このコラムでは、日本で長く続く伝統やそれを守る人々を取り上げて紹介をしています。
 今号では2019年2月19日(火)に行われたInsightsセミナー、1月23日(水)に行われた「能楽フェスティバル2017-2018「第4回シンポジウム」についてご報告します。

【2月19日開催JSHRM Insights 教養講座シリーズ「伝統文化から学ぶ人材開発」】
流儀を紡ぐ組織―江戸千家」組織にみる際立つ点、強みと弱み
江戸千家第10代家元後嗣 川上博之(かわかみひろゆき)氏

 このシリーズも、第3回を迎えました。第3回目は、日本生産性本部一階セミナールームにて、茶道の一つの流儀「江戸千家」を取り上げました。雨にも関わらず、20数名ほどの方にご参加いただき、和やかな雰囲気のもと、セミナーは進みました。講師の川上氏には、前半で、茶道全般について、後半には、流儀について、お話いただきました。

 まず「茶の湯とは?」に始まり、その成り立ち(利休以前)と話が続きます。
茶の湯は、次の三点に特徴があると言います。

  • 市中山居
  • 茶事(弛と締の時間)
  • 総合芸術空間

 多くの写真を使いながら街中から茶室に入ると言う擬似体験、茶事の意味、そして、総合芸術空間としての茶道のお話に、会場の参加者も次第に引き込まれているようでした。
 途中、実際のお点前を二畳分の茣蓙(ござ)の上で披露していただき、参加者二名の方と、抹茶を飲みながらの会話を入れ、後半に続きます。

 後半では、江戸千家の家系や主要な流儀の家系を見ながら、流儀という組織の特徴を強み弱みをお話しいただきました。最後には、流儀の未来について、ご自身の考えを素直にお話いただき、その誠実さとお人柄が窺えました。

 セミナー終了後行ったアンケート結果にも、参加者の方の「満足度の高さ」が表れています。
 詳しいセミナー報告は、7月発行のInsightsで行う予定です。

プロフィール
川上 博之(かわかみ ひろゆき) 氏
早稲田大学卒業後、武者小路千家官休庵(京都)にて修業。東京に戻ってからは、東京理科大学公開講座をはじめ、全国各地で茶道を伝え広める活動に従事

(参考)

実際の茶道具を使い、お点前をしていただいた

【1月23日開催:「能楽フェスティバル2017-2018「第4回シンポジウム」】

 「能楽フェスティバル」は第4回を迎え、テーマは「2020東京オリンピック・パラリンピックへ向け、能楽の未来を展望する」。場所は、千駄ヶ谷にある国立能楽堂。狂言と半能に続き、能楽の世界を代表する4名の方によるパネルディスカッションが行われました。

(当日の番組)
狂言(和泉流)
「萩大名」 シテ 野村万蔵、アド 野村万之丞、アド 能村晶人
半能(喜多流)
「絵馬」 シテ 香川靖嗣、ワキ 宝生欣哉、ツレ 金子敬一郎、ツレ 内田成信他
パネルディスカッション
パネリスト 觀世清和 [能楽師・シテ方観世流26世宗家]       宝生和英 [能楽師・シテ方宝生流20世宗家]       觀世銕之丞 [能楽師・シテ方観世流・能楽協会理事長] 司会 野村萬斎 [能楽師・狂言方和泉流]

 パネリストには、昨年9月にInsightsセミナーに登壇していただいた宝生和英氏も登場し、能楽界の課題と展望について、率直な意見が交換されました。特に、後継者たちの育成は、企業組織と同様な悩みを持たれたのが印象的です。芸能と会社組織と言うジャンルを超え、世代を超えた課題は同じようです。

 また、「能楽はわかりづらい」と言う印象をどう払拭するか?などの話も出て、解決策として、字幕スーパーをつける、解説をつけるなどが出されました。一方で、分かり易くすることで、能楽本来の良さを無くしはしないか?などの懸念も出ると言うように、苦悩の表れが見え隠れしました。この「分かり易くする」と言うことについて、「分かり易く」することで、早く人を育てる手法として行われますが、「分かり易く」することで、時間をかけてじっくり理解をしていく過程はなくなるわけです。つまり、長い過程の中で深く理解できないと言う結果、人を育てることへの質の低下も否めません。このテーマについて、能楽界がどう克服するか?動向が気になるところです。

シンポジムパンフレット

文:中田 尚子(Insights編集部員)


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