1970年代、先進国の新技術を輸入、改良してきた「キャッチアップ型」の政策と諸制度は日本の高度経済成長を支えました。これは同調圧力や忖度(そんたく)を生み、私たちの意識のより深くまで浸透し、成功を果たしてきました。しかしながら、グローバルな社会で存在感を持ち、個性を発揮し、より豊かな人生を楽しむためには、この枠組みは、私たちの大きな足かせになっているのではないでしょうか。この変革に必要なのは、一人ひとりの「圧倒的な学び」と「自分で決める」ということ、そして、会社や社会の支援が不可欠という認識から、産学官で活躍するユニークなスピーカーの方々と参加者が集い、この難題の解決策を探求。次の行動へつなげる場として、「HR Cafe 2018」(Windows女子部、日本人材マネジメント協会 HR Cafe 研究会のコラボ企画)が7月30日、8月30日の2日にわたり開催されました。7つのSessionをレポートします。
 ※記載している登壇者の所属および役職名は、開催当時のものとなります。

HRcafe2018 「日本の未来は明るいか 企業の価値創造」

◆Session1_日本の人財のグローバル競争力の強化に必要なこと

Session1_日本の人財のグローバル競争力の強化に必要なこと

日本企業の人財のグローバル化が進むなか、重要なポジションが日本人以外で埋め尽くされる。グローバル人財の供給不足を鑑みると、この可能性は否定できないのが現実ではないでしょうか。日本の人財のグローバル競争力強化における課題と対策について、みなさんとともに考えました。

【スピーカー】

橘・フクシマ・咲江 氏 G&S Global Advisors Inc. 代表取締役社長
1972年清泉女子大学卒業。78年ハーバード大学教育学修士、87年スタンフォード大学経営学修士取得。ハーバード大学日本語講師、ベイン・アンド・カンパニー(株)のコンサルタントを経て91年コーン・フェリー・インターナショナル(株)入社。日本支社長、会長を経て2010年から現職。その間、米国本社取締役を12年間兼務。02年より花王、ソニー、味の素等、日本企業10社の社外取締役を及び日本政策投資銀行アドバイザリーボードを歴任。日本取締役協会幹事、日本CGNet理事。03年より経済同友会幹事。11年より15年は副代表幹事を務める。人財のグローバル化及び企業統治促進を中心に活動中。内閣府、文部科学省、経済産業省等で委員を歴任。2008年1月ビジネスウィーク誌「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・トップ100人」に唯一の日本人として選ばれる。著書に「世界のリーダーに学んだ自分の考えの正しい伝え方」(PHP)、「人財革命」(祥伝社)、「売れる人材」(祥伝社)他多数。グローバル人財・キャリア開発、企業統治に関する執筆・講演多数。

森本 千賀子 氏(株式会社morich 代表取締役)
1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒。1993年現リクルートキャリアに入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、多様な企業ニーズに応じて人材コーディネートに携わる。約3万名超の転職希望者と接点を持ち、約2000名超の転職に携わる。約1000名を超える経営者のよき相談役として公私を通じてリレーションを深める。累計売上実績はリクルート歴代トップ。入社1年目にして全社MVPを受賞以来、受賞歴は30回超。常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。NPO理事や複数の社外取締役や顧問なども手掛けパラレルキャリア”を体現する。2012年にはNHKプロフェッショナル仕事の流儀に出演。「本気の転職」他著書多数。2児の男児の母もこなしながらトライアングルハッピーキャリアを大事にする。

船橋 力 氏(文部科学省 官民協働海外留学創出プロジェクト プロジェクト ディレクター)
1994年、上智大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社し、ODAプロジェクトを手がける。2000年、株式会社ウィル・シードを設立し、企業と学校向けの体験型・参加型の教育プログラムを提供する事業を手がけた。2009年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーに選出。現在は、文部科学省・官民協働海外留学創出プロジェクトのプロジェクトディレクターを務める。

鈴木 雅則 氏(ビー・エム・ダブリュー株式会社 人事部 ディレクター)
米)コーネル大学院人材マネジメント・組織行動学修士。GEとグーグルで採用・リーダーシップ開発業務などに携わる。グーグルでは、日本における新卒採用の立ち上げ、およびアジア太平洋地域のリーダーシップ研修プログラムの企画・実施などを担当した。2013年3月、QVCジャパンにリクルーティングディレクターとして入社。その後、QVCの米国本社にてグローバル人材開発チームをリードした。2016年12月に帰国し、HRディレクターアジアを務める。2018年5月より現職。著書に『リーダーは弱みを見せろ』(光文社新書)がある。

◆Think Globally Act Locally(地球規模で考え、地域で行動せよ)

トップバッターは、官民協働海外留学創出プロジェクト(文部科学省官民協働プロジェクト)の船橋氏。彼の手掛ける「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」は、ダボス会議に参加した日本のプレゼンスのなさへの船橋氏の失望から始まったと話されました。船橋氏。当時の下村文部科学大臣に「若い時にこそ、海外経験が必要」と提案、民間から寄付(230社から約130億円の寄付)を募り、官民協働で海外留学支援制度を開始したと説明されました。2014年からスタートしたこのプロジェクトは、2020年までの7年間で約1万人の高校生、大学生を派遣留学生として送り出すという。目的は、派遣留学生は支援企業と共にグローバル人材コミュニティを形成し、「産業界を中心に社会で求められる人材」「世界を視野に入れて活躍できる人材」を目指し海外で活動を行うこと。このプロジェクトに参加したい若者は、自分で行きたい国を選定し、留学計画を企画し、提案することが求められる。現在は6,000人が参加し脱落者がないという。船橋氏の考えるグローバル人材は、「Think Globally Act Locally(地球規模で考え、地域で行動せよ)」。10年かけて3つの分野の経験で100万分の1の人材となることを提唱し、こういった人材が集い、相互に影響を及ぼし、イノベーションを起こすことで世界を変えていく、と説明されました。今後のAIの台頭で感性などが求められる時代は、誰も正解は知らないのだから、定期的に海外に行き、世界を見渡し、自分のことを自分の言葉で語り、共感を生み出す経験が大事と説かれました。高校生の40%は留学したい!との声はあるものの、費用面で断念する学生がほとんど。そのためプロジェクトへの企業からの寄付だけでなく、個人寄付の受付もされていることを紹介されました。

グローバルリーダーは、多様性の活用、新しい価値創造をすること―キーワードは、「外柔内剛」

橘・フクシマ氏は、「グローバル人財育成を30年間提唱してきたが、この10年でようやくその重要性が理解されてきた」と船橋氏のプロジェクトに敬意を示されました。企業の競争力向上には、ミッションを明確化し、適材適所の育成に加えて「適所適財」の登用が必要で、特に一人の人財を国籍、性別など、多様な個性を持つ個人としてしっかりと見たうえでその役職のミッションに最適な人財を内外問わずに登用することが重要と示されました。世界経済の状況として、グローバル経済の多様化、アジア台頭、AI/IoTの進展、シェアリングエコノミーによる就労形態や組織・個人の関係の変化などを示されたうえで、今までの延長線上の付加価値ではなく、AIに代替されない新しい価値の提供できるプロ人財が重要と指摘されました。以前、グローバルリーダー像は、欧米型だったが、アジアの台頭により、新しい像は欧米でもアジアでもどこでも成果をだせ、国境を超えて活躍できるハイブリッド型人財。具体的には、「多様性を活かして結果を出せる人財」。そのためには、戦略的思考(課題抽出力、分析力、数字を読む力(PL/BS)、仮説検証力)、起業家精神、創造的な問題解決能力(誰にも頼れない時、一人で解決できる能力)。その訓練には、常に想定外のシナリオでシミュレーションをすることが重要。また、特に日本人がグローバルで活躍するためには、「コミュニケーション能力」が課題とし、「言わなくても分かってくれる」は甘えに過ぎない。相手と自分との違いを受け入れ、言葉の定義、ファクト(例えば、数字)で説明し、相手に「理解してもらう」ことが重要。日本的な「阿吽の呼吸」は「思い込み」であり、「一を言って十を知る」は「十を言って一を知る」になると説明されました。橘・フクシマ氏のグローバルでの経験として、新しいことに挑戦しても、昔の経験が活きていると紹介されました。これからのグローバルリーダーは、自分にしかない新しい価値創造ができ、国を問わず成果の出せるプロフェッショナルであり、キーワードは外柔内剛(自分の譲れないインテグリティを持ち、多様な価値観を受け入れ、したたかに対応する)だと結ばれました。

◆企業が欲しがる経営人材は大谷翔平選手―攻めて守れる二刀流人材

最後は、30,000人以上の転職支援の実績をもつ転職エージェントの森本氏。本業以外にも、母、ライフワークの3つの役割を自己紹介されました。本職の転職エージェントでは4,500社を担当、海外事業立ち上げや海外拠点統括の支援など2,000人を超える実績があり、なかにはカウンターパートとして、ソフトバンク創業者の孫さんの存在も紹介されました。ライフワークとして、学生時代に学んだことと、企業で働くなかで感じたギャップを「キャリア学」として可視化。学生、小中学校に全国で授業を展開という役割も紹介。今後の労働市場について、遅くとも20年以内に日本の労働人口の50%がAIに代替という調査結果から、会社への所属は安泰でないとし、世の中のスピードの高まりから、身の丈を超える新しいことにチャレンジし、自分を一番活かせる場所を自分で見つけて挑戦ことが大切と示されました。転職エージェントとして企業が欲しい経営人材は、攻めて守れる二刀流の大谷翔平選手。修羅場(挫折や試練、逆境)を経験して、免疫力とし、目の前の変化を受け入れ、非連続のキャリアのなかで、若いうちの経験値を高めること。特に、関連組織・子会社への出向、地方転勤、起業、管理職や新プロジェクト、グローバルへのチャレンジは、変化対応力につながるとされました。結局は、自分で選んだ人生を正解にすること。「気づく」「動く」「変わる」がキーワードとして締めくくられました。

このテーマのリーダーである鈴木氏は、グローバルで環境が大きく変われば、求められる人材要件も変わると前提を示したうえで、「グローバルで活躍できる人の要件」「日本人の良さを活かしてグローバルの環境下でより人材力や組織力を高めるためにできること」の2点を質問されました。船橋氏は、トビタテ!留学JAPANの選考基準の「情熱、好奇心、独自性」、続いて「行動力、リーダシップ」を紹介。変化の激しい時代のグローバル人材の要件も同じ。特に好奇心は、変化を楽しめ、重要。IMDのハイパフォーマー分析にも好奇心があると紹介されました。次に日本人の良さは、手の届くところを自らやり、最後まで実行すること。信頼関係の構築は、その点の強みを自覚すれば日本人は得意なはずである。一方、戦略的な“したたかさ”が不足しているのではと指摘をされました。橘・フクシマ氏は、日本人の型をはずすためには、多様性対応能力、自立と自律、アジリティが必要で、多様な価値観を持った人材との触れあいがカギであると説明されました。 森本氏は、変化対応力とし、右手に算盤、左手にロマンを持ち、人生を楽しむ力。成果を出す人はコミュニケーションを通じた信頼関係の厚みであるとし、時には背中を押すことも必要と紹介されました。鈴木氏は、誰からでも学ぶ姿勢、謙虚さは学習に必要であり、自身も学び、変わり続けることで組織に良い影響を与えたいとして、本セッションを閉められました。

◆Session2_日本からリスペクトされるビジネスパーソンを生むには

Session2_日本からリスペクトされるビジネスパーソンを生むには

まじめさ、和を大切にする、強いコミットメントといった日本人の圧倒的な強み。しかしながら「戦略的発想ができない」「決めない日本人」と評されることもあります。日本の強みを活かし、グローバルで尊敬されるビジネスパーソンのあり方について、みなさんとともに考えました。

【スピーカー】

塩野 誠 氏 株式会社 経営共創基盤 パートナー 取締役マネージングディレクター
経営共創基盤(IGPI)取締役マネージングディレクター/パートナー。JBIC IG Partners代表取締役 CIO。株式会社ニューズピックス社外取締役。慶應義塾大学法学部卒、ワシントン大学ロースクール法学修士。シティバンク、ゴールドマン・サックス、ベイン、ライブドア)等を経て現職。M&Aによる組織統合、イノベーションのための組織設計、企業危機対応、人工知能関連業務に従事。著書に『20代のための仕事とキャリア入門』『世界で活躍する人は、どんな戦略思考をしているのか? 』『ポスト平成のキャリア戦略(共著)』等がある。

山口 周 氏 コーン・フェリー・ヘイグループ シニア・クライアント・パートナー
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、組織開発・人材育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・クライアント・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。著書に『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」』『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術――プロだけが知る「99の心得」』(以上、光文社新書)、『外資系コンサルのスライド作成術――図解表現23のテクニック』(東洋経済新報社)など。神奈川県葉山町に在住。

◆尊敬される日本人とは

山口氏は、最初に尊敬(リスペクト)を「国籍を超えたロールモデル」と定義づけられました。ロールモデルとしたのは、再現可能であるということ。例として本田宗一郎氏、盛田昭夫氏。彼らは、1つの会社の経営者という枠組みを超え、国も背負う。問題意識をもち、自分を信じるプライドをもつ人物として紹介。それ以降、なぜ、このような尊敬される日本人が登場してこないのか問題を提起されました。塩野氏は、ナイキ創業者の自伝「SHOE DOG」(2018年ビジネス書大賞)の登場人物として、焼野原の中で自分の足に仏壇の蝋燭を垂らし、足型をつくり、「もう一回やり直すんだ。」と再挑戦したオニツカタイガーの鬼塚喜八郎氏、「数字だけで判断せず、人を見て投資をしてほしい」と攻寄るフィル・ナイトのナイキの発言に財務諸表の結果を見て投資をしない状況下で投資を決断した日本人がちゃんと存在したこと、「ハードネゴシエーターだけれども、品はある人」が尊敬される日本人だと言葉の定義をつむぎだしていかれました。

◆日本人が尊敬されるための3つの要素
  1. アジェンダ設定能力
    山口氏の、尊敬される日本人が少なくなってきた原因には、時代的な背景があるのではという質問に、塩野氏は、「食うには困らない」「便利になりすぎて飢餓感が不足」としたうえで、象徴的な代表として「コンビニの登場」を指摘。山口氏は、「社会的な基本ニーズが全部満たされ、社会的なアジェンダが提示しにくいため、尊敬される日本人の存在を難しくしている」と示されました。
  2. 身体性
    塩野氏は、社会的・経済的に成功した人のインタビューでは9割が「運だ」と答えたと紹介され、優秀な人が病気をし、出世コースからはずれた事実を見てきたとし、「健康が資産」と指摘されました。山口氏は、健康を維持するには、意味のない仕事に労力を割かないこととし、意味ある仕事には、上司のアジェンダ設定能力が重要で、成熟した日本におけるアジェンダは知的な強度の力が必要だとされました。最近、見られる公の場の不適切な暴言。これは先の見えない不安定さやこれからの社会のアジェンダが設定できていない事実を浮き彫りにしているのではと問題提起をされました。塩野氏は、今の時代は「しっかり見ているよ」「できるようになっていることをわかっているよ」「君のせいじゃないんだよ」と言い続けることが非常に重要で、より感情的で身体性が必要とされました。最近、駅でぶつかりトラブルになるのは、存在を知らせる身体性コミュニケーションの能力がトレーニングされていない(ぶつからないようにする、ごめんなさいと謝るなど)ことを指摘したうえで、今後は存在を認める身体性の重要性を指摘されました。
  3. 真善美、美意識
    「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」(ビジネス書大賞2018準大賞)の「美意識」や「真善美」から、どうすればその目配りができるのか、という塩野氏からの問いに、山口氏は、自分の考えるロジックやモラル、真善美に照らし合わせ、これはおかしいと思っていることは妥協しないとしたうえで、そのためにも、ポータブルな人的資本と社会的資本をメンテナンスし、そこから仕事を生み出せるようにしておくこと。いざという時は、逃げる勇気も必要と示されました。自分の価値観に基づき、物事を判断する力、ロジカルに積み重ねる思考、常識の狭間を見抜くためには、「センスだ」と示されました。塩野氏は、「あの人だったらやってくれるはず」と信用を貯めておくこと。本当に生きるか死ぬかの戦いで、撤退戦の高ストレスの行動にその人の本質が浮き彫りとなり、信用につながる。品があると言われる「野蛮な貴族」こそが、尊敬される日本人で、その人のあり方と示されました。山口氏は迷ったときには、「どちらが自分らしいか」を自分に問うことと示され、盛会のうちに終了となりました。

◆Session3_グローバルで成果を出すために会社が支援できること

Session3グローバルで成果を出すために会社が支援できること

日本で能力を発揮していた人が海外でも成果を出すためには、どのような学びと行動が必要なのでしょうか。アメリカ、ヨーロッパ、香港、中国と、海外で働いた経験を持つビジネスパーソンから、私たち日本人の一人ひとりが取り組むこと、支援が必要なものについて、みなさんと一緒に考えました。

【スピーカー】

馬場 竜介 氏(PwC 人事部ディレクター)
慶應義塾大学経済学部卒。日本オラクルで人事システム導入、人事制度設計、採用などに携わった後、コロムビア・ミュージック・エンターテインメント(現・日本コロムビア)人事部長を経て2008年にべリングポイント日本法人(現・PwC)入社。2015年1月から2017年6月までPwC米国法人にてTotal Rewards CoEグループのシニアマネージャーとして勤務。2017年2月米国人材マネジメント協会(SHRM)認定シニアプロフェッショナル(SHRM-SCP)資格取得。2017年7月に日本に帰任し現職。

鈴木 雅則 氏(ビー・エム・ダブリュー株式会社 人事部 ディレクター)
米)コーネル大学院人材マネジメント・組織行動学修士。GEとグーグルで採用・リーダーシップ開発業務などに携わる。グーグルでは、日本における新卒採用の立ち上げ、およびアジア太平洋地域のリーダーシップ研修プログラムの企画・実施などを担当した。2013年3月、QVCジャパンにリクルーティングディレクターとして入社。その後、QVCの米国本社にてグローバル人材開発チームをリードした。2016年12月に帰国し、HRディレクターアジアを務める。2018年5月より現職。著書に『リーダーは弱みを見せろ』(光文社新書)がある。

田中 憲一 氏(サントリーホールディングス株式会社 グローバル人事部 部長)
大学卒業後、富士通株式会社入社。日本・欧州での人事業務経験後、GE(ゼネラル・エレクトリック)、Burberryにて採用・リーダー育成・組織開発・ビジネスパートナー・アジアパシフィック地域戦略パートナー等、様々な人事リーダー職に従事。現在サントリーホールディングス株式会社にてグローバル人事部に在籍し、人・組織に関わるグローバルな仕組み・枠組みの構築を推進中。

◆プロとして再現ある行動を会社として支援(Attitude)

外資(米)・日系と人事を一貫して担当してきた馬場氏は、現職のPwCにおける社員の支援を中心に制度を説明されました。PwCは世界最大級のプロフェッショナルサービスネットワークとして『社会における信頼を築き、重要な課題を解決する』ことをPurpose(存在意義)とし、世界158カ国に236,000人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供している。時代の背景として、顧客の課題が複雑化・個別化しているなか、国を跨いだビジネス、新たなサービスの提供が求められていると示したうえで、顧客ニーズを深く理解し、必要となる世界中の専門家を揃え、最適な形でOne-PwCとしてのサービス提供を目的として、2011年よりGlobal Relationship Partner(GRP)制度を導入したと説明されました。従来は、Technical capabilities(技術的能力)が重視されがちであったが、PwC Professionalと呼ばれるグローバル共通のフレームワークとして「Whole leadership(全リーダーシップ)」「Business acumen(ビジネス感覚)」「Technical capabilities(技術的能力)」「Global acumen(グローバルな洞察力)」「Relationships(関係性の構築)」を再定義、これをベースに採用、コーチング、育成等の人材マネジメントを展開していると説明されました。GRPのグローバル人材育成により、Global Acumen(地理的・文化的な境界を超越する物の見方・考え方をもって、効果的に業務を遂行。他者と協働するための能力)を高めるために2つの制度を説明されました。「Global Mobility」(目的や職位に応じて段階的な出向プログラムなどビジネス拡大を意図した戦略的な配置)、そして、若手を対象としたグローバルネットワーク「IAN(International Associate Network)」により、国を跨いだネットワークの支援が必要と示されました。馬場氏はニューヨークでのグローバルプロジェクトの参画の経験から、安易に単一の国(日本)だけ、単一のマスメディアだけを信じず、幅広いメディアを確認するとともに自分の目で確かめる、自分の人的ネットワークから情報を得るなどして、幅広い視点で理解を深めることの大切さを伝えられました。

◆やってみなはれ-価値観から社員を支援

続いて、日系、外資(米英)と一貫して人事を担当してきた田中氏。3年前に入社したサントリーにおける社員の支援について説明をされました。サントリーには119年の歴史(1899年に鳥井商店として開業)があり、そのビジネスは、酒類、飲料、健康食品等と幅広い。その幅広さは、海外も含めた企業買収が中心で、仕組みが既にグローバル化している企業買収が基本と示されました。サントリーの売上は2兆1,575億円(2017年末時点)、海外売上の比率は4割、従業員は38,000人のうち、海外は20,000人と増加しても、なお、創業者の鳥井信治郎氏の価値観「やってみなはれ」(人がやらないようなことを、意志をもってやる、やるからにはへこたれずに取り組む)が原点とされました。このグローバル化により、Global HR DepartmentのMissionは「人がもつ力を最大限に!!」とし、グローバルなHRメカニズムを構築中。日本人の当たり前をSuntory People Wayとして共有。国や事業を超えた人材交流、Suntory大学の設立等を通じて、One Suntoryを推進しており、目指す姿は、創業者精神に基づく繋がりを基礎にし、各社の自立とグループ一体感とのバランスを考えながら、世界で響き合う多様な社員と事業から新たな価値を生むこととされました。自律自走する会社同士の繋がりにより、グループの継続的な成長を目指し、原点の「やってみなはれ」の価値観を大切にしたうえで、グローバルマインドを育むとして説明されました。

このテーマのリーダーである鈴木氏から、グローバルで活躍するために自分をどのように変化をさせていくのか(日本人のコミュニケーション、相手に価値を提供するための日常のあり方など)、人事として支援できること(採用から育成、マネジメント層のアプローチ、企業風土の醸成など、周囲を巻き込み、どのように動いてもらうのかの工夫など)の2点を中心に具体的な質問をスピーカーに問いかけ、知恵を引き出していきました。そのうえで、日本人の良さを評価しつつ、違いを認めない、失敗を許容しない傾向を指摘され、もっとオープンな社会をつくるように人事が支援する必要があると発言されました。会場からも質問を受け付け、盛会のうちに終了となりました。

◆Session4_ ワークアズライフ~型にはまらない多種多様なワークスタイル~

Session4_ ワークアズライフ~型にはまらない多種多様なワークスタイル~

キャリア、ワークライフバランスという古い枠組みから、落合さんが提唱する「ワークアズライフ」という時代の到来。自分のビジョンやミッションを持ち、仕事も学びも趣味という境のない主体的な働き方をする価値観とはどのようなものなのでしょうか。自分で考え、主体的に生きることについて、みなさんとともに考えました。

【スピーカー】

志水 静香 氏(ランスタッド株式会社 取締役最高人材活用責任者(Chief People Officer)
前職は元ギャップジャパン株式会社人事部シニアディレクター。大学卒業後、日系IT企業に入社後、外資系IT・自動車メーカーなどを経てギャップジャパンに転職。採用、研修、報酬などの人事制度基盤を確立。2013年、法政大学大学院政策創造研究科修士課程修了。ウルリッチ「人事コンピテンシー」、ウェインベーカー「ソーシャルキャピタル」などのビジネス書を翻訳。昨年、「キャリアマネジメントの未来図:ダイバーシティとインクルージョンの視点からの展望」にて第4章執筆。組織の枠を超えて積んだ経験が個人の能力を引き出すと考え、「越境学習」「組織を超えたら人材異動」を研究。2017年11月ランスタッドに入社、2018年1月より現職。現在、大学やNPO、さまざまな機関で組織開発・人材育成のアドバイザーとして活動中。

仁禮 彩香 氏(株式会社Hand-C 代表取締役社長)
1997年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部在学。中学2年生の時に株式会社GLOPATHを設立、最高経営責任者に就任。教育関連事業、学生/企業向け研修などを展開。高校1年生の時に自身の母校である湘南インターナショナルスクールを買収し経営を開始。2016年に株式会社Hand-Cを設立し、代表取締役に就任。同年DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューが選ぶ未来を作るU-40経営者20人に選出。Hand-CではGLOPATHから事業譲渡した企業研修や、サタデースクールを含む小中高生向けプログラム開発等を展開する。

佐藤 留美 氏(NewsPicks編集部副編集長)
青山学院大学文学部卒業後、出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年編集企画会社ブックシェルフ設立。「週刊東洋経済」「PRESIDENT(プレジデント)」「日経WOMAN」「プレジデントウーマン」などに人事、人材、労働、キャリア関連の記事を多数執筆。『凄母』(東洋経済新報社)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)など著書多数。2014年7月からNewsPicks編集部に参画、2015年1月副編集長に就任

今野 浩一郎 氏(学習院大学名誉教授学習院大学名誉教授)
人的資源管理からマクロの雇用問題まで、幅広く人材開発、人事マネジメント関して研究。労働政策 審議会委員、中央最低賃金審議会会長等を歴任。主な著書:『高齢社員の人事管理』中央経済社2014年、『正社員消滅時代の人事改革』日本経済新聞社2012年、『マネジメント・テキスト─人事管理入門(第2版)』日本経済新聞社2009年

◆アンラーニングから見えた「変えるもの」「変えないもの」

佐藤氏は、時間で区切られているのが仕事1.0。仕事と余暇の区分がない仕事2.0。各企業のヒアリングを通じて、働き方改革は、企業も働く人を抱えきれないことを感じたと説明をされました。時間だけで人の頭や心は切り分けらず、会社もコントロールできないことを考えると、ワークライフバランスは現実的な解ではないのではないのは指摘をされました。佐藤氏のアンラーニングは、フリーランスからNewspicksの立ち上げに参画し、紙面からスマホに媒体が変化し、すべてはPVという数字だと突き付けられたことで、今までの経験をアンラーニング(学習棄却)したと自らの経験を話されました。そのなかで、変わらなかったのは、「人に読んでもらえる価値を読者に届ける」であり、徹底した取材主義、フットワークは不変とされました。データを突き付けられるプレッシャーは辛いことであるが、アンラーニングで変化を前向きにとらえるようになったとされました。

◆一人ひとりにスイッチがある―好きなことを仕事にすること

志水氏は、IT、自動車からファッションまで外資系を中心にキャリア形成し、さらには大学院で再学習し、非正規雇用をテーマに研究を続けてきた経験を語られました。日本は能力も意欲もある人がいるのにもかかわらず、機会が少ないことを課題に示されました。志水氏の日常から、寝ている以外、仕事も趣味も学びも区別はない。時間で仕切ることに合理性はないと提示し、熱狂、ワクワク、自分の強みにフォーカスする方が、成果の質は上がると話されました。一人ひとりにそのスイッチがあるはずで、好きなことを仕事にすることで価値をだせると説かれました。

◆自分の人生は自分が定義するもの

最後に仁禮氏は、湘南インターナショナルスクール(SIS)の幼稚園で「自分で問いを立て、答えを探す」「先生も生徒も共に学ぶ」というスタイルの教育を受けてきたと紹介。公立小学校の「問いも答えもあり、型にはめる教育」に違和感から、その違和感を素直に受け入れて、SISの学長のミス・ゲイティーに「SISのような小学校を作ってほしい」と行動したとし、自らの力で切り開くことを紹介。この行動から「日本の教育を変えたい」という思いを強く持つようになり、高校を買収、企業から資金調達、プログラムの提供を続けた結果、起業という選択肢を選んだと語られました。この経験から言えること。それは、ワークアズライフは「自分が定義し、自分の人生を生きること」だと紹介されました。

今野氏は、まず3人のスピーカーが主張するワークアズライフを「他人からの指示でない」「やりたくてやっている」「自分で決めている」という特徴をもつ働き方であると整理したうえで、ワークアズライフは昔の仕事人間の働き方と何が違うのかと問題提起された。昔の仕事人間であっても、会社から言われたからだけではなく、自分で選択してきた働き方であったからこそ、定年までの長い間懸命に働くことができたのではないか。そうなると、仕事人間型働き方とワークアズライフ型働き方と何が違うのか。仕事人間型働き方は雇用と賃金の保障との交換関係のなかで形成されてきたが、現在はその交換関係が無くなり、結果責任を自己でとるしかない時代になってきた。そのときに現れた働き方がワークアズライフ型働き方ではないのかと主張された。さらにスピーカーから「すべての仕事はクリエイティブにならざるを得ないので、仕事と生活の分離ができなくなる」との共通認識を引き出したうえで、次のことを、議論のまとめとされた。遠い昔は仕事と生活は一体であった。しかし、工業化のなかで女工哀史のように労働者の労働条件が過酷になり、それを回避するために仕事と生活の分離が進められ、さらに最近では、この分離を前提に、仕事が肥大化し生活の質を圧迫するようになったためにワークライフバランスが重視されてきた。しかし、ここにきて仕事がクリエイティブになると仕事と生活の融合が進み、再び仕事人間型働き方が求められるようになってきた。しかし、それは新しいタイプの仕事人間型働き方であり、それがワークアズライフ型働き方なのである。とまとめられ、盛会のうちの終了となりました。

◆Session5_日本の課題

Session5_日本の課題

内閣府が行った世論調査(2014年度)で「50年後の日本の未来は現在と比べて暗い」と答えた日本人は60%。日本人が共通に抱いている期待や信念が未来を作っているのであれば、その現実を受け止め、明るい未来になるように対策を講じればいいという出口氏。そのためには、物事をフラットに見るべく「タテ×ヨコ×算数」が必要で、そのうえで、なぜ、なぜ、なぜと、深く考えてロジックを組み立て、それを実行しさえすれば、日本の未来は明るい。この考えを皆さんと一緒に深めていきました。

【スピーカー】

出口 治明 氏(立命館アジア太平洋大学(APU)学長)
1948年生まれ。1972年、日本生命保険相互会社入社、2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業、2018年1月、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長に就任。『リーダーは歴史観をみがけ 時代を見とおす読書術』(中央公論社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『全世界史(上・下)』(新潮文庫)ほか多数

田中 慶子 氏(フリーランス通訳・エクゼクティブコーチ)
愛知県出身。日本の高校を卒業後、劇団研究員、NPO活動を経てマサチューセッツ州のマウント・ホリョーク大学を卒業。帰国後は衛星放送、外資系通信社、NPO勤務の後、フリーランスの同時通訳者に。ダボス会議創設者のクラウス・シュワブ会長、ダライ・ラマ、総理大臣を始め各界のトップリーダーの通訳を経験。コロンビア大学にてコーチングの資格を取得し、現在は通訳の経験をもとに、ポジティブ心理学なども取り入れたコミュニケーションのアドバイスをするエグゼクティブ・コーチとしても活動中。最近の著書として「不登校の女子高生が日本トップクラスの同時通訳者になれた理由※(2016)KADOKAWAがある。

◆問題を解決するには、物事を正しく見ることから

まず始めに、出口氏は「人間は見たいものしか見ない」としたうえで、物事をフラットに見るためには方法論が必要だと説明されました。その方法論は「タテ・ヨコ・算数」。タテでは、昔の人はどう考えていたのか。ヨコは世界の人はどう考えているのか。そして、数字に直して定量化しなければ、物事を正しく見ることができないとされました。日本の問題は少子高齢化と言われて久しいが、若者が高齢者を支える「ヤング・サポーティング・オールド(young supporting old)」という考えは、高度成長期の人口増加を前提とした古い発想だと指摘されました。少子高齢化が先に進んだヨーロッパを見れば、20年以上も前から消費税を財源として年齢を問わず全員で社会を支え、困っている人に集中して給付を行う「オール・サポーティング・オール(all supporting all)」に切り替えていることを紹介されました。日本もあと5年もたてば、団塊の世代が後期高齢者となり、特に東京は介護の担い手が不足という問題に直面すると示されました。

◆複雑な問題を効果的に解決する考え方とは

介護の問題を解決するには、介護の定義から考える。単純に考えれば、平均寿命-健康寿命である。如何に健康寿命を延ばすか。この解は、医学的には「働くこと」が一番。定年を廃止すれば、介護が減り、医療年金財政も好転し、年功の考え方もなくなる、即ち、最小限で最大限の効果が得られると示されました。働くことは、今の体力、能力、意欲で何ができるかと、問い続けることを意味し、定年廃止は人生100年時代における中高年のやる気も促すことになる。2030年にはAIでとても埋められない800万人の労働力不足を解消させる必要があり、定年というこれまでの社会常識を改める必要があると語られました。

日本が少子化の問題を解決するには「シラク3原則」がいい手本だとし、フランスではこの原則で出生率を10年間で0.4~0.5ポイントあげ、2.0%の大台回復を実現した。シラク3原則はシンプルで、まず第1に女性が産みたい時に産む。産みたい時とその女性の経済力は一致しないので、その差は政府が埋める。第2には、待機児童ゼロ。最後は、育児休業を理由としたキャリアダウンを法律で禁止。日本もこの原則を導入すれば出生率は上がる、待機児童の解消は小中学校の統廃合で余った教室を保育園に変えれば容易に解決できると示されました。しかし、世界で一番高齢化が進んでいる日本は、医療費などで新たな出費(予算上)として5,000億円が必要で、経済成長がない限り、現状維持も難しい。生産性や女性の社会的地位を114位から引きあげる抜本的な改革が必要とし、製造業の工場モデルの「メシ・フロ・ネル」の長時間の働き方ではアイデアはでてこない。働き方改革が必要と説かれました。

◆製造業の工場モデル「メシ・フロ・ネル」の限界

バブル崩壊以降、製造業の工場モデルから、サービス産業中心の世界となり、GAFAやユニコーンが世界を牽引する時代となった。製造業の工場モデルのままでは、GAFAやユニコーンは生まれない。GAFAやユニコーンはダイバーシティと高学歴化が鍵。日本は先進国の中では大学進学率が低い国(ピークで52%)でOECD平均6割超えを下回っており、さらに企業も、大学院卒の採用を躊躇。アイデア勝負の世界では、みんなで学ばない限り、アイデアは出ず日本の経済成長はないと説明されました。サービス産業化した社会では、ユーザーの6~7割が女性であるため、日本経済を支えている50,60台の男性では消費のニーズをとらえきれず、需給のミスマッチを起こしていることも指摘されました。このミスマッチを防ぐ一番の策は、クオーター制であり、役員の4割が女性でないと上場を取消すのはこのミスマッチの解消のためで、日本はそこまで踏み込めていないと示されました。これからは、長時間労働をやめ、社会全体が「人・本・旅」で学び直さないと、日本の未来はないと念を押されました。

◆社会を伸ばすには、異なったアイデアの組み合わせ、好きなことを突き詰めることが必要

誰もがおいしい人生を生きたい―おいしい人生を因数分解すると、「知識」×「考える力」が必要と説明されました。また、イノベーションを起こすためには、既存知(知識)間の距離の遠さが必要で、同質社会からは新しい発想が生まれない。好きなことを徹底して学び自分の頭で考え、人のマネをしないことだと説かれました。さらにGAFAやユニコーンを生むには、ステーブジョブスのような人間が必要で、今までの日本の教育(みんなで決めたことを守ろう、協調性が大切とする製造業の工場モデルに適した人材育成)は限界に来ており、これからは尖った人を育て、違った人を大切にしないと社会の成長はないとされました。イノベーションは同質な人ばかりでは、絶対に生まれないことに気づいたGoogleは人事部のデータとして国籍、年齢、性別、顔写真を全部捨て、過去のキャリア、今何をしているのか、将来の希望だけを聞けば人事はできるとしていると、多様な人材を確保することの事例の1つとして紹介されました。

◆日本の未来はみんなの行動でつくるもの

「よく日本の未来はどうなるのでしょうか」と聞かれるが、未来は皆さんが作るもので、皆さんがどう行動するかは僕にはわからないので、未来はわかりませんと話されました。勉強せずに今までと同じ行動を取るのなら、日本は衰退しかない。だからこそ、人・本・旅で勉強し、行動すること。特に女性が頑張れば、女性の地位は100番くらいあがり、日本の未来は明るいと話されました。「たった一人だけの行動では変わらないのでは?」という質問には、「北京のチョウの羽ばたきがニューヨークでハリケーンになる」ように一人の行動こそが大きい。だから、女性の皆さんが頑張れば日本の経済は大きく変わるとされ、歴史から学ぶと、悲観論は全敗で、楽観論は全勝だと示されました。そのうえで、日本は改善余地が山ほどあり、女性の皆さんが明るく元気に頑張れば、とても楽しい世界になる。日本の未来は明るいと示され、これが僕の結論とされました。

このセッションの案内人の田中氏は、参加者からの意見を丁寧に受けとめ、その意見を代弁するかのように「無闇に心配するのではなくて、心配するべきことをちゃんと心配する」「楽観的に行動」「自分の好きなことを突き詰めることの重要さ」と整理され、盛会のうちに終了となりました。

◆Session6_ワークライフシナジーへのチャレンジ

Session6_ワークライフシナジーへのチャレンジ

「閉塞感」を打破するために必要な「新しい働き方」働き方の多様化で、《ワーク》と《ライフ》の境界線はあいまいになり、企業人としての価値創出のあり方、所属や報酬体系の考え方、マネジャーに求められる役割が大きく変化しています。先行事例から、企業と個人とも利益を得るワークライフシナジーの創出のあり方について、みなさんとともに考えました。

【スピーカー】

森本 千賀子 氏(株式会社morich 代表取締役)
1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒。1993年現リクルートキャリアに入社。転職エージェントとして、大手からベンチャーまで幅広い企業に対する人材戦略コンサルティング、採用支援サポート全般を手がけ、多様な企業ニーズに応じて人材コーディネートに携わる。約3万名超の転職希望者と接点を持ち、約2000名超の転職に携わる。約1000名を超える経営者のよき相談役として公私を通じてリレーションを深める。累計売上実績はリクルート歴代トップ。入社1年目にして全社MVPを受賞以来、受賞歴は30回超。常にトップを走り続けるスーパー営業ウーマン。NPO理事や複数の社外取締役や顧問なども手掛けパラレルキャリア”を体現する。2012年にはNHKプロフェッショナル仕事の流儀に出演。「本気の転職」他著書多数。2児の男児の母もこなしながらトライアングルハッピーキャリアを大事にする。

中根 弓佳 氏(サイボウズ株式会社 執行役員 事業支援本部長)
和歌山県生まれ、慶應義塾大学法学部を卒業後、関西の大手エネルギー会社に入社、2001年サイボウズに転職し、知財法務部門にて、経営法務、契約法務、M&A、知的財産管理等を担当。その後現在は、人事部門も含めた管理全般の責任者として、複業を許容し、キャリアブランクのある人材を採用するなど、会社(チーム)の在り方と個人の幸せな生き方を両立する制度をすすめる。2017年からはチームワーク総研を立ち上げ、その運用ノウハウなどを他社に提供し、チームワークあふれる社会への拡大推進を実行中。

島田 由香 氏(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GE(ゼネラル・エレクトリック)にて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPRトレーナー。日本の人事部HRアワード2016個人の部・最優秀賞受賞。中学3年生の息子を持つ1児の母親。

中田 元樹 氏(DIK代表、株式会社morich 働き方改革プロデューサー)
東進ハイスクール校舎長、社長室担当を歴任、その後日本IBMを経て、NTTデータ経営研究所にて業務改革のコンサルティングを行う。システム構築、固定費削減、購買改革、グローバル物流改革など多岐にわたる分野において、データ分析にもとづいた意思決定支援プロジェクトに従事。業務可視化による業務効率化手法を得意としており、多数の企業の業務改革プロジェクトを推進。日本IBMでは「一 番のEXCELの使い手」と称され、働き方改革への啓蒙活動として「EXCEL&POWER POINT働き方改革研修」を推進。企業や各種団体への導入事例も多数。

このテーマのリーダーの中田氏から、まずはワークライフシナジーの定義として、ワークもライフも別物ではなく、この2つが相互に作用してシナジーをつくるのだと示したうえで、ご自身のキャリアを説明され、今の事業はコンサル時の副業から始めた、と付け加えられました。今回は企業の事例として、ユニリーバとサイボウズの人事制度や風土づくりの紹介、個人としてワークライフシナジーにどう向き合えばよいのか。森本氏のキャリアの事例紹介などを通じて、会場の質疑応答を受けながら進められました。

◆無理に交流させない―社員が勝手にイノベーションを起こす

中根氏は、自己紹介をされたあとに会社の説明をされました。サイボウズのミッションは「チームワークあふれる社会を作りたい」にあり、ITを中心にして、様々なチームのコミュニケーションをサポートし、結果としてチームの効果・効率・満足・学習を高めることが理念と示されました。サイボウズの2005年の離職率は28%。「チームワークをサポートしている私たち自身のチームワークがボロボロだったら最悪」「私たち自身も最高のチームワークでパフォーマンスを出していこうよ」と声がけをして社内改革を進めたと説明されました。働く時間と場所の選択。副業の解禁もチャレンジ。その副業は、多様で、執筆活動、企業経営、農業×ITなどがあり、会社としては管理していません。無理に交流させなくても、社員が勝手にイノベーションを起こしていると説明されました。現在は離職率5%と低く(IT業界は10%が目安)、現在は安定した企業経営ができていると伝えられました。

◆本当のパラダイムシフト―心配から信頼へ「ぱ」を「ら」に変える

島田氏は、ユニリーバではBe yourself(自分らしくある)をとても大切にしていると説明したうえで、社員には、自分らしい人生とは何かについてもっとみんなに考えてもらいたい、という思いを語った。社員が結果として人生を考える、振り返ることにつながった制度の一例として、2016年7月から導入した「WAA」(Work from Anyway)を紹介。働く場所や時間に選択肢を増やし自分らしく働くことで結果をだすことの効果を、人生と仕事がつながっているというワークインライフの考え方とともに紹介しました。また、同社では兼業・副業も認められており、社員は自分がどんな働き方をしたら効果がでるかを知っている、自分で選ぶことで結果につながることについて述べました。根底にあるのは、「社員を信頼する」ということ。心配から信頼へ、つまり「ぱ」を「ら」に変えるのが、本当のパラダイムシフトだと、IMD の高津尚志さんがなづけてくれたエピソードを添えながら、一人ひとりの能力や可能性は一社に限るものでないとし、その人がどう働くのか、持って生まれたものを余すところなく発揮していく機会や場所をつくるのが、企業の一つの大きな社会的責務だと結ばれました。

◆副業をサードプレイスに―本業と副業のシナジー

人材業界一筋の輝かしい森本氏のキャリア。森本氏はご自身のキャリアの軌跡をワークライフシナジーというテーマに沿って紹介されました。森本氏のキャリアのスタートは新卒で入社したリクルート。この時代の日本は、いわゆる終身雇用で真面目にコツコツ働けば、右肩上がりで収入とポストが上がる一方、アメリカでは自分のマーケットバリューのために転職をして場所を変える。これを見た森本氏は「いずれ日本もアメリカのような日がきっと来る」と考え、当時は無名のリクルートの子会社に躊躇せずに入社したという。(当時は数百社もない人材紹介事業者。昨年実績2万社以上)。リクルートで25年のキャリアを積むなか、自分の Will を実現するため、5年ほど前に個人事業主として兼業の道に。リクルートという組織に所属しながら、事業主となる。これからは自分のやりたいことを自由に制約なくやりたいと考え、昨年の10月に株式会社morichとして独立、リクルートを卒業。「パラレルキャリア」として副業を実現しながらシナジーを発揮、継続的な成果が見いだせたとメッセージした。森本氏は「働くことだけでなくキャリアは人生そのもの」とし、本業だけでは成長の機会が限られている、副業をサードプレイスとして位置づけてはどうかと提案されました。森本氏が経験したNPOやPTAなどの副業を紹介し、必ずしも収入につながらなくとも、存在意義やマネジメントの在り方など、物事の本質を考えるよい学び場とし、本業の価値をあげる大きな気づきになると紹介されました。

ワークライフシナジーを支援する制度の成功として、中根氏は、一人ひとりが自立していること。自立して選択する人は、幸福感が高く責任感があると説明されました。島田氏は、自分がベストでいるのは自分が知っているとし、本人がやりたいことを自分で決め、自分の好きなことを繋げてシナジーでパフォーマンスを出すこと。会社は管理せず、ワークライフハッピーを支援するべきとし、盛会のうちに終了となりました。

◆Session7_パフォーマンスを最大化させるリーダーシップについて考える

Session7_パフォーマンスを最大化させるリーダーシップについて考える

日本企業が変化の速い環境に適応しパフォーマンスを最大化していくためには、従業員一人ひとりが自分自身考え、意思決定し、行動する主体的なリーダーシップを発揮することが、これまで以上に必要となってきているのではないでしょうか。そしてそれを牽引する、組織活性の鍵となるリーダーに求められていることとはどんなことでしょうか。いきいきとした組織づくり、そして一人ひとりが「変わる、チャレンジする」ということについてみなさんとともに考えました。

【スピーカー】

谷本 美穂 氏(グーグル合同会社 人事部長)
慶應義塾大学卒業後、人材サービス会社を経て2000年GEに入社。その後17年間にわたり、日本GE本社部門の採用リーダーや組織開発マネジャーなどを歴任し、グローバルリーダーシップと組織開発に携わる。GE人事リーダーシップ・プログラム卒業生。2011年、日本人で初めて米国のGEグローバル本社人事部門に異動、次世代グローバル人事リーダー開発を担当。2018年2月末までGEジャパン株式会社執行役員人事部長。2018年5月より現職。米国NLPプロフェッショナルコーチ。中学生、小学生の娘を持つ2児の母親。

源田 泰之 氏(ソフトバンク株式会社 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長)
1998年入社。営業を経験後、2008年より現職。新卒及び中途採用全体の責任者。採用では地方創生インターンなどユニークな制度を構築。幅広い分野で活躍する若手人材と、企業の枠を超え、国内外問わず交流を持つ。グループ社員向けの研修機関であるソフトバンクユニバーシティおよび後継者育成機関のソフトバンクアカデミア、新規事業提案制度(SBイノベンチャー)の責任者でもあり、ソフトバンクユニバーシティでは、経営理念の実現に向けて社員への研修を企画し、社内認定講師制度などのユニークな人材育成の制度を運用。教育機関でのキャリア講義や人材育成の講演実績など多数。

島田 由香 氏(ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役 人事総務本部長)
1996年慶応義塾大学卒業後、株式会社パソナ入社。2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得、日本GE(ゼネラル・エレクトリック)にて人事マネジャーを経験。2008年ユニリーバ入社後、R&D、マーケティング、営業部門のHRパートナー、リーダーシップ開発マネジャー、HRダイレクターを経て2013年4月取締役人事本部長就任。その後2014年4月取締役人事総務本部長就任、現在に至る。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。米国NLP協会マスタープラクティショナー、マインドフルネスNLPRトレーナー。日本の人事部HRアワード2016個人の部・最優秀賞受賞。中学3年生の息子を持つ1児の母親。

寺杣 郁江 氏(トランスコスモス株式会社 人材マネジメント統括部統括部長)
マーケティングリサーチ会社2社を経て、2004年トランスコスモスに入社。リサーチ部門責任者、人材開発部門責任者、ダイバーシティ推進責任者を歴任。経営幹部候補、次世代リーダー育成に長年携わる。2017年12月より海外事業統括 人材マネジメント統括部長として、海外人事、採用、経営人材育成の責任を担う。

◆内省と対話のリアルな経験こそが人の成長を加速させる

源田氏は、人事の仕事は人と組織と事業をつなぐこと。事業戦略に基づいた人の採用と育成をすることと説明をされました。人事の根本的な考えは、社員に主体性や当事者意識を求め、手を上げてくる人には皆にチャンスを提供したいスタンスにあることを示されました。人の成長や採用に10年間携わる中で紡ぎだされた源田氏のリーダーシップは、内省と対話を繰り返し、自分で意思決定したことをコミットするリアルな経験の積み重ねで育まれたと示されました。キーとなるのは「対話」。海外の有名な大学でも本当のエリート同士のインターナショナルな対話をどう促すかが重要視されており、cafeや寮など人が集う空間に投資をし、講義のコンテンツはオンラインでよいと割り切っていると示されました。起業家を育成するために用意されたソフトバンクグループの「イノベンチャー・ラボ(ソフトバンクイノベンチャーの制度を支えているコミュニティの名称)」のコミュニティ、孫 正義が私財で設立した孫正義育英財団も、対話によるチームワークの醸成を大切にしており、事務局は彼らがやりたいことを支援するという姿勢でよいと話されました。突出した分野に能力を持つ人や海外の異才にアプローチをし、多様なコミュニティのなかで対話が生まれる支援を継続したいと意気込みを語られました。

◆リーダーシップは自分で自分をリードすることから始まる

谷本氏は、リーダーシップとは周囲にポジティブな影響を与える行動であること。役職とは関係なく全社員に期待するもの。そうして一人一人が自ら考えて行動を起こし、オーナーシップをもちイニシアティブを発揮することで、組織全体が活性化されると説明をされました。GoogleやGEといったグローバル企業では、良いアイディアはどこから出てきてもいいとして、誰もがリーダーシップ、イニシアティブをとることを促進する風土づくりをしていると説明されました。そのキーとなるのは、遠くの人事よりも上司やリーダーの存在が圧倒的に大きいと示されました。例えばGoogleのリサーチでは、成果をあげているチームの重要な要素はチームリーダーの特質。そしてチームの生産性は、メンバーの優秀さ以上にそこに心理的安全性があるか、組織のリーダーがメンバーに対して安全安心な風土づくりをしているかが大事、と紹介。一人一人のリーダーシップが組織に与える影響は大きいので、グローバル企業では役職が上がれば上がるほど研修も手厚いと説明されました。その研修の内容は、チームからフィードバックをもらって自分自身を見つめることから始まり、異質なものに触れたり、よりシニアなリーダーからコーチングを受けたりしながら、自分の強みや弱みと向き合い、自分自身のリフレクションを繰り返すというもの。こうした自分を見つめる内省、学び続けることからリーダーシップが育まれる。つまりは全ては自分を知り、自分で自分をリードすることから始まる、と説明されました。リーダーシップは「人が心動かされる」こと。リーダーの見せる明るい未来のビジョンへの情熱、それに対するコミットメントと覚悟、前向きで明るい姿勢、でも謙虚でハングリー。そして何よりも周囲の人に対するあたたかいハートがあるか。こんな姿に心動かされるのではないか。ご自身の持論を熱く語られました。

◆リーダーの定義は自分で決める

島田氏は、パフォーマンスを出すために必要なことは「Be myself」(自分自身であること。つまり、自分のよい状態を自分で理解していること)と示されました。自分が自分のリーダーであるか。まずは自分にフォーカスを向けること。自分を知っていることからでしか、スタートしないと断言されました。「自分のなかでのリーダーは何か」。自分で定義をつくってほしいと提案されました。島田氏は、“LEADER”のそれぞれの文字に、自分なりに大事な意味を当てはめ、一つ一つを鏡にしていると自らの体験を伝えられました。まずLはLove、そこに愛があるかどうか。厳しいことを言っても愛があるかどうかが大事であるということ。EはEnergy、その人なりのエネルギーがあること。AはAuthenticity、ありのまま隠すことなく信頼すること。DはDrive、自分の人生を自分自身で進めていく。そして、もう一つのEはEnthusiasm、熱狂や情熱を持って「私は、コレは譲れません!」というものを持っていること。最後に大切なのは、RのRespect。どんな人に対してもどんな事があっても尊敬して尊重すること。これらの言葉に加えて、“Ship”は信念とか在り方を指す状態のこととし、私は真のリーダーを見たとき、こうありたいなと思ったことを確立したとしたうえで、自分の言動にも素直になれる、自分のリーダーの定義をどんな表現でもいいから書いてみることを今一度、提案されました。

このセッションのリーダーの寺杣氏は、対話と一対になっているものは安心安全の場。それを提供するのは会社。そのなかで繰り広げられるのが対話。これを通じてパフォーマンスを上げていく。そうした環境をつくりだすことを支援することが人事の役割として結論付けられ、盛会のうちに終了となりました。

聞き手・文:武田 行子 (HRcafe研究会)


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