講師:アジア・ひと・しくみ研究所 代表 新井 健一 氏
1972年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、大手重機械メーカー、外資系コンサルティング会社、同ビジネススクール責任者、医療・IT系ベンチャー企業役員を経て独立。大企業向けの経営人事コンサルティングから起業支援まで幅広い経験を活かしたコンサルティング・セミナーを全国で展開。

 2020年1月に開催されたJSHRM特別セミナーは、株式会社アジア・ひと・しくみ研究所の新井健一さんにお越し頂きました。テーマは、『働かない技術』。これまでの働き方を根本的に見直し、これからの時代のスタンダードな働き方を検討しようという内容でした。

 巷では、ここ数年働き方改革や生産性の議論が喧しいです。しかし、一部の先進企業や志の高い経営者がいる中小企業を除き、多くの職場の実態は旧態依然としたままなのではないでしょうか。また、働き方改革=残業時間の削減と曲解し、強引でムリな手法で残業時間のみを減らそうとする困った企業も増えているようです。業務実態とは無関係に定時に退社することのみを強要する時短ハラスメントという言葉も流行し、パワハラの類型として問題となっています。経営層の意識改革、組織体制の見直し、業務プロセス改善という重要かつ本質的な側面には踏み込まず、表面的な対応でお茶を濁そうとする点は、日本型企業の典型と言えるのかもしれません。日本型企業には、過去の成功体験に固執し、既に普及している価値観や考え方のみを是とする傾向があります。生産性の議論にしても、信憑性の怪しい統計データに右往左往し、生産性算出式の分母に当たる労働者数を強引かつ不当な手法で削減しようとする企業も散見されます。真の働き方改革、生産性の議論はこれから?なのかも知れません。残業手当削減が原因でお小遣いも削減された中年平社員、ガッツリ働いて成果を出したいのに定時で強制退社させられた若手社員、意味不明な評価指標で低生産性を指摘され、退職に追い込まれた高齢社員…今宵も昭和型サラリーマンの聖地に集い、ノスタルジーを酒の肴に不満をぶつけ合うのが関の山。これでは明るい未来は見出せません。

 今回のセミナーで登壇者の新井健一さんは、最新著「働かない技術」を引用し、

  1. 生産性の低い会議に、自社社長の“ご接待”、「売上のため」に部下と残業…こんなことをしている人材はもう生き残れない。
  2. VUCAと働き方改革の時代。古い価値観からなかなか切り替えられないミドル世代は、残業できない時代をどう生きればよいのか?と指摘しています。

つまり、社内事情を優先する「ガラパゴス人材」では生き残れないということです。「ガラパゴス人材」とは、会社を第一に考えて、社内事情に精通し、その会社でしか通用しない知識やスキル、人脈を頼りに愛社精神をもって組織に忠誠を尽くせば、いつかは報われると考えている人材です。昭和型雇用社会においては、こうした人材が企業における優秀な人材であったことも事実です。令和時代になった現在でも「ガラパゴス人材」が生存している実態を憂いつつ、これからの日本人に求められるハイブリッドな働き方を個人が主体的にデザインしていきましょう。

 令和時代は、「何をやっているかわからない人材が強い!」人工知能、ブロックチェーンなど新しいテクノロジーが出てくると、テクノロジーを熟知し、ビジネスも熟知する人材がそれぞれの垣根(専門領域)を繋ぐ必要性(場面)も高まってきます。垣根(専門領域)をつなぐ、越境人材を「エバンジェリスト」といいます。謂わば伝道師です。自ら複数の顔を使い分け、時にはエバンジェリストとして業界や職種の垣根をつなぐ働き方が令和時代のスタンダードなのかもしれません。




岡田 英之

JSHRM 執行役員
Insights編集長 岡田 英之