験の中で「キャリア」という言葉に出会い、今起きている「キャリア」を取り巻く環境変化について(飲みながら)語り合いたい、という動機でした。

 議論の中で以下の3つが問題意識として挙がったテーマでした。


  1. キャリア支援に関する現状
    • 自律的キャリア形成という文部科学省の指針に基づき、大学では熱心にキャリア教育が行われており、今の学生は自分の価値観に従って仕事を選択するということについて学んでいる。結果、「就社」ではなく「就職」意識が醸成されており、旧来の日本型雇用で育ってきた層とのギャップが生まれている。
    • 今、多くの大企業ではキャリアデザイン研修とキャリア面談の実施に留まり、個人のキャリア自律と組織の活性化をつなぐ制度や風土が定着していない。特に40歳以上は「キャリア」についての教育が不十分で、基本的な考え方が身についていない。若手のキャリア形成を支援する側の教育が不十分なため、若手を惹きつけるキャリアパスの整備も十分でない。
    • 企業においても若手のうちからキャリアデザイン研修の実施が必要。研修を受けることで管理職になった時のマネジメントのありようが変わる。変わるためには10年単位の時間はかかるが。
  2. シニアに対するキャリア教育
    • 定年を延長する企業も増える中、まだ先の長い自身のキャリアを考え、動機付ける機会が必要。
    • 日本企業では定年を見据えて退出を促すキャリア支援も多いというネガティブな印象もある。効率重視で働くように育てておいて、「出ていけ」は会社として無責任。残り続けることが難しくなっている環境下、外に出ることも含めて人生を考える機会としてキャリア支援が位置づけられている。プロボノ、留職、ローンディールのような取組も増えている。
    • プロフェッショナルファームはローパフォーマーに対して退職勧奨するキャリアカウンセリングがある。プロジェクト型のビジネススタイルでゴールセットとレビューを繰り返すことで、本人が向き不向きを自覚し、合わないと思うと自分から辞めていくケースも多いが、事業会社の場合、ローパフォーマーはむしろしがみつく、居座る。辞めても今の給与を担保して採用してくれるところはない。本人の希望を汲み上げ、活かし方を考えるシステムをもっと考える必要がある。
  3. キャリアコンサルタントの配置
    • 人事部内に配置する場合と、独立した機能として位置づける場合がある。前者の場合、評価への影響を懸念して結果ワークしないという課題があるため、組織規模の大きい企業はキャリア相談室等独立組織を作る場合も多い。ただしその場合は組織内連携が課題となる。
    • 人事がキャリアコンサルタントの資格を取得し、課題解決に取り組む動きは出てきたが、結局経営層の理解がないとなかなか進まない。昭和の時代を生きた今の経営層の引退を待っていたら日本が危ない。「キャリア」を考えることが重要だという意識ある人たちが考え、発信していく必要がある。

 2時間の議論を経て、全員が改めて「キャリア」について考え続ける必要性を感じ、この研究会でどんな議論を進めていくかを検討した結果、研究会のメンバーが前提となる考え方を理解し、認識を揃えることがまず重要、という合意に至りました。

 「キャリア」という言葉の捉えられ方は、年代や育った環境、受けてきた教育等により人それぞれといっても過言ではありません。今後研究会では、理論だけではなく、社会で起きている課題にも注目し、すべきこと、できることについて実行に移すことを目標に議論を深めていきます。

 自律的キャリアについて自律的メンバーで考える研究会。今後の展開が楽しみです。

松尾寛子(JSHRM会員)