違法で常軌を逸した労働環境を設定し、労働者のやりがいを巧みに搾取するブラック企業。ここ10年でさらに増殖し、健全な労使関係とは程遠い不埒な搾取を繰り返しています。そんなブラック企業から自らの身を守るために採る手段のひとつが退職(離職)です。組織と個人の関係は、本来対等であり、退職という労働者の権利は法的にも担保されています。しかし、現実は退職という権利行使を巡って労使関係で多くのトラブルが発生しています。特集3では、「退職代行」に関し、法曹専門家の視点から弁護士の小澤亜季子さんにお話を伺います。

聞き手・文:岡田 英之(Insights編集長)

センチュリー法律事務所 弁護士 小澤 亜季子 氏

ゲスト:センチュリー法律事務所 弁護士 小澤 亜季子 氏
弁護士、社会保険労務士。1987年生まれ。2011年3月、早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年、弁護士登録。2018年、社会保険労務士登録。労働環境を良くするため、企業側・労働者側の双方の弁護に従事。「趣味は仕事」というほどのワーカホリックだったが、家族の死や妊娠・出産・育児などを通して、「働く」ということや「会社」に対する考え方が大きく変化。2018年8月、退職代行サービスを開始。その取り組みは「クローズアップ現代+」(NHK)など各種メディアで紹介されている。共著に『退職のプロが教えます! 会社のきれいなやめ方』(自由国民社)、『遺産分割実務マニュアル第3版』、『証拠収集実務マニュアル第3版』『社長の“悩み”を解決!家族経営の法律・税金 Q&A』(以上、ぎょうせい)、『ガイドブック民事保全の実務』(創耕舎)がある。

岡田 英之(編集部会): 本日は、弁護士の小澤亜季子さんにお越しいただきました。では、まずご専門分野や現在ご関心を持たれている分野を含めて簡単に自己紹介からお願いいたします。

◆労働法を知らない経営者と労働者

小澤 亜季子(センチュリー法律事務所):私は弁護士になって丸7年です。事務所の主力業務としては事業再生、倒産、M&A、企業様の顧問をしており、どちらかと言えばコーポレート寄りの事務所です。再生・倒産となると人員の問題、いわゆるリストラクチャリングが不可避的に発生しますし、顧問の会社様には労務の問題がつきものですので、労務もかなり多く取り扱っています。
事務所の仕事としては労使の「使」の側の仕事、退職代行の方は「労」の側の仕事で、違和感があるかなと思いますが、退職代行というのは意義のあるサービスだと思い、利益相反の出ないようにさせていただいています。
特に今は労働法の教育に興味があります。労働法違反が世の中に常態化している一番の原因は、労働法教育の欠如なのではないかと感じています。日本人は働かないと生きていけない人がほとんどだと思いますが、学校で労働法のことは勉強しない。なので、辞めたいと思ったら辞められるとか、アルバイトでも残業代がもらえるとか、そういう基本的なことも知らない。それは労働者側も使用者側もわかっていないようです。
この本の出版も、労働法の知識を一般の方に知ってもらいたいという試みの一つで、若い人たちにも労働法の知識を少しでも身につけて欲しいというのが希望です。

岡田:一般の方が労働法とか労働基準法とか労働組合法とか、なかなか難しいですよね。

小澤:まず、触れる機会がない、勉強する機会がない分野なのかなと思います。

岡田:これはまず初等教育、中等教育の段階からリテラシーとして身につけた方が良いということですか。

小澤:たとえば、中学生・高校生で初めてのアルバイトをはじめる頃に、学校ではなくてもYouTubeなど何らかの方法でリテラシーとして身につけた方が、絶対にその後の人生が豊かになると思います。

そもそも労働法を知らない経営者が意外に多い

岡田:労働法を知らない経営者、そこに雇われている労働者でブラック企業化する。NPO法人POSSEの今野代表は、労働法に対するリテラシーがあまりにも低く、教育する場がないので、そういうことを全く知らずに社会に出てしまうことが大きな問題だと言っています。

小澤:全く同感ですね。

岡田:有難うございます。ご著書にもありますが、小澤先生の個人的なお話、弁護士になったきっかけなどを自己紹介いただけますか。

小澤:弁護士を志したきっかけですが、父は中小企業の社長で、私が小学生くらいの時に勤めていた会社が倒産し、そこから会社を興したのですが、倒産という状況に直面して、中小企業の法務や社長さんを支えたいという思いで弁護士を目指しました。弁護士になってからも再生の分野に興味があったので、今の事務所に就職し、再生・倒産と、労働という2つの分野を主に取り扱って来ています。事業承継の問題にも力を入れており、先日、所属事務所の弁護士で『社長の“悩み”を解決!家族経営の法律・税金 Q&A』を出版しました。

岡田:いま特に地方で中小企業の事業承継の問題など深刻化して、大きな課題ですね。
こちらのご著書「退職代行」について、出版の経緯などをご紹介いただけますか。会社を辞めるということ自体を代行してもらえるということですね。

小澤:出版の経緯としては、出版社の方から私のHPを見て出版をしてみないかとのお声がけいただいた。本のインデックスですが、まず、退職代行というサービスの概要をご紹介するとともに、どんな方が利用されているかのご紹介をしています。
次に、私なりに考えた退職代行というサービスがフィーチャーされている背景みたいなものをご紹介し、このサービスへの世の中の批判が相当程度あるのですが、ご利用者が利用される背景もご説明をし、実際に私が担当した案件なども紹介しています。
最後に、退職代行とは直接関係ないのですが、私が考える働き方とか、会社というものに対する考え方を書かせていただいています。

◆退職代行サービスが求められる社会的背景

退職代行ビジネスが発生する社会的背景とは

岡田:まず、退職代行というサービスがなぜ必要とされているのか、その社会的背景についてどうお考えですか?私自身は、不健全な感じもするのですが…。

小澤:それはごく自然な感じ方と思います。私自身も初めてこういうサービスをみてびっくりしました。弁護士として、退職というのは労働者側が申し出れば辞められるという法的知識があったので、そこに誰かの手を借りなければいけないというのがピンとこなかったんですね。
でも、見ていくと、今かなり人手不足ですから、辞めたいといっても強烈な引き留めにあって辞めさせてもらえないとか、激務で心身の調子を壊していて、自分では退職の交渉をできる状況ではないとか…。簡単に内容証明を出せばいいと思いますが、出せば終わるというものでなく、その後の何回かの連絡すら負担だということもあって、こういうニーズもあるんだなと実感しました。

岡田:人手不足という背景があるにせよ、労働者が辞めたいと意思表示すれば、辞められそうなものですが、単なる人手不足だけではない別の理由があるのではないのでしょうか。

小澤:本当に優秀人材だから辞めさせられないというのであれば、辞めたいと言ったときに報酬を上げるとかそういう交渉をするのが普通かなと思います。が、退職代行を使われる会社の社長や上司は、辞めたいと言っている人を恫喝していて、完全に逆効果ですね。従業員を完全にコントロール可能なものと思い、辞めるということに対し裏切ったという感じがあってお怒りになる。

岡田:辞めるという労働者に対し、裏切られた感じを持つ。裏切られたというのはどういう感覚なのでしょうか?

小澤:法律家の目からみれば、そこにあるのはただの契約関係。ですが、関係性として、雇ってあげている人と雇われている者で、お金も仕事もあげている。社畜という言葉がありますが、社員をコントロール可能な家畜のように思っている。それなのに、その家畜が弁護士を雇って辞めると言ったときに烈火の如く怒る。飼い犬に手を噛まれたような感じです。
単なる労働契約しかないと思うのであれば、殴ったり恫喝したりといった行為はできないと思うんですよね。
それができてしまうということは、やはり家畜のように思っているのではないでしょうか?

岡田:次に、退職代行を依頼する人の事例が出てきますが、これを一つご紹介いただけないでしょうか

小澤:一番典型的なのは慰留ハラスメント。「裏切るのか」と言われたり、暴力を振るわれたりとかで、自分ではもう太刀打ちできないと思って弁護士を雇う。そういうケースがある程度あります。

岡田:そういうのは上司なのですかね。

小澤:会社の規模によりますね。上司である場合もあり、社長である場合もある。他にも辞めたい人がいて、いま順番待ちになっている。1年待ってもらっている人もいるから順番を待ってくれとか、退職届を受け取ってそのまま放置されたり、のらりくらりと退職の申し出を真摯に受け止めてもらえないというパターンも多いです。

岡田:会社を辞めたい理由はいろいろあると思いますが、退職代行に至るケースの退職理由ってどんなのがあるんですか?

小澤:本当に様々ですが、やはり過重労働、上司のパワハラ。かなり追い詰められていて、会社や上司との信頼関係が限りなくゼロになっている方が多いですね。

岡田:2000年代前半から過労死が増え、会社の中でもメンタル疾患になる人が増加しました。自分が辞めたいと思うシチュエーションに追い込まれたとき、なぜ声を上げないのか、逃げないのか。そういったことすら思考停止になるというのはどういう背景でしょうか。

小澤:逃げれば無断欠勤で解雇になるのではないかと恐れ、弁護士に退職代行を依頼する。こういう人も一定程度いるが、いきなり消えることが出来ないまじめな人が退職代行を使っているじゃないかと思います。メンタルを抱える人が、なぜ声を上げないかですが、朝会社に行こうとすると吐き気がして電車に乗れない、夜も眠れない、会社のことを考えると気持ちが落ち込んで死にたくなる…そういう中で冷静な判断をするだけの余力が無いのでないかと思います。会社の行っていることの適法性とか、対処をするための調べをする力が残っていないのではないかと考えます。

岡田:割と深刻ですね。

小澤:私のお客様は深刻な方が多いです。

◆退職代行サービスと人事の役割

岡田:こういう退職代行を頼む社員がいて、訴えられる経営者・上司がいます。そこには人事担当の人もいると思いますが、何をやっているのでしょうか?あまり登場しないのですか?

小澤:登場しないですね。最後の一般的な退職手続きを淡々と進めるだけ。もう関わりたくないという労働者が多いので人事担当とのイグジットインタビューなど絶対いやだと。正直に申し上げると、退職代行の申し出が入った後から人事の方ができることは無いと思います。

岡田:こうしたあまり健全でない状況に対して、人事担当者にも責任の一端があると思いますが、いかがですか。

小澤:辞めたいと思いだす、弁護士を雇う、それらの兆候が出たら気を付けましょうといった教育・注意喚起をマネジメントの方々にするとか、それぐらいですかね。

岡田:行動にこういう変化が現れたら辞職をするとみて事前に面談するとか。

小澤:直属の上司がパワハラ上司の場合は、上司と面談しても意味がないので、人事の方が面談するようなシステムを整えるとか、心の相談ホットラインみたいな外部通報窓口をつくるとか、そういう間接的なことですかね。

岡田:安倍政権は歴代最長の在任期間となり、雇用環境の改善が進んでいるポジティブな状況の中でこういうネガティブな話というのは、ものすごくアンビバレントな感じがしますが…。

小澤:雇用環境の改善、失業率の改善というのと退職代行サービスの勃興というのは必ずしも矛盾していないと思います。根本にあるのは少子高齢化による人手不足。人手不足なので失業率も改善しているし、人手不足なので引き留めも強烈になっていて、その先に退職代行があるということ。

岡田:人手不足が解消する状況になれば、こういった問題は自然と解決するのでしょうか? また、退職代行を頼む人の業種というのはどうなのでしょうか?全業種に広まっているのでしょうか?

小澤:人手不足が解消するというのもあまり現実的ではないでしょう。業種で言うと介護福祉業界、飲食業界が多いです。しかし金融機関の方もいらっしゃいます。今の会社を辞めても働く場があるので、辞めることを躊躇されないということです。なので、わざわざブラック上司とか残業代未払いとかに耐える必要がない。

岡田:そういう会社は、SNSなどに書き込まれて、採用できなくなってきますね。これどうしたら良いんですかね。

小澤:必要な人材が辞めようとしているときに、一定の範囲で辞めないでというのは健全な行為だと思いますが、ハラスメントに当たるような行為をすることは違法だし、しかも逆効果なのでやらない方が良い。企業にできることは、引き留める以前に雇用環境を改善して、辞めたいと思わせない環境づくりにつきると思います。

岡田:やはり労働時間とか休日・休暇とか、人間関係とか、職場環境が良くないところが多いですか?

小澤:それもですが、違法な行為を強要したりとか、そういう職場も多いので。コンプライアンス教育みたいなものを最低限、現場のマネージャーに徹底して、まず違法な行為をしないというところからスタートしないといけないんじゃないかなと。

岡田:違法な行為とは具体的に?休ませないとか?

小澤:休ませないとか、残業代払わないとかでなく、人員のごまかしなどの業法違反。おかしいのではないかと言うと恫喝され、労働者側も会社に対する信頼の心がマイナスになる。この会社に対して誠意を尽くす必要がないという気持ちになってさっさと辞めようと思う。

岡田:コンビニや居酒屋などで、儲けるためには多少の法的問題には目をつぶってやってしまうという感覚なのでしょうか?

小澤:そういう会社は多いような気がします。でもそういう感覚はどうでしょうか?コンプライアンス違反があると大企業でも潰れます。コンプライアンス違反というのを軽視しすぎではないでしょうか。

岡田:知っていて違法行為をする人はさておき、知らないでという場合は教育をしっかりしていかなきゃいけないということですね。

◆幸せになる生き方、働き方とは

岡田:これからの働き方、組織とのかかわり方、自分自身のキャリアなど、第5章の幸せになる生き方についてお話いただいてもよろしいですか。

小澤:この退職代行という仕事を始めたきっかけの一つでもあるのが、弟が新卒で入社して半年くらいで突然死んでしまったこと。身近で若い人の死に初めて触れて、人生の意味とか有限性について考えるようになった。その中で、仕事というのは人生の一部に過ぎないというのが私の結論です。
それまでは私は仕事が大好きで、24時間仕事に捧げても苦にならない方だった。そのころ退職代行というものを見てもまったく理解できなかったと思う。やはりいろいろな価値観の方がいて、仕事以外に人生の意義を見出す方もいて、それを否定してはいけない。人生の目的は何かというとやはり幸せになることで、そうであれば仕事の選び方というのも、自分にとって何が幸せかということを考えて選ぶ。そういうことを書いたのが第5章です。

岡田:169ページに、幸せになれる働き方ということで、昭和的な働き方を変えるべきですと書かれている。屈強な男性従業員が家庭のことは専業主婦にまかせてモーレツに働くというのが昭和的な働き方。これを変えなくてはいけない。こういう人は小澤さんの周りにいるのですか?

小澤:弁護士は割とワーカホリックな人間が多いのですが、弁護士は労働者ではないし、その人は好きでやっているのでいいのではないか。彼はそれで幸せですが、でもそれを全員に強要するというのはもう無理ではないでしょうか。実際、私も2歳の娘がいて、今はそういう働き方を強要されることは受け入れられないです。

岡田:昭和的な働き方、24時間、モーレツという働き方を強要しなければいいのですが、自分の価値観や考え方をなぜ押し付けるのでしょうか。

小澤:特に中小企業の社長さんは、その会社が彼・彼女の人生のすべてを注ぎ込んだもので、社員にプライベートを優先されると自分の大切なものを否定されたような気持ちになるのではないでしょうか。仕事とプライベートのどちらが大切かを決められるものではないので、相互に認めていく、それがダイバーシティというもの。

岡田:経営者はマインドチェンジしなければならないのですが、会社を自分の家、社員を子どものように思う。子供を叱る様に「なぜ辞めるか」と恫喝してしまう。そうしたマインドをどうしたら変えられるでしょうか。

小澤:ひとつはマインドチェンジしないと人を雇用することができないという現実を知ること。24時間会社のために人生を捧げてくれる人だけを雇える時代ならいいのですが、高齢者も外国人も主婦も雇わないといけないので、自分の主義や心情は少しおいて、そういう人たちも認めないと会社として経営していけないですよというのを実感していただく。
あとは私自身のようにプライベートのことでインパクトのあることが無い限り、心の底から多様な価値観を認めることの重要性を腹落ちするのはなかなか難しいと思います。

岡田:ある種、会社がつぶれる寸前まで行けばよいということ…、本当に雇えなくなって…。

小澤:あんまり会社が潰れれば良いとは思わないですが、世の中にはその存続が社会のためになるか?という会社もあるので、世の中全体として人手が足りないのであれば、ブラック企業がつぶれて勤める方が放出された方が社会的に良いのではないかというのは、正直思うところではある。
ただ、やはり倒産というのは荒療治で、そこで勤める方とか、ご家族などの人生に大きな影響を及ぼすので、倒産ではなくて、自力再生とかM&A、事業承継とかでソフトランディングして欲しいんですけれども。

岡田:「企業送り人」という職業の人がいて、先日インタビューしたのですが、残念ながらゾンビ化して潰した方が良い会社もある。そんな話をちょっと思い出しました。

小澤:再生を行う事務所なので、弁護士が見極めをした結果、倒産の決断をさせる仕事もやる。とてもシビアな仕事だ。なお、夜逃げは従業員にとってもっとも迷惑なので、絶対避けなければいけない。

◆非合法的な退職代行サービス業者の発生

岡田:弁護士資格がない人(非弁の人)がこのサービスをやることは違法でしょうか?

小澤:たとえば会社人事の人が退職代行サービスをすることは違法だと思います。法律上、交渉をすることは弁護士しかできません。単に退職手続きを教えてあげるというのと、会社に対して交渉するというのは全く違う仕事です。実際に非弁業者に頼んで失敗したというご相談も何件か受けているので…。会社から損害賠償請求されたらどうするかとか、残業代の請求とか、弁護資格のない人や人事的な知識すらない人がやるのは、危険だし利用者にとって害があると思います。

岡田:そうした業者のトラブルはありますか?

小澤:実際にご相談をお受けしています。例えば、即日退職OKとHPに書いてあったので業者に申し込んだが、会社が即日退職に同意してくれなくて辞められない。一方で翌日から転職先の会社で働き始めたが、どうしたのと聞かれて何とも答えられない。業者に返金を申し出たが、即日退職の約束はしていないと開き直られてお金も帰ってこない…。

岡田:二重就労のようになってしまった…。ちなみに社労士の方が行うのもダメなのでしょうか。

小澤:特定社労士の方が斡旋の手続きを噛ませてやれば違法にならないかもしれない。退職代行はかなり新しいサービスなので、裁判例などで弁護士法上の線引きは明らかになっていないんです。

岡田:「退職代行」というご著書のなかで、人事の人はこの話にあまり出てこないようですが、こういう場面に遭遇した場合の人事担当者へのメッセージを。

小澤:退職代行の弁護士が介入した後は、いたずらに引き留める行為を上司などがしないようにして、淡々と手続きをすることです。もし可能であれば、なぜ辞めるに至ったか、なぜ代行を使ったかをできる限り聞くくらいしかないと思います。

岡田:第二、第三の被害者を出さないようにするためには…

小澤:実は同じ会社で退職者が続出するケースがあります。一人不自然な経緯で辞めた人がいれば、現場の人にヒアリング、インタビューをしてすぐに調べる。そして第二・第三の退職者を出さない様にするのが人事の役割じゃないかと思います。

岡田:会社として、組織として何か大きな問題をかかえているかもしれません。人事の人も事実を受け止めて会社の中を改革していくというのが本来の役割かもしれませんね。

小澤:連続で起きるというのは、何か会社の中に問題があるのだと思います。ただ社長自身に問題がある場合だと逆らうのは難しいですね。ある程度の規模の会社なら、外部窓口など、社長から独立した機関などの制度設計をするなどはひとつ考えられますね。

岡田:今後のご予定について伺いたいのですが。

小澤:退職代行に関してですと、会社の辞め方に関するノウハウ本を年度内くらいに出す予定です(『退職のプロが教えます! 会社のきれいなやめ方』(自由国民社、2020年3月27日発売))。
労働法の教育という点で、労働法の知識をできるだけ多くの人に持ってもらいたいので、出版の企画を進めています。新書でなく書式なども載っているものです。
労働分野で労使の対立を鮮明にするということには強い違和感をおぼえていて…、目指すところは労使ともに一緒で、適法に働く人々は一人一人幸せに、また利益も出す。目指すところはそこなので、労使双方の立場の弁護士との共著です。労働者の側からすると辞め方、使用者側からは辞めたいと言われたら引き留める手はないことに気づいてもらう、労使双方に正確な労働法の知識を身に着けていただきたいということです。

岡田:他にセミナーなどはやられているんですか。

小澤:顧問の会社様でハラスメントの教育などはやっています。働き方改革の勉強会の中で、退職代行に関しこういった事例もあるということで紹介をすることはあります。

岡田:あとはよろしいですか。

小澤:今回、この本で一番言いたかったのは、死んでしまったり、健康を失うぐらいなら会社をお辞めになったらいかがですか、その仕事は本当に命や健康より大事ですかということですね。

岡田:「退職代行」っていうちょっとセンセーショナルなタイトルになっていますが、働き方を個人個人見つめ直して下さいよ、あなたは幸せな働き方をしていますかという問いかけですね。
では、以上で収録を終わります。本日はどうも有難うございました。

対談を終えて




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