現在新卒採用市場は空前の売り手市場と言われています。学生さんにとって就職活動(シューカツ)は、多くの時間とコストをかけるに値する重要事項です。授業、サークル、アルバイトとの両立には厳しい局面も多いと聞きます。面接選考時期に入ると、多くの企業へ足を運ぶ必要が出てきます。アクセスに恵まれた都市部の就活生ならいざ知らず、地方の就活生にとっては、応募先企業までの交通費や滞在費(宿泊費、食費等)が大きな負担となります。地方就活生の過酷な実態は、意外と見えにくい現実があります。今回は、地方就活生と企業を直接つなげるダイレクトリクルーティングサービスを提供している株式会社地方のミカタ取締役DEOの佐久間さんにお話を伺います。

聞き手・文:岡田 英之(Insights編集長)

株式会社地方のミカタ 取締役DEO 佐久間 大 氏

株式会社地方のミカタ 取締役DEO 佐久間 大 氏
2004年8月フルタイムインターンとして『残業時間』が毎月200時間以上の環境で、社会人デビュー。その後、ゲームメーカーへ転職。日本を飛び越えて世界のカジノ市場を相手に、ゲームの開発や開発戦略を担当する。2008年12月「動画×IT」のベンチャー企業へ転職。新卒採用市場向けに、「採用マーケティングサービス」の事業責任者をしつつ、ITグローバル企業のマーケティング担当者を顧客に、動画マーケティングを提供。2015年11月株式会社地方のミカタの取締役就任。2016年3月青山学院大学大学院にて経営学修士(MBA)、修了。

◆テクノロジーの視点から未来を予測したい

岡田 英之(編集部会):今回は、地方の学生に特化した就職支援サービスを展開する「株式会社地方のミカタ」の取締役、佐久間大さんにお越しいただきました。まずは佐久間さんの自己紹介をお願いします。

佐久間 大(株式会社地方のミカタ 取締役DEO):私は大学卒業と同時に広告代理店に就職しました。その後ゲームメーカー、IT系ベンチャー企業を経験した後、2015年11月から株式会社地方のミカタで取締役に就任しています。ちなみにゲームメーカーでは世界のカジノ市場をターゲットとしたゲーム開発や開発戦略を担当しており、ITベンチャーでは新卒採用市場向けの「採用マーケティングサービス」の事業責任者や、ITグローバル企業のマーケティング担当者向け「動画マーケティング」を提供していました。

岡田:現在ご関心を持たれている分野についても教えていただけますか?

佐久間:未来のこと、未来を予測することに興味があります。特にテクノロジーを中心に、未来がどうなっているかを知りたいですね。

岡田:テクノロジーの視点から見た未来ですか。

佐久間:はい。今の時代、世の中をダイナミックにシフトさせているのがテクノロジーです。たとえばスマートフォンが登場したのは比較的最近のことですが、そこから世の中のサービスや生活スタイルが大きく変わりました。同時に、クラウドの登場も世の中のビジネスモデルを劇的に変化させています。少し前まではデータの蓄積に膨大なコストをかけるのが常識で、企業も何十億円もかけて自社のデータシステムを作っていました。ところが今では、わずかな月額料金でより多くのデータを扱えるようになっています。わずかな期間でこれほど大きな変化が起きているわけですから、この先、2025年や2030年がどうなっているかを予測するのはとても面白いです。
またここ最近伸びている企業と従来の企業、たとえばユニクロやZOZO TOWNのような企業と百貨店との間で、大きな差が開いてきています。特にユニクロなどはコンサルまで入れて積極的にデジタル化を進めていますから、今後の状況がさらにどう変化していくか興味がありますね。

◆東京で就活を行う地方の大学生をサポート

岡田:株式会社地方のミカタの取り組みについて教えてください。

佐久間:東京で就職活動をしたい地方の大学生を支援しています。地方の大学生にとって、東京での就職活動には大きなハードルがいくつもあります。たとえば春の就職活動の時期や夏のインターンシップの時期などは、泊まる場所をなかなか確保できません。もちろん宿泊費も交通費も割高です。なんとか泊まる場所を確保できても、こんどは日中の滞在場所がありません。

岡田:日中の滞在場所、ですか。

佐久間:東京の大学生には自分たちの家や学校という場所がありますけど、地方から出て来た学生にとっては、落ちついてエントリーシートなどを書ける場所がないのです。せいぜいマクドナルドやスターバックスくらいですよね。
当社では、そういう学生が利用できる滞在場所として「就活カフェ」や「就活シェアハウス」を有料で運営しています。

地方学生の就活のリアル

岡田:地方の学生が東京で就職活動するには、具体的にどれくらいの費用が必要なのですか?

佐久間:それについては毎年アンケートをとっていまして…就活のスタートから内定を獲得して就活を終えるまで、平均で26万円です。エリアによっては50万円、60万円という金額も珍しくありません。春休みや夏休みは飛行機代やホテル代も高く、たとえば沖縄の学生が東京に行く場合、片道の飛行機代が安くても2万円台後半だったりします。企業の中には最終面接や内定式に限って交通費を出してくれるところもありますが、大部分の会社ではすべて学生の自腹です。また地方の自治体は優秀な人材を県内に留めておきたいので、東京で就職活動する学生への支援にはあまり積極的ではありません。
実は弊社を利用して東京で就職活動する地方の学生のうち、6割は国立や公立の大学生なのです。もともと経済的な事情から大学を選んでいる学生も多いので、全体として経済的にはあまり余裕がありません。3年生になったあたりからアルバイトで貯金して就職活動に充てたり、奨学金を節約して就活に回したりしているケースもあります。そのような学生を支援することが、当社のミッションのひとつです。

◆地方の就職イベントで発生するミスマッチを防ぐ

岡田:地方の大学生の就活傾向について教えてください。

佐久間:東京や大阪、名古屋といった大都市以外の私立大学についていえば、地元志向が強いですね。自分たちの県内か、周辺エリアで一番発達している都市で就職活動する傾向があります。九州エリアなら福岡、東北エリアなら仙台、北海道内なら札幌、四国なら(エリアからちょっと外れますが)岡山、といった具合です。
国立や公立の理系の学生は、地方の大手メーカーなどで研究開発職を目指すケースが多いです。たとえば広島の学生ならマツダに入社するとか…。もちろん大学院に進む学生もいます。文系だと圧倒的に公務員、しかも地方公務員です。電力や鉄道会社などインフラ系や銀行も人気があります。いずれにしても、地方の大学生でわざわざ東京に来るのは1割~2割程度です。

岡田:意外と少ないのに驚きました。その背景には何があるのでしょうか?

佐久間:地元の大学に進む学生の多くは地元が好き…というか、家族や友人、先輩・後輩とのつながりを残したいという気持ちが強いです。また大学受験のときに東京の私大を受けてうまくいかず、その印象を引きずっているケースもあると思います。
一方で地方の国立・公立大学は周辺の県外からの進学率も高く、そうした学生はもともと一人暮らしをしていて地元の友達もほとんどいませんから、地元への愛着はあまりありません。東京など大都市での就職活動に前向きなのはこのタイプの学生が中心です。

岡田:なるほど。地方の大学生の就職活動について、企業側の課題はありますか?

佐久間:全国的な少子化の影響で、今はどの企業にとっても学生の確保が難しい時代です。これまで東京の企業の多くは、東京中心の採用活動を行ってきました。ですが母数の減少に加えて、都内の優秀な学生は大抵の場合、大手企業を含め何社もの内定を取っています。ですから中小企業が優秀な人材を確保するには、地方の学生にも積極的にアプローチする必要があるのです。たとえば2月・3月に札幌で開催される就活イベントなども、以前は季節的に飛行機の遅延や欠航のリスクがあるため敬遠されがちでした。ですが最近では、こうした季節でも東京からの企業の参加が増えています。
一方でこうした企業側の努力は、学生とのミスマッチで終わってしまうケースも多いのです。

岡田:と、いいますと?

佐久間:たとえば福岡の就活イベントに参加したとします。福岡なら九州エリアの学生が集まってきますが、彼らの多くは「福岡の会社で働きたい」わけです。そこに東京の企業が参加して会社説明をしたとしても、学生は一応見に来てくれるものの、そもそも「東京で働く」という意識がないので話が先に進みません。これがミスマッチです。せっかくお金をかけて地方に出張しても、結局はコストの無駄になります。また脈のありそうな学生を見つけても、地方にいてはフォローが大変です。実際、地方の学生に対して社員面談などのアフターフォローをしっかりできる会社はほとんどありませんね。
この点、当社がサポートしているのは「東京の会社で働きたい」という学生ですから、当社のサービスを活用していただければミスマッチは起こりにくいと思います。

◆就活シェアハウス事業について

岡田:就活シェアハウス事業の概要を教えてください。

佐久間:当社では23区内に複数の不動産物件を確保し、就職活動で東京にやってくる学生に提供しています。就職活動シーズンの2月や3月は1日あたり180人くらいの学生に利用されていて、稼働率は常に95%を超えています。物件はオーナーから直接運営を委託されるケースと不動産会社を通して借りる場合とがあり、最近では民泊を営んでいる方から、民泊期間として許可される日数(1年のうち180日)以外の期間をまるまる貸したいというご相談も受けています。就活シーズンはせいぜい90日から120日程度ですから、当社としても好都合ですね。

岡田:その就活シーズンについて、最近では見直しも検討されています。これは地方の学生にどういう影響を与えるとお考えですか?

佐久間:大学を4年で卒業するのが前提であれば、就活時期の自由化は地方の学生にとって不利になると思います。月曜から金曜まで授業やアルバイトがある学生にとって、就職活動に使えるのは土日しかありません。ほとんどの企業は会社訪問などを平日に受付けていますから、地方の学生にできることは、せいぜい就活イベントへの参加くらいです。また10月に企業が選考を開始しても、授業がある以上動くに動けません。
一方、半年や1年間の休学が前提なら不利はないでしょう。特に国立・公立の場合は休学してもお金を余計に取られることはありませんから、この方法は十分にアリだと思います。腰を据えて長期のインターンシップに参加できるので、実際に社員たちが働いている様子や環境をしっかり見た上で就職できます。金銭的な負担がない、学業も阻害しない、就職後のミスマッチも防げると、良い事ずくめです。メルカリやソフトバンク、ユニクロといった企業も、すでに長期インターンシップから採用につなげる制度を運用しています。

就活シェアハウス事業とは?

岡田:インターンシップについて注意点はありますか?

佐久間:できるだけ長期のインターンシップに参加することで、「東京に住んでみる」ことが大事です。ワンデーでは意味がありません。東京にいれば、世界中のあらゆるビジネスの日本版に触れるチャンスがあります。また、世の中にはどういう働き方があるのか、どういう仕事があるのかを知ることもできます。こうした情報は、地方ではなかなか手に入りませんね。また東京は国際色も豊かです。コンビニに行けば店員の半分くらいは外国人ですから、グローバルな感覚を味わえるのではないでしょうか。半年も東京に住めば、企業のことだけでなく「自分が東京に向いているかどうか」も実感を通して理解できるので、今後の人生にとっても有意義だと思います。

◆地方の学生支援ノウハウを地方活性化に活かす

岡田:今後のプランや夢について教えてください。

佐久間:現在の事業で蓄積したノウハウを、地方活性化に活かしたいと考えています。私は年に2、3回ほど地方のさまざまなエリアを訪れますが、今の地方都市は、バブル崩壊期の東京に似ていると感じます。電車の中でみんながうつむいているような、そんな印象です。自治体をはじめ「地方創生」に取り組む人や団体もありますが、そういう人たちが思い描いているのは地方に活力があった高度成長期の頃、昭和40年代から50年代のイメージなのですよね。明らかに時代に逆行していますし、これでは若い世代の共感は得られません。
今の学生たちは、IT技術を中心とする時代の最先端を知っています。ですから世界の最前線で戦う東京の会社で実力や実績を身に着け、30代くらいになってから地方に戻り、今の時代に合った地方創生に取り組んでほしいと思います。地方で新しいビジネスを立ち上げてもいいですし、東京の会社から暖簾分けしてもらう形でもいいのではないでしょうか。東京には地方創生を掲げている会社や、地方に支社を出したい会社がたくさんありますから、チャンスは無限です。
当社としては、地方の人材が「東京で育った後に地方に戻る」というモデルを作ることで、地方活性化に貢献したいと考えています。

◆人事担当へのメッセージ

対談を終えて

岡田:最後に読者である企業の人事担当者の皆さんに何かメッセージをいただければと思います。

佐久間:ふたつあります。まずひとつめは、オンラインによる面接や相談会に積極的に取り組んでほしい、ということです。先ほどもお話しした通り、地方の学生は就職活動で平均26万円という負担を背負っています。この負担は少しでも減らさないといけません。幸い、学生の8割はWEBやSkypeによる面接・相談会に慣れています。新宿の就活カフェではWEB面接やSkype面接の様子を見られますから、人事の担当者にはぜひ見に来てほしいですね。
どうしても東京で面接をするなら費用を負担してほしいですし、なんらかの事情で中止・延期する際は早めの連絡もお願いしたいです。実際、面接のために沖縄から前日入りした学生が当日に中止の連絡を受けたというケースがありました。飛行機代が無駄になるだけでなく、台風などの影響で帰りの飛行機が飛ばないと、余計な宿泊費用もかかります。企業の人事担当者はそのことも理解しておいてほしいですね。
もうひとつは、地方の学生向けの選考を早めに進めてほしい、ということです。東京に滞在している間、地方の学生は常にリスクを背負っています。JRや地下鉄など都内の交通機関を使って移動していると、1日あたり往復で1,000円くらいは平気でかかります。それに食費も必要ですから、ただ東京にいるだけで毎日2,000円くらい減っていくわけです。ですから選考や合否の判断を早めてあげてください。東京にわざわざ出てきている学生たちはみな優秀ですから、ぜひ大事に丁寧に扱ってほしいと思います。

岡田: 佐久間さんの熱い想いが伝わりました。企業にとっても非常に有意義なアドバイスだと思います。本日はありがとうございました。以上で終わります。

シェアハウスの様子(1)

シェアハウスの様子(2)

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