『平成時代とは何だったのか!新しい時代のカタチとは?』

2018年が30年間続いた平成最後の年となり、2019年より新しい時代が幕開けします。読者のみなさんにとって、「平成」時代はどのような時代だったのでしょうか?今号の情報誌『Insights』でも独自の視点から「平成」時代を振り返ってみたいと思います。

1989年に昭和天皇が崩御され、平成時代が幕を開けました。同時に世界的にも実に様々な出来事が起こり大転換期にありました。具体的には、中国で天安門事件が起こり、ドイツでベルリンの壁が崩壊しました。ベルリンの壁崩壊を受け、ブッシュ大統領(当時)とゴルバチョフ書記長(当時)によるマルタ会談が行われ、米ソ冷戦の終結が宣言されました。日本国内では、不動産バブルがピークに達し、同年12月の日経平均株価は3万8,957円を記録しました。その2年後、バブルが崩壊し、100兆円規模の不良債権が発生しました。その後日本は「失われた30年?」に突入していきました。このように激動と混迷を極めた時代であったことは明らかでしょう。

雇用・労働の分野でも、派遣法に代表される労働法制の改正、成果主義的人事評価制度の普及、退職金や年金制度の改訂、非正規雇用の拡大と貧困・格差問題の顕在化、グローバル経営における組織人事マネジメント手法の変化、リストラクチュアリングと雇用不安、メンタルヘルス問題、ダイバーシティ、ハラスメント等々同じく激動と混迷を極めた時代でした。

激動と混迷を極めた30年間で私たちの企業社会はどのように変化(変質)してしまったのでしょうか。社会学者の西田亮介さんは、自身の著書の中で、心がせまく、他人の言動を受け入れられない人間が増加しており、こうした状況を「不寛容社会」と論じています。電子メールやSNSなどでのコミュニケーションが中心となり、不用意な文面(少しの誤解)が相互コミュニケーションを毀損する場面が増えていませんか?個人の役割や職務を明確にし過ぎた結果、隣席の同僚が何をしているかわからず、サポート(フォロー)ができない職場環境が増えていませんか?さらに、現代社会学者ジグムント・バウマンは、後期近代以降の社会を「流動(リキッド)化」という社会状況と位置づけて分析しています。自由市場経済が浸透し、市場と個人の関係がゲーム化(市場取引)した結果、関係性の流動化が促進されていきます。信頼や信用を基本とした中長期的な関係よりも投資対効果、機会費用の最少化を意識した短期的関係を指向するようになります。結果としてゲーム(市場取引)の勝者と敗者を産み出し、敗者は疎外された人々として市場メカニズムの外部に置かれることになります。企業やそこで働く人々の行動や習慣も流動(リキッド)化し、縮小する市場において残酷な椅子取りゲームの様相を呈していきます。流動(リキッド)化による不安とは、予期せぬ出来事がいつ起こるかわからない、「予見可能性」が低い世の中を構成していきました。

この「予見可能性」という表現は、「平成」時代を振り返る際の重要キーワードです。企業や組織、労働者にとって、「予見可能性」が減少したことは、自己決定と選択の機会の増加を意味します。このことは、一見望ましいことのように思われますが、自己決定と選択には大きなリスクも伴う点がなかなか理解されず、自己決定と選択を躊躇する企業や組織、労働者が増加した結果、問題や課題の先送りという状況が頻発してしまいました。昭和型企業・組織では、善かれ悪しかれ、社会システムと会社制度が連動していました。当然男女の公平性や社会格差に多くの課題があり、肯定されるべき内容ではないですが、一方でそこにはある意味で「予見可能性」とそれに基づいた「安定」が存在していました。「安定」とは、多くの企業・組織・労働者にとって歓迎すべきものであったし、昭和時代を通じてその達成が共通目標とされていました。相応の学歴から就職先、結婚適齢期と機会、標準家庭、住宅ローン、自家用車購入に至るまで、容易に単純に深く考えることなく、望ましいであろう将来が予見できたのが昭和時代でした。平成時代になり、圧倒的に自由になりました。学歴、就職先、家族形成、その多くを自ら選択できる範囲も拡大しました。しかし、実際に選択できるということと、その選択が従来の選択(昭和時代の選択)と比べて幸せである確率(「予見可能性」)はかなり低くなりました。

「歴史的に見れば、安定した時代の方がまれであった」、「昭和時代でも安定はある一時期のことに過ぎない」と開き直ることも可能ですが、やはり昭和時代に確実に存在したであろう「予見可能性」を手放すコストは大きかったのかもしれません。

では、「平成」時代の次に来る新しい時代の「予見可能性」とは?読者の皆さんはどのような可能性を予見しますか?

岡田 英之

JSHRM 執行役員
Insights編集長 岡田 英之


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