多くの皆さんが感じる職場ギスギス感。ギスギスした雰囲気が漂っている所謂「不機嫌な職場」は、業界、業種を超え数多く散見されます。例えば、常に近寄りがたいイライラした雰囲気をまき散らしている役員や上司、自然と聞こえてきてしまう管理職の文句や舌打ちなど、ギスギス感を感じてしまう職場環境はごく身近に存在します。

職場のギスギス感について考えてみると、非難(誰かのことを一方的に「あなたが悪い」と言ったり、思ったりすること)、侮辱(相手を見下し(不要なマウントポジション)を含んだ否定的な言葉や感情を吐露すること)、防御(誰しも非難をされれば防御したくなります。しかし、言い訳を重ねることで人間関係はより悪化し、また新たな「非難」を発生させることがあります)、逃避(望ましくない状況や、周囲からの助言に真摯に向き合わず、無視して逃げ出すこと)などいくつかの要因が考えられます。背景には何があるのでしょうか?皆さんの職場をギスギスから解放し、景色を変えるヒントを提示致します。

今回の特集1では、『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』を上梓されました作家/ワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまねさんにお話を伺います。

(編集長:岡田英之)

沢渡 あまね 氏

ゲスト:作家/ワークスタイル&組織開発専門家/あまねキャリア株式会社 代表取締役CEO。『組織変革Lab』主宰。株式会社なないろのはな取締役・浜松ワークスタイルLab所長/株式会社NOKIOO顧問ほか。デジタルワークシフトコンソーシアム浜松主宰 沢渡 あまね 氏

【主な書籍】
『新時代を生き抜く越境思考』『どこでも成果を出す技術』『バリューサイクル・マネジメント~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方』『職場の問題地図』『業務改善の問題地図』『マネージャーの問題地図』『業務デザインの発想法』(技術評論社)『職場の科学』(文藝春秋)『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』(翔泳社)『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』(日経BP)『はじめてのkintone』『ドラクエに学ぶチームマネジメント』(C&R研究所)『働く人改革』(インプレス) 他多数

なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか

不機嫌な職場とギスギス感を解消するには~日本企業の「勝ちパターン」をアップデートし、職場の景色を変える~

岡田英之(編集部会):本日は、あまねキャリア株式会社 CEOの沢渡あまねさんにお越しいただいています。今回は、『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』の内容を中心に、自由に語っていただければと思います。沢渡さんには2月のJSHRMカンファレンスの講演会にもご登壇いただきましたので、ご存知の方も多いと思いますが、改めて近況を中心に自己紹介をお願いします。

◆『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』について

沢渡 あまね(あまねキャリア株式会社 CEO):改めまして、沢を渡ると書いて、沢渡あまねです。業務改善、組織開発、ワークスタイル変革専門の物書き、作家をしています。著書は、仕掛り中を含めると34冊出しています。現在、浜松市にあります、あまねキャリア株式会社の代表取締役CEO、同じく浜松にあるオンライン育休スクール「育休スクラ」を運営する株式会社NOKIOOの顧問、金沢市に本社がある株式会社なないろのはな浜松支社の浜松ワークスタイルLab所長など、いわゆるパラレルキャリア、複数の顔を持って仕事をしています。浜松と東京で事業展開をしておりますが、ほぼ9割浜松ですね。

岡田:パラレルキャリアでたくさんの顔をお持ちでいらっしゃるのですね。

沢渡:バックグラウンドとしては日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社で16年間サラリーマン経験があり、おもにITと広報の仕事をしてきました。グローバルITで、お客様向けにIT サービスを提供する、社内向けのITサービスを提供する仕事。もう一つが広報、コミュニケーションをとる仕事です。現在はIT×広報で、組織の景色を変える仕事、組織を活性化する、アップデートをしていく活動をしています。これまでに350以上の企業、自治体、官公庁のリアルに向き合ってまいりました。そんな人間でございます。

岡田:今日は画像の背景がダムですね。沢渡さんはいろいろ漏れ聞くところによると、ダムがお好きだと?

沢渡:ダム好きです。「ダム際ワーキング」というものを個人的にも盛り上げています。また、最近は官公庁が推していたり、各地方自治体がプロモーションしているワーケーションのような働き方を活用しながら、どう人々のウェルビーイングを深めていくか、エンゲージメントを高めていくか、集中力、新たな発想、コラボレーションを生んでいくかにチャレンジしています。日本ワーケーション協会にも参画していまして、行政、企業の方々の相談を受けながら、どう働く景色を変えていくかにチャレンジしている最中です。

岡田:ワーケーションですね。お話を聞いて胸に響いたんですけど、働き方を変えましょうとか、人事制度を変えましょうではなくて、働く景色を変える。すごくナチュラルだし人間的で暖かい感じがしました。いいフレーズですね。では、早速ですが『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』について伺います。日本の職場が世界一、もうワールドワイドにギスギスしているというすごいタイトルです。言われてみれば多くのビジネスパーソンが、うちの職場ってなんかギスギスしていると感じているかと思います。そのギスギスの正体って何だろうということですね。この本を出版された理由は何だったのでしょうか?

沢渡:もう、今までのやり方が通用しなくなってきた…と経営者、管理職、ビジネスパーソンの一人ひとりが気づき始めたと感じるんです。今何が起きているかというと、少子高齢化による労働人口の減少、Covid19のような未知の脅威、自然災害も何百年に一度、千年に一度と言われる異常気象が起こっています。さらには科学技術の進化、IT技術の進化。350以上の企業、自治体、官公庁組織に向き合い続けてきましたが、さすがに今までのやり方を変えなければいけない、もう過去の勝ちパターンにすがり続けるには限界がある、という空気を本当に感じていまして、そこから生まれるコミュニケーションの問題にメスを入れたいと思いました。

働く景色を変えましょう!

◆日本企業の「勝ちパターン」をアップデートする

岡田:今までとは、おそらく昭和時代っていうんですかね? なんとなく日本が右肩上がりで、よくわからないけど上手くいっちゃっていた時代のことでしょうか?

沢渡:おっしゃるとおりです。過去50~60年間、日本が勝ちパターンとしていた集団主義、製造業、人海戦術型のやり方の時代。働き方、人事評価制度、労務制度、それらを規定する法制度までがそろそろ賞味期限切れだと捉えています。もちろん、高度成長時代には一定の合理性があったんです。ただし、変化の時代には非合理になりつつある。ここに真摯に向き合いアップデートしていく時期かと思います。
これまでの日本の勝ちパターンは、いわば景色を固定化することで生んできたんですね。すべての社員が、同じ時間軸で同じ場所で同じ価値観をもとに、新入社員のときから定年退職を迎えるまで働く。先輩たちの背中を見て技を盗んでスキルを伝承していく。仕事を属人化させながらプロフェッショナリティを発揮していくやり方が合理的とされてきました。これは、製造現場的、製造業種的なやり方なんです。

岡田:沢渡さんも日産に在籍されておられました。日本の製造現場は、かつてはグローバルな競争環境においても一定の利があった。そこを否定はしないけれど、外部環境も変わってチュー二ングしなきゃいけないということでしょうね。

沢渡:はい。イノベーション、DXと称されるトランスフォーメーション、変革には人海戦術的な固定的なやり方は相性が悪い、という疑いを持つ必要もあると思うんですね。

岡田:今のようなお話をしていると、過去の全てを否定して新しいものに置き換えるみたいな言い方をされる人もいるんですけど、そうではなくて景色を変える。環境にうまく適応していく。 我々人間も生物ですから太古の時代から環境に適応して生き延びてきました。そういった本能をもっと大事にしようということでしょうか。

沢渡:そうです。別の言い方をするとコンプライアンスという言葉で説明できます。コンプライアンスってルールを守らせるという意味以外に、適用する、やりくりするという意味もあると思います。動詞はcomplyですからcomply withで時代の潮流に合わせる、最新のITテクノロジーに合わせる、組織のメンバーの価値観に合わせる、ライフステージに合わせてチームとしてパフォーマンスを発揮していくなど、新しい勝ちパターンにアップデートする必要があると捉えています。

岡田:受け身ではなく能動的に、自分たちが心地よいように、組織にフィット感が高まるように合わせていく。

沢渡:今まさにテレワークを継続するかしないかという議論が起こっていますね。テレワークを経験した結果、やはり上手くいかないので緊急事態宣言が終わったら完全出社にもどす会社もあります。そこでは、テレワークで成果を出せる人と、そうでない昭和の価値観に凝り固まった人の間に綱引きが起こって、職場がギスギスしている状態です。
一方で、変化をポジティブに捉えて、テレワーク意外にいけるんじゃないかと、成長に向けてアップデートしようと試みる組織もあるわけですね。コミュニケーションが上手くいかないところは、もっと通信環境を含めてITに投資しよう。ITツールの使い方、ITスキルが足りないと分かったからスキルアップに投資する。テレワークオンリーではうまくいかないので、意図的に出社する日を設定し、出社も、テレワークも、ワーケーションのような働き方もオプションにしてコミュニケーションミックスで解決するなど、成長のステップアップをしている組織もあります。この格差は組織の成長格差、そこで働く個人の成長格差に如実に現れてきていると思います。

◆KPI至上主義によっておきたマイナスの影響とは?

岡田:一つの勝ちパターンだけではなくオプションもみなで考える。オプションBがだめならオプションC、さらにはオプションBとCをミックスアップしてDを導き出す。Bに決めたらBじゃなきゃダメではなくて、柔軟に対応する発想を持てるかというマインドセットが重要ですね。

沢渡:はい、ではそのマインドセットは何が規定するかというと、組織の広義のコミュニケーション。ビジョン、ミッション、パーパスがきちんと伝えられているか。さらにはマネジメント、人事評価制度、ITを含めた環境への投資、ワーケーションのようなものが選択してあるか、などが挙げられます。
これ、反省点なんですけど、マインドセット、メンタリティの話にすると、日本の組織では個人の気合、根性、やる気の問題に帰結しがちなんですね。日本の失われた30年の大きな反省材料だと思います。

岡田:なるほど。

沢渡:働き方改革も、デジタルトランスフォーメーション(DX)も、改善ではなく改革、変革なんでね。外的要因も含めてすべてのプレイヤーが正しく進化していくところが本質です。経営者がだめだから、中間管理職がだめだから、40代がだめ、30代がだめ、今時の若者が…ではなくてみんながみんな悪い、みんなが正しく変わっていく。もっと言ってしまえば法制度。官公庁も丸投げしないで自分たちも変えるところを変える。妥協するところは妥協していく。総合アップデート格闘技をどう仕掛けていくか?世論も含めてどう意識を高めていくかが、今の日本に求められている覚悟だと思います

岡田:総合アップデート格闘技。トランスフォーメーションに向けて、全員で総合力で変革していく。

沢渡:もう一つ、よろしいですか?もう一つの日本の組織変革、勝ちパターンへの進化を阻害してきた大きな要因は、いわゆるKPI。KPI主義による人々の近視眼性もあるかと思います。
一つ図を用意しました。物事を二軸で見ます。一つの軸が「成果」か「変化」。もう一つの軸が「短期」か「中長期」。1990年代後半から大手企業を中心に取り入れてきた成果主義、KPI主義はこの図の第1象限です。今年度どれだけの数字を達成しますか?コスト目標を達成しますか?客先をどれだけ増やせますかという短期的な成果。中長期といってもせいぜい1~3年程度の成果を追い求めるのには合理的でした。ところが、ここに最適化しすぎて、5年、10年、20年スパンで組織にどのような変化を起こすか、成果の種を撒いていくかに目が向きにくくなってしまった反省があります。

岡田:ほー。KPI主義、成果主義の反省点ですね。

沢渡:短期的な成果を出すためにはマイクロマネジメントが合理的です。日次管理、週次管理、月次管理で「どうなった、どうなった」という具合に。テレワークだと「今日あいつサボってるんじゃないか」と考えがちです。でも、イノベーションを産んでいくためには、日々何か成果が出るかいう視点ではうまくいかないんです。一旦時間軸を止めて、対象物を客観視して、今までのやり方を変えて新しい勝ちパターンを見出していかなければいけません。
今までとはまったく違う、組織内にない専門性、経験を持った人と、それこそ越境してディスカッションして、トライアンドエラーを繰り返していくことが大事なんです。社長はDXだ、イノベーションだって言うけど、結局日々どうなんだ?と日常の管理に追われて、固定的な環境に閉じ込められては社員は成果が出せません。1ヶ月、2ヶ月3ヶ月1年の評価でダメ出しされて、梯子を外されていく。いわゆる無理ゲー、無理なゲームですよねって話です。

変革=総合アップデート格闘技

◆メンバーシップ型は中長期的な成果を生み出す長所がある

岡田:KPI。アウトプット至上主義。マイクロマネジメントを強化してアウトプットを無理やり出させて利益を底上げさせる。そして、なぜだかその多くは株主配当、内部留保に回されて、頑張った社員にはなかなか還元されない。これが失われた30年の一つの絵面だったのでしょうね。

沢渡:おっしゃるとおりです。この絵面に、今盛んに言われているジョブ型雇用をゆがんだ形で導入するのは、ものすごく危険だと思っています。ジョブの定義そのものが第一象限、短期の成果に特化されたばかりのものになってしまうと、いよいよ中長期的に組織に変化を起こしていく仕事が言語化されにくい、評価されにくい状態が加速すると思うんです。ますます、ビジネスパーソンが近視眼的行動しかしなくなると思います。
そういう意味で考えると、いわゆるメンバーシップ型の組織カルチャーや制度は、運用の仕方によっては中長期の変化を見やすいんです。何がメンバーシップ型のメリットで、何がジョブ型のメリットなのか、ここを正しく議論して、ハイブリッドな形で運用していけるかが、経営層、人事組織に求められると思います。

岡田:この図を見て、トランスフォーメーションするためにはインプットが大事と感じました。我々働くビジネスパーソン、もう手持ちの武器は火縄銃しかなくてですね。世の中変わってんのに刀と火縄銃でアウトプット出せと言われている感じです。長篠の合戦みたいなやり方じゃ勝てない。どんなことを学んだらいいでしょう?

沢渡:鋭いポイントです。20年前に管理職になった人には、20年前の管理職研修で思考が止まっている人がたくさんいます。火縄銃で空飛ぶテレポーテーションできる今の武器と戦うのは無理です。常にアップデートしていくことが大事で、リスキリング、スキルアップデートしましょうと今言われていると思うんです。
インプットには越境学習を取り入れることがすごく大事です。組織を超えて他社の人、他業界の人、それこそ行政と民間企業の人たちで垣根を越えてディスカッションしたり、思案したりプロジェクトワークをやってみる。アウェイな環境に身を置く。今までと違う職種、プロフェッショナリティの人と交流することによって違和感や危機感を感じ、自分たちをアップデートしていくことが必要です。

岡田:本の中にスキルシフト、マネジメントシフト、マインドシフトがギスギス解消のポイントとありますが、こちらも簡単にご説明お願いします。

沢渡:過去の勝ちパターンに頼れないといっても、それを個人の努力に押しつけると、今までの勝ちパターンで成功した人は既得権益を手放したがりません。抵抗します。その狭間で中間層はモチベーションを下げて大人しくなるか辞めていく。若手は危機感を募らせる…もうギスギスしかないと思うんですね。組織を正しくアップデートしていくには、そんな個人の弱い面にも寄り添いながら、スキルシフト、マネジメントシフトト、マインドシフトしていくことが大事です。
スキルシフトとは、火縄銃のようなものを最新の知識、ITリテラシーなどの武器へアップデートすること。育成の機会を提供する。それなしで「あなたは変化に抵抗する、ダメですね」とするのは気の毒です。次にマネジメントのやり方を疑ってください。マネジメント職、管理職の意味付けさえアップデートしていく。マネジメントシフトしなければどんなに個々人が優秀な能力、意欲、ポテンシャルを持っていても潰してしまいます。
最後、スキルシフトとマネジメントシフトの積み重ねでマインドが変わります。ITスキルを身につけて仕事のやり方変えたら、今まで苦しんでいた時間はなんだったのかと思ったとか、小さな成功体験をつみあげていく。変化を楽しむ、変化を怖がらないカルチャーが生まれてきます。マインドはなかなか変わりませんし、人から変えさせようとされると抵抗します。だから、マインドシフトはあえて最後にもってきています。

◆スキルシフト、マネジメントシフト、マインドシフトが鍵

岡田:本の197Pに統制型組織と自律型組織の図があります。いわゆるヒエラルキー組織とアメーバ型組織ですね、ここではどのような意図でしょうか。

沢渡:統制型組織、自律型組織のそれぞれの良いところを職種のリアル、業種のリアル、チームのリアルに合わせて、正しく組み合わせてハイブリッドで解決する思考を促すために、比較表を作りました。どちらのマネジメントが正しいと言っているわけではありません。今までの当たり前を疑ってほしいと思っています。

岡田:二者択一の単純化された理論ではなくて組織の形態、機能する環境、権限責任、皆さんそれぞれいろいろありますから、考えるベースとして書いていただいたのですね。

沢渡:指示されたことを真面目にこなす、こなさせるやり方は、日本人は慣れていると思うんです。それがいわば思考停止JAPANを発生させてしまった。そういう意味で何かのベース、フレームワークを酒の肴にディスカッションするトレーニングをしてほしいです。最近、DXの文脈でDに力を入れる企業は増えています。全社員にIT教育をしますとか。もちろんDも大事ですがDXの本質はXです。トランスフォームしていくためのディスカッションをする経験、ファシリテーションしていく経験、そのためのスキル、マインドを身につけることにも、もっと投資をしてほしいと、私は経営者、人事責任者の方にいつも熱く語りかけています。

岡田:自分で勉強したり、ソロ活動じゃダメなんですね?

沢渡:ソロ活動では限界がありますし、気合と根性になってしまいます。また、意欲、能力が属人化します。大企業ほど資金的余裕があって関係人口も多いので、社員が自らアップデートしていく習慣をつける投資をしてほしい。大企業や官公庁が郵送ベースの契約手続きをしいていたら、社員が紙、ハンコ、郵送の手続きで時間を溶かしますし、お取引先の方々もアップデートできない時間を溶かし続けてしまうからです。

岡田:本人たちは悪気なくハンコでスタンプラリーをやっていても、社会的なロス、機会損失、社会悪になってしまうのですね。

沢渡:無駄なただ働き、ブラック労働を増やします。日本の GDP 、生産性が散々たる結果なのは、その積み重ねだと考えます。大企業の社会的責任としてデジタルワーク、業務のスリム化を進めてほしい。それこそがSDGsでありウェルビーイングです。古い残念な仕事のやり方しかできない人を育ててしまうと、社員のエンプロイアビリティも失われます。市場価値が下がっていきますから、そういう人たちが良い条件で雇用延長されたり、転職できるのかって話です。

岡田:キャリアマネジメントを阻害してしまう。少なくとも邪魔はしてはいけませんね。

沢渡:その邪魔をしないやり方に変える先にトランスフォーメーションがあり、イノベーションがあります。組織と個人の発展は両輪なのです。この1時間でもDX、イノベーション、コラボレーションの話からジョブ型雇用、エンプロイアビリティ、エンゲージメント、成長、育成、リスキリング、それを邪魔する業務をよくしていく業務改善、デジタルワークシフト、ダイバーシティ&インクルージョンなどのキーワードが一つの絵の中でつながったと思うんですね。そういうキーワードをまとめてバリューサイクルライフマネジメントと呼んで解説しています。

岡田:ありがとうございます。それでは、最後に読者にメッセージをお願いします。

沢渡:2つあります。一つは越境学習をとりいれていくこと。組織の中に答えを見出しにくい時代です。中の人達だけで解決できることは限られてきています。それが今の世の中の傾向です。越境は2022年のマネジメントのキーワードのひとつだと思います。
2つ目が景色を変える。物理的に他の場所に行くだけではなくて、外の人とオンラインで交流してみる、交流する人を変える、会議のやり方を変えるなど、広義にとらえて働く景色を積極的に変えて、そこから気づきを得て自分たちの組織をアップデートして欲しいと思います。

岡田:今後のご活動やPRもお願いします。

沢渡:3月に新刊の『新時代を生き抜く越境思考』が出ています。越境がどんな変化や成果をもたらすかを、ダイバーシティ&インクルージョン、ワーケーション、選択的週休3日、複業、地方都市の活性化など具体的な事例をもとに解説しています。是非、特に行政の人含めてお読みになっていただきたいなと思います。
もう一つは、大企業の方が多いのですが、毎月、変革推進者、DX推進者、情報システム部門、人事責任者などがオンラインで学び合う、越境学習プログラム「組織変革Lab」(https://cx.hamamatsu-ws-lab.com/)を提供しています。組織は違っても立場が一緒、課題は一緒、テーマが一緒の人たちとディスカッションしてみるのも景色を変えることです。毎月行っていますので、毎月ご参加いただくと越境学習する習慣ができると思います。

岡田:ありがとうございます。 それでは、以上で収録を終わります。

スキルシフト×マネジメントシフト×マインドシフト