話題の本や特集で紹介した本など、人事マネジメントに関わる編集部員自らが選んだ本の読書感想コーナーです。今回は昨今アカデミックだけでなく、実務界でもプラグマティカルとして注目を集める「高信頼性組織」について事例を元に分かりすく説明した本書を取り上げます。

BOOK DATA

【タイトル】想定外のマネジメント[第3版]-高信頼性組織とは何か-
【著者】カール・E・ワイク,キャスリーン・M・サトクリフ
【監訳】中西 昌
【出版社】文眞堂
【発売日】2017年7月31日出版

想定外のマネジメント[第3版]-高信頼性組織とは何か-

 「信頼性の高い組織」ならば、想定外の事態が起こるまえにそのリスクを取り除くことが出来る、あるいは想定外の事態に直面しても重大な損失を犯さない。これが本書の主張である。

 なぜ、あの組織は失敗が少ないのだろうか。病院や航空会社など、失敗が許されない過酷な状況下で、事故の件数を平均以下に抑制する組織に着目して、高信頼性組織(HRO)と呼び、彼らの内部資源に着目した。その結果、失敗にこだわることや単純化を避けること、オペレーションに敏感になること、レジリエンスを決意すること、そして専門知を重んじることが失敗の少ない組織=高信頼性組織の条件であるとしている。また、それ以上に大事なこととしてセンスメイキング(ストーリー化すること)や持続的な組織化、現在進行形での適応的なマネジメントを内包した「マインドフルな組織化」を提示している。その理論を説明する事例としてNASAや病院、フルキャリア、トヨタなどを取り上げ、非常に分かりやすく説明している。

 この本の面白さは、現場の「改善」による現状からの高効率化より、むしろ現場が出す成果が持続するプロセスに着目していることである。同様に、想定外事態による混乱を抑えるために「想定をあいまいにせず、組織メンバーの認識が一致する明確なものを『限定』して定め、常に想定を更新し続ける」という逆説的な見方も面白い。組織でコンセンサスを取るだけでなく物事の認識そのものを一致させることや、小さな合意を重ねてある物事を変化させ続けることは非常に難しいが、企業経営で(この本が重要とする『高信頼性組織』構築にも)重要である。この本にはそれを実行するための大きな示唆が書いてある。非常に平易な文章で書いてあるので、一度手に取ってみてほしい。

文:葛西 達哉(Insights編集部員)