話題の本や特集で紹介した本など、人事マネジメントに関わる編集部員自らが選んだ本の読書感想コーナーです。今回は最近マーケティングや経営戦略で注目される概念「カスタマーサクセス」について、日本で初めて出版された基礎的な書である本書を取り上げます。

BOOK DATA

【タイトル】カスタマーサクセスとは何か―日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」
【著者】弘子 ラザヴィ
【出版社】英治出版
【発売日】2019年7月3日出版

カスタマーサクセスとは何か―日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」

 世の中が、プロダクトを1回だけ売る、「モノ売り切り型」が中心だった時代から、常にその時その瞬間に最適な状態で顧客が使える状態にある「リテンション型」の時代である。したがって、製品・サービスはいかに買ってもらうかではなく、買ってもらった後に、顧客に「成功」を届けることが大事。というのが著者の主張である。

 もうちょっとだけかみ砕くと、デジタル革命によって、サブスクリプション型のサービスの隆盛からわかるように、「限界費用がゼロ」のビジネス特性が顕著に表れてきていることで、劇的な環境変化が起きている。その中では、一回プロダクトを買ってもらって終り。というのではなくて、環境変化と共にプロダクトが変化する様、売り手側がサポートして、顧客の成功を追求するべき。ということだ。

 この本の面白さは、顧客の成功が重要ということに着目していること以外に、顧客が“effortless”である状態が望ましいと主張していることだ。顧客に努力させることで顧客が離反すると主張している本は、マーケティングでは余り見られない議論で、どちらかというとテクノロジー・マネジメントの中で「過剰品質」が良くないという文脈では多少出てくる。この本の知見を借りると、顧客満足度が高い・低いという軸の他に、顧客努力度が高い・低いという軸(論点)があって、顧客努力度が高すぎると、顧客が離反するという視点を経営者や持つべきという事であろう。このような昨今の企業経営で重要な大きな示唆が本書では随所に「さりげなく」書かれている。多少の専門用語が頻出することと、どうやってカスタマーサクセスを届けるといった“How”の記載があまりないということがあるが、一度手に取り読んでみてほしい。

文:葛西 達哉(Insights編集部員)