話題の本や特集で紹介した本など、人事マネジメントに関わる編集部員自らが選んだ本の読書感想コーナーです。今回は2018年にAmazon.co.jpのビジネス書のベストセラーとなり、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン主催のビジネス書大賞で準大賞に選ばれた本書を取り上げます。

BOOK DATA

【タイトル】世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」
【著者】山口 周
【出版社】光文社
【発売日】2017年7月19日出版

世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」

 本書が出版された一昨年から流行し始めた「経営にアートを取り入れる」という事を先駆け的に主張した本であり、様々な著名人やマスメディア、そして読書会が題材として取り上げています。内容を一言でいうと、「複雑怪奇なこの世の中で、失敗した言い訳としてサイエンスに傾倒するのではなく、全体を直感的に捉える感性(アート)を活かしビジネスしましょう」と、いうものです。サイエンス傾倒の批判はミンツバーグ(Mintzberg,2004)がマネジャー教育やMBA教育がサイエンスに傾倒しすぎていることに警鐘を鳴らし、ScienceとArt、そしてCraftの3つをバランスよく教えるべきだと主張していつことからも、今に始まった話ではありません。そんな新しい話ではない古いことを主張する本書ですが、なぜ、多くのビジネスパーソンに受け入れられ手に取られているのでしょうか。

 本書では、難しい概念や理論が登場せず、サイエンス傾倒の問題が非常に平易な言葉と論理で説明されています。特に、論理的な情報処理スキルの限界について、時間という制限的な経営資源の問題と差別化要因が陳腐化する問題、サイエンスによる結論が悪用される問題で単純明快に説明しています。さらに、マーケティングの側面から製品ライフサイクルが短命化する中で、顧客が「機能的便益が水準以上で情緒的便益が良いもの」を選ぶという事実を提示して、サイエンスではなく経営の美意識を鍛えた方が賢明と非常に分かりやすく説明されています。加えて、現代がシステムの変化にルールが追い付かない世の中について、エリートが成功するために人として誤った判断をしないために、司法の後出しじゃんけんで断罪されないために美意識が必要不可欠であることを説いています。これらが、非常に平易な文章で分り易く、かつ簡単に説明されています。本書の特徴は、新書ということがありながらも、難しい事柄が非常に分かりやすく解説されていることなのです。

 また、良い経営をするための手段としての「美意識」をなぜ鍛えなければならないかを、たくさんの人が手に取りやすい新書で初めて明示したことも大きいでしょう。美意識を鍛えるべき理由は、本書のキモとなる部分なので多くを述べないこととします。是非、「真(何が正しいのか)・善(よい事とは何か)・美(何が美しいのか)」を客観的で論理的な意思決定でするのではなく、自分の内面にある主観的な意識を元に意思決定することが、これからのリーダーシップに求められるという著者ならではのアートな主張を本書で感じていただきたいです。

文:葛西 達哉(Insights編集部員)


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