本年度年次大会は 2019年10月26日(土)12時30分より、昨年度と同様の東京ユビキタス協創広場(内田洋行新川本社)にて開催されました。テーマは「課題解決遊園地へようこそ~成長し続ける組織と人事の役割~」で、成長ステージにおいて人事が経営に果たす役割を考えるというものでした。

企業組織が成長する過程の人事を考えると、最初は人事だけの専属ポジションがあることは稀で、社長がみずから人事をみたり、他のバックオフィス機能と兼務するというのが一般的です。従い、人事制度は未整備で、法対応にも漏れが生じがちです。組織を構成する人数が50人、100人と増えていくと、こうした「ひずみ」が表出化してきますが、そこで人事を担う者はどのような対応をするか、どういう課題意識を持つべきか、というのがテーマでした。当日は四部構成で実施されました。
第一部は、株式会社メルカリ執行役員CHRO 木下 達夫 氏による基調講演でスタートしました。売上高の成長スピード以上に組織人数が累乗で増えたことによる人事としての対応を具体的にお話いただきました。その内容は講師の海外や外資系企業経験、会社・社員の若さ、高いダイバーシティという環境も手伝って、「無制限昇給」「株の報酬制度」「ピアボーナス」など、歴史ある日本の大企業とは異なった大変に興味深いものでした。
参加者からの質問に対して、講師は非常にフランクに、オープンに回答をいただき、活発なやりとりが繰り広げられました。(インサイト編集責任者の岡田執行役員によるメルカリ事例へのコメントは後掲します。)
第二部では、基調講演を受け、学習院大学名誉教授、学習院さくらアカデミー長の今野 浩一郎 氏をコーディネーターに、企業の成長期における具体的課題をパネルディスカッションしました。今回とり上げた領域は「採用」(黛/MaYuZuMi代表 黛 武志 氏)、「人材開発」(トリプル・ウィン・パートナーズ代表 目黒 勝道 氏)、「労務」(丸紅新電力株式会社 人事課長 長谷川 宏二 氏)の3つで、3名のパネリストが用意した簡略なチェックリストをもとに、参加者が自組織についてチェックし、その結果をスマホから入力し集計するという新しい試みにトライしました。
チェックリストに記載された取りくむべき課題は、その組織の歴史や人員規模等々により変わってくるなど、多くの意見が参加者からも出されました。提示された意見は、このチェックリストのブラッシュアップに結び付けていこうというまとめとなりました。
(集計後のチェックリストを末尾に掲載します。)
第三部は会場を変え、先ほどの3つのテーマ毎に分かれ、当協会執行役員がファシリテータとなり参加者との白熱したグループセッションを展開しました。参加者からの積極的な発言が多く、各テーブルで実践的な実務課題や解決策について意見を交わし、それを一般化させるという深い議論となりました。
全体のまとめの後、懇親会へ移行しました。多くの方々が懇親会に出席され、アルコールと軽食にて更なる意見交換とネットワーキングの楽しい時間帯となりました。
文:葛西 達哉(Insights編集部員)

成長フェーズ企業の人事課題
2019年JSHRMカンファレンスは、株式会社メルカリ執行役員CHROの木下達夫さんに基調講演頂きました。多くのみなさんが利用するメルカリ。代表的な成長企業として、どのような人事戦略を掲げ、実践しているのでしょうか?
まず、メルカリの企業ミッションですが、『新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る』とのことです。最近流行のイノベーティブ人材、価値創造人材を多く輩出するという理解をしました。う~ん。ありがちと言えばありがちですが、実際に事業として成功しているメルカリが掲げると説得力があります。
ところで、イノベーティブ人材?価値創造人材?って…わかったようでよくわからないキーワードですね。人事の世界にはこうした煙に巻く?ようなフワッとしたキーワードが頻繁に登場します。大切なことは、こうしたキーワードを具体的な人事施策に落とし込んで浸透させていくことです。
メルカリの場合もバリューだとかカルチャーと称して言語化していますが、正直フワッと感は完全に払拭できません。う~ん。でもそれで良いのかもしれません。過度に言語化し、ロジックを追求し過ぎてしまうと社員個人の解釈の余地を狭めてしまいます。それぞれの部署や職種、ポジションに応じて自由に解釈できるという要素が逆に組織の強さを涵養するのかもしれません。
木下さんのお話の中で特に興味深かったのは、今後のHRや組織の方向性に関し、『CX+EX』というコンセプトを掲げていることです。提供するサービス、つまりCX(Customer Experience)を向上させ、戦略的に競争優位なポジションを確保し続けるには、高次元のEX(Employee Experience)を実現することが必要であるという点です。社員も顧客(ユーザー)のひとりであることを考えると、顧客(ユーザー)目線と社員目線が混然一体となる組織作りが必要のようです。
時には社員の顏、時には顧客(ユーザー)の顔をする○○さんを上手にマネジメントし、成長を支援することが人事のミッションかなと感じました。一方でこうした顔の社員の気持ち(キモチ)は移ろいやすいのも事実かと思います。飽きさせないような工夫が人事施策にも求められますね。
そうなると…メルカリの人事として機能する人材はどんなスペックなのだろうか…ツラツラ考えてしまいました。答えは、『鈴木おさむ』のような演出やプロデュースができる人事でしょう。そんなスキルを私も獲得すべく今日も上野の鈴本演芸場へ(笑)
聞き手・文:岡田 英之(Insights編集長)
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