労働力人口は減少していきます。既に小売り・飲食業界、コンビニ業界、医療・介護業界等では人材採用難が深刻化しています。今回の特集4では、中小企業を中心に急速に普及しているリファラル採用について考えます。
リファラル採用とは、社員に人材を紹介・推薦してもらう採用手法のことです。社員の個人的な繋がりを活用することで自社の魅力や社風をターゲットとなる人材に効果的に伝え、企業文化とマッチした人材を集めることができる点、その結果として採用した人材の離職率が低い点などが利点として挙げられます。また、外部の採用媒体や紹介会社などを利用するのに比べ採用コストを抑えることができるのも大きなメリットです。

聞き手・文:岡田 英之(Insights編集長)

リファラルリクルーティング株式会社 白潟総合研究所株式会社 代表取締役社長 白潟 敏朗 氏

ゲスト:リファラルリクルーティング株式会社 白潟総合研究所株式会社
代表取締役社長 白潟 敏朗 氏

経営者の家庭に育ち、両親の悩みを肌で感じるうちに、将来の目標を経営コンサルタントと定める。システムエンジニアを経験したのち、1990年よりデロイトトーマツにて経営コンサルタントを経験。IPOコンサルティングなどでキャリアを積み、ISOコンサルティングの領域に革命を起こす。さらに、7800社に入会いただいた定額制研修イノベーションクラブを立ち上げるなど、コンサルティング業界の風雲児として数々のイノベーションを起こす。誰もが取り入れることができる経営手法をまとめた著書は44冊、累計95万部に及ぶ。
2006年、トーマツ・イノベーション株式会社代表取締役。2014年白潟総合研究所株式会社を設立。2017年にリファラルリクルーティング株式会社、2018年に1on1株式会社、2019年ソーシャルリクルーティング株式会社を設立、中小ベンチャー企業に特化した、本質的なコンサルティングを行う。


岡田 英之(編集部会):本日は、リファラルリクルーティング株式会社代表取締役社長の白潟敏朗さんにお越しいただきました。白潟さん、早速ですが自己紹介ということで、専門分野やこれまでのご活動、現在関心を持たれていることなどをお話いただけますでしょうか?

◆リファラルリクルーティングとは?

白潟 敏朗(リファラルリクルーティング株式会社代表取締役社長):私は今54歳で、コンサルタントになって29年たちます。前職での25年間は大企業の経営診断、IPO支援、業務改革、業務改善、ISOのコンサルティングなどに携わっていました。辞める直前にはトーマツイノベーションという子会社で経営者として研修事業を行っていました。その後、独立したかたちです。累計すると、これまで約12600社の中小ベンチャー企業の社長とお会いしてきました。

岡田:コンサルタントのフィールドで長くご活躍されて、実績を積まれて独立されたのですね。次にリファラルリクルーティング株式会社についてご紹介をお願いします。

白潟:親会社である白潟総合研究所株式会社を設立して今5期目です。なぜこの事業を始めたかというと、我々は独立当初、コンサルティング業界ではおそらく初めてエリア集中戦略をとってみたのです。これは他の業界では一般的ですがコンサル業界ではある意味ばかな戦略です。

岡田:いわゆるエリアに特化したマーケティング戦略ですね。

白潟:コンサルの一番の無駄は移動時間です。これがなくなるとコンサルフィーを5分の1にできる。それでエリア集中を試みたのですが、残念ながらうまくいきませんでした。ただ、副次的効果として、今の多くの中小企業の悩みが“人が採れない”につきることがよくわかりました。以前はリクナビ、マイナビさんでもある程度とれていましたが、4年前くらいからとれなくなり、従業員9人の会社が150万円出してゼロ、100人規模の会社が300万円出して応募はあったが採用ゼロという話がざらにありました。

岡田:コスト的に非常に厳しいですね。

白潟:そこで縁故採用コンサルをスタートしました。ちょうどアメリカからリファラルという言葉が入ってきたころだったので、社名もリファラルリクルーティングにして専門特化したという経緯です。

岡田:リファラルリクルーティングを知らない方もいますので、定義をご説明いただけますか?

白潟:意訳すると「社員の紹介による採用」と言う定義になります。我々は、進化型の縁故採用と呼んでいるのですが、縁故とは違って選考はします。媒体と紹介会社の部分が社員に変わる採用手法です。

岡田:なぜ最近はリファラルリクルーティングのニーズが増えているのでしょうか?

白潟:普通は媒体で人を採用します。媒体でとれないと紹介会社を使うのですが、紹介会社は年収の35%のコストがかかるため、従業員100人以下の企業はなかなか手が出せません。ハローワークではとれるわけがない。そうなると中小企業はもうこれ以外に打ち手がないからです。

◆リファラル採用を成功させる3つの条件

リファラル採用の理想と現実

岡田:リファル採用はコスト上のメリットがまずある。それだけでもないと思いますが。

白潟:社長に合う人材が採用できる。これがリファラル採用の究極のメリットです。ただ、これは我々のリファラル採用のやり方をやらない限り無理です。“魅力向上型リファラル採用”と呼んでいるのですが、成功するための3つの条件があります。1番目は、社長と会社を好きな社員だけでリファラル活動をすることです。

岡田:リファラルリクルーターは、社長の個性、ビジネスモデル、風土などいろいろ含めて、とにかく会社を好きでマッチしている人がなるわけですね。

白潟:結果、社長と会社に合いそうな人にしか声をかけないので、一次面接は100%通ります。2番目は「嘘をつかないこと」です。媒体でよくある最高年収例しか出さない手法は、リファラルでは嘘になります。最低~最高の年収例、年齢別年収を数字でリアルに出します。求職者が一番知りたいのはここなのです。これは非常に受けがいいです。

岡田:これ、面白いですね。入社後にばれる課題を開示する。

白潟:ばれてしまうことは先に言っておけということです。リファラル採用の一番の怖さは、友達が入ってきてすぐ辞めると、紹介した社員も辛くなって結局ダブル退職になることです。「お前先に言えよ。上司最低じゃないかよ」となる。実際に失敗している会社さんはこれをやっています。
社長を好きな社員の割合は、当社のお客様層だと1~2割しかいません。そんな大切な社員が辞めたら社長がかわいそうです。社長と大切な社員、社員とその友人の信頼関係を壊さないためにも徹底的に開示します。3番目が「耳の痛い話を聞くこと」です。

岡田:固定賞与がない、有給休暇が使えない、労働時間が長い、教えても伸びない部下は見捨てる、パワハラ上司がいる、朝礼が説教くさい₀たしかに耳の痛い話ですね。

白潟:ある意味、社長と上司に対する苦情です。でも嘘をつかないという前提がある以上、開示する内容に「社長がセクハラ発言する」「朝礼が説教くさい」と書くしかありません。社長に大丈夫ですかと聞くと当然「いや白潟さん、直すから書かないでくれ」となります。
プロジェクトのミーティング上で「みなさん、社長が改善してくれるらしいので書くのをやめましょう」と決めると、本当に社長が翌日から女性と喋らなくなります。黙るのがとりあえず安全ですから。説教くさいと言われた社長は、朝礼で自分が話すのをやめて社員の話を聞くようになりました。

岡田:すぐ行動変容するのですね。理屈上はわかります。でも会社によっては、ここはいくらなんでも開示できないと隠そうとする会社もあると思います。この差は何でしょうか?

白潟:そもそも、我々がこの3条件にYESと言わなかった社長からは、依頼されても仕事を受けません。だから当初は3~5割はロストすることを覚悟していました。しかし、実際には我々のお客様は、ほぼ100%YESでした。答えは簡単で、社長は今、喉から手が出るほど人が欲しいのです。


◆リファラル採用は組織開発、風土改革につながる

岡田:本当に人材難というのが切迫しているのですね。耳が痛いなんて言っていられない。

白潟:人が欲しいという外圧は“ペリー来航”のイメージです。私は前職のころも組織変革をずっとメインテーマにしていましたが、しょせん外部のコンサルが何を言っても会社は変わりません。変わる会社は私の統計では1%です。ところがリファラル採用を始めると100%変わります。

岡田:ある種、組織開発のようですね。

白潟:会社をよくしたいと思っている社員が、社長の目の前で「会社をよくしたいんです。友達に声かけたいんです。でも私は大好きなんですけど、ここが気になります」と言う。これが、完璧に社長が変わるきっかけになります。アンチの話を聞く必要性はないのです。社長がNOを言わないので、周囲もびっくりします。

岡田:なるほど、組織開発や組織改革を行う企業も多いのですが、なぜなかなかうまくいかないかという答えもここにあって、やっぱり社長のキャラクター、ビジネスモデル、風土を含めて会社を愛しているようなベタな人が取り組むことがポイントなのでしょうね。しかし、小さい会社などでは、社長のファン、パートナーになれる社員がそもそもいないというケースがありませんか?

白潟:現実にあります。その場合は、社長自身が幹部候補をリファラル採用する方法があります。

岡田:幹部候補とは社内の人ですか?

白潟:社外の候補者です。基本は会食です。リファラルしたい候補者と月1回ペースで会食します。最初は会社の話を一切しないで相手の話をじっくり聞く。人生の先輩なのでリファラルという前提ではなく、将来どのようなキャリアを目指したいかということを聞きながらアドバイスもしていきます。不思議ですが、月1回ペースでしゃぶしゃぶとかステーキ、極上の中華など普段いけないような高級店で会食すると、だんだん社長のことが好きになってきます。

岡田:結構ベタな方法ですね。

白潟:4回目あたりから雰囲気が変わり、6回目でかなり見えてきます。7回目以降に口説くのですが、3つのコースを提案します。1つはうちの会社で幹部として頑張る。2つ目が支援、独立したいという人であれば出資をするなどですね。3つ目はあなたの会社に仕事を出す、提携するなどです。ここで1を選ぶ人が出てきます。

岡田:リファラルする人材の候補者選び、候補者サーチもしてくださるのでしょうか。

白潟:そこは社長の人脈に頼るしかありませんが、人脈の棚卸のノウハウは提供します。例えば親しい友人、知人をリファラル対象外とみなす人が多いのですが、実はリファラルは友達の友達が一番有効です。親戚もそうです。私も娘の友人をリファラルしていますし、おいっ子、めいっ子でもいいのです。きちんと棚卸をすると、普通は100~150人の名前が出てきます。

◆リファラル採用のリスク、トラブル例

岡田:いろいろなメリットがあるリファラル採用ですが、リスクやトラブル、あるいは逆効果になった事例などがあればご紹介いただけますか。

白潟:最大のリスクは縁故と違い不採用があるということです。だから慎重に進める必要があります。前提として「自分の紹介だから合格」とは絶対言わない。「内定が出ても義理立てして入らなくていい」と採用側に言ってもらうことを徹底します。また、必ず最終面接まで進んでもらいます。

岡田:選考を省略するわけではないけれど、早い段階で落とすことはしないわけですね。

白潟:リファラルで書類選考や一次面接で落とすと、すべてが終わります。また「不採用」「不合格」という言葉はリファラル上では死語です。使ってはいけないのです。社長にはキャリアサポートをしてくださいとお願いしています。

岡田:キャリアサポートとは、応募してきた方のでしょうか?

白潟:採用できない方に対しても「Aさんであればこの方向のキャリアがいいと思うんだよね。本来ならうちがそれを用意すべきだが、残念ながら今の当社の体力では申し訳ないけどできない…」とか、滅多にないのですが直筆の手紙を書いて、本当に申し訳ないというイメージで最後は綺麗に終わってもらいます。そこまですると、社員も会社の誠意を感じてくれます。友達も「お前のところの社長はすごい。こんな縁のない俺にここまでやってくれるなんて」という感じになります。ですから手間はかかります。

岡田:採用しなかった人に対してもキャリアカウンセリングも含めたケアをする。そうすると信用度が増しますし、その人が誰か紹介してくれる可能性もありますね。

白潟:2番目は、社員とリファラル採用した人を同じ職場に配属しないことです。小さい会社で結果的にそうなる場合や社員の肩書のほうが上になる場合は、先に伝えておかないとぎすぎすしてしまう可能性があります。それを開示して来ない場合はしょうがないということを徹底します。

岡田:学生時代の友人と同じ職場になって、肩書が違うと何かしこりが出てくるわけですね。

白潟:3番目は当社の方法ではまずありませんが、リファラル採用で入社した人が辞めるとリファラルを担当した社員のモチベーションが落ちるリスクがあります。4番目は紹介者への報奨金です。30万円以上出すとリファラルのほうが儲かるので昼間からメールやチャットをする社員が出てきてしまう。

岡田:人材流動性の高い業界ではありそうな話です。

白潟:当社は報奨金0円をすすめています。最悪なのが友人に黙っていて入社後ばれるケース。「お金もらったなら半分頂戴」となります。報奨金は人身売買に近い世界になりますし有効性ほぼゼロです。5番目はアンチの幹部が派閥を大きくするために、リファラル採用を行うケースです。我々の場合は社長や会社を愛している人が担当になるので起こりえませんが、これもよく聞く話です。

◆人事担当者へのメッセージ

白潟:当社はサービス対象を中小ベンチャー企業にしぼっています。それでも最近はいろいろなツテで大企業の人事責任者が来られます。エージェントを何十社か使っていてもここ最近は紹介される人材の質が下がっているので、リファラル採用を始めたいというお話です。

岡田:人材紹介にも、登録型、ヘッドハンティング型、サーチ型などいろいろあります。リファラルではない方法はなぜダメなのでしょうか?

白潟:ヘッドハンティング型がうまくいかないのは、社長と合わないからです。私の12600社の経験では1~2年で大体いなくなっています。大きい会社では実力がある方も、ブランド依存型のタイプだと中小では成果が出せないので、社長としても高い年収を払っている以上辞めてくれとなるケースが多いのです。成功率は1%以下だと思います。

岡田:そうなると人材会社というのは、ビジネスモデル的に今後厳しいということですか。

白潟:中小マーケットでは多分もうなくなると思います。エンジニアに一番顕著ですが、SNS内リファラルが現実に起き始めています。広告を見たり、エージェントに登録したりする必要がもうないのです。エージェントに登録するのは、優秀でない人か友達がいない人の2種類になるため質は下がっていきます。

岡田:逆に言えばIT企業などは、職種ごとに細分化して戦略的にリファラル採用をしないと、エンジニアなんかとても採用できなくなるわけでしょうか?

白潟:リファラル採用をしない中小企業は、5年後にはなくなっている可能性が高いと思います。脅しでもなんでもありません。労働人口が1週間に10000人減っている時代です。

岡田:読者には中小企業の人事担当者も多いので、最後にメッセージをお願いします。

白潟:リファラル採用は簡単ではありませんが、しっかり汗をかいて仕組みを作れば、あとは延々と無料で人が採用できますのでぜひ始めてほしいと思います。

岡田:地方のほうが採用難はさらに深刻だと思いますが対応は可能でしょうか?

白潟:基本的に今は一都3県ですが、お客様の紹介で函館や沼津には出向いています。また、おかげさまで、本が好評なので全国から問い合わせをいただいており、地方の状況が深刻なイメージは持っています。
7月には大阪支社を作る予定です。来年以降は、福岡、名古屋と、今後どんどん広げていきますので、またどこかでお会いできればと思っています。

岡田:わかりました。収録は以上で終わります。本日はありがとうございました。

対談終了後に1枚


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