中島 豊
JSHRM会長 中島 豊

 Vocation(職業)という英語の語源はラテン語のvocatio(召命)、つまり「神さまからの召し出し」という事をご存じの方も多いと思います。皆さんは、どのような切掛けで、人材マネジメントという領域に縁を結ぶことになったのでしょうか?

 私自身は、30年以上前に学校を卒業して職業人生を歩みだそうとした時に、今のような仕事をするなどとは些かも考えていませんでした。それが、日本型雇用制度の下で、大学卒業後最初に入社した大手企業の人事部長が「今年は、人事部門を希望していない新卒を配属しよう」と思い立ったことで、自分の人材マネジメントのjourney(旅)が始まりました。

 誰にとっても、職業人生の旅は、山あり谷ありです。途中に様々な困難を何度も経験すると、その先に美しくて楽しい見晴しが拓けてきます。その困難を乗り越える為には、自分を強くしてくれるスキルやツール(道具)、そして何よりもDiversity(多様性)に富んだ旅の仲間が必要です。

 私が人材マネジメントの仕事に携わってきた期間は、日本の企業や経済が大きく、激しく変化した時です。Japan as No. 1と言われた黄金期を支えた日本型人事制度は、バブル経済の崩壊と共に修正を余儀なくされました。この変化の中何度も助けてもらったのは旅の仲間、特に人材マネジメントのプラクティス(実践)と研究の分野で、他生の縁を頂いた社外の方々でした。

 今、コロナ後の新しい社会の萌芽が新しい人事の在り方を求めています。これまでの経験や知識が通用しないかもしれない人材マネジメントの新しい冒険が始まっています。日本人材マネジメント協会は、年齢や経験の多寡にかかわらず、これから冒険に歩み出そうとしている実務家、コンサルタント、弁護士、社労士などの専門家といった人々が、様々な事情を抱えて、たまたま集まっている「冒険者ギルド」に例えることができます。

 当協会は、共同体です。ここでは人材マネジメントに対する共通した熱意を持った人々が、専門性というスキルやツールを獲得し、高め、そして仲間を見つけることのできる「居心地のよい場」を目指しています。立場は違っても。同じ様な状況に直面する人々と交流し、議論をしながら大勢と関わり合うことで、実践の暗黙知とアカデミックの形式知を結び付けていきます。新たな人材マネジメントの強固な知識体系を創って行くことが日本人材マネジメント協会のPurpose(存在意義)です。

JSHRM会長 中島 豊

理事対談 中島会長×倉重理事