に通勤していた日常にも変化の兆しが見られるのではないでしょうか。コロナ禍以前は、働く=会社に出社することということが自明でした。しかし、現在、未来はこうした自明が自明ではなくなるかも知れません。こうした変化はチャンスなのか一時的事象なのか?
今回の特集2では、テレワークを日常的な働き方とすることになった会社や、これからテレワークを日常的な働き方に取り入れようとしている会社に勤務する管理職(組織マネジメントに従事する方)の皆さんにテレワーク型組織の効果的マネジメントについて、実践的な知見から情報提供させて頂きます。

(編集長:岡田 英之)

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長 総務省委嘱テレワークマネージャー 成瀬 岳人 氏

ゲスト:パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長 総務省委嘱テレワークマネージャー 成瀬 岳人 氏
2006年よりパーソルグループにてエンジニア派遣の営業およびスタッフマネジメントを担当した後、業務コンサルタントに。ワークスタイル変革コンサルティングサービスを立ち上げ、公共事業や複数企業の働き方改革企プロジェクトの企画・推進支援を担当。これまでの、働き方改革コンサルティングで得たノウハウを自社に還元している。副業で総務省よりテレワークマネージャー委嘱を受けて全国のテレワーク導入課題を持つ企業の支援を行う。

テレワーク時代の新マネジメント

テレワークと組織の生産性、組織力の関係性

岡田英之(編集部会):本日はパーソルプロセス&テクノロジー ワークスイッチ事業部の成瀬岳人さんにお越し頂きました。テレワークについて、各企業でどういう工夫をして乗り越えているのか、お話を伺いたいと思います。まずは専門分野、得意領域と今現在の活動の分野について自己紹介いただきたいと思います。

◆『組織力を高めるテレワーク時代のマネジメント』

成瀬岳人(パーソルプロセス&テクノロジー ワークスイッチ事業部):今の仕事ですが、働き方の転換を進めて企業とそこに所属する社員の現場の生産性を高めていくことをミッションにしているワークスイッチという組織で、いろいろなサービスの企画開発を行っています。
テレワークの専門家を本業から始めて、総務省から委嘱を受けたテレワークマネージャーですとか、総務省以外でも、個人コンサルとして主にテレワークのアドバイザーをしています。
テレワークが広まっていくだけではなく、本業、副業、学び直しも、ほとんどの人が考えなければならなくなったときに、企業はこの個人をどう育成、マネジメントしていくのか、個人はどうキャリア形成していくのか、いままでとは大きく考え方が変わるだろうと思っています。
今回の著書ですが、これからの時代の組織設計とか、個人のキャリア開発みたいなところをテーマに置いていて、いろんな企業ともディスカッションを重ねています。

岡田:有難うございます。今日はテレワークというキーワードでお話を伺いますが、副業、パラレルキャリア、リカレント教育、学び直し、最終的には働き方改革ですね、そうした話も実は密接に絡んでくる。テレワークも単純にテクノロジーやICTとかいった話ではないということですね。

成瀬:そうですね。おっしゃる通りです。

岡田:続いて、ご著書ですが、「組織力を高めるテレワーク時代の新マネジメント」は、そもそもどういった経緯で出版に至ったのか、出版社とのやりとりなど、ご披露いただけると有難いです。

成瀬:タイミングとしては、ちょうど緊急事態宣言が出るか出ないかという2020年4月ごろですね。少し遡ると、多くの企業からテレワークに備えたい、特に管理職に研修をといった話が非常に増えていました。
私自身は昨年まで、主に人事総務の方向けに、テレワークの制度や環境をどう採り入れていくかをコンサルしていたのですが、私たちが所属しているパーソルプロセス&テクノロジー、特にワークスイッチという組織自体が全員テレワークという組織運営を5年ぐらいやっていたので、そこで成瀬さんはどうマネジメントしているのか、成り立っているのか等の質問をいただきました。
緊急事態宣言になりテレワークせざるを得ない状況になって、マネジメントや現場に対するテレワークリテラシーやマネジメントのあり方を変えるといった相談がより増えてきた時期に、日経BPから、現場のマネージャー向けに私のナレッジを展開できないかという相談をいただきました。
私も課題感として、現場管理職の方に直接私が声を届ける機会はすごく少なくて、悩んでいる現場管理職の方に何かコンサルではない方法論でナレッジを届けられないかと思っていたので、本という形で現場の管理職の方にヒントをお届けできるのであれば、という想いでお話を受けたというのが経緯です。

組織力を高めるテレワークとは?

◆『テレワークと組織の生産性向上』

岡田:有難うございます。このご著書で訴えたいことは、働き方のひとつの手法としてテレワークを活用し、組織の生産性をいかに上げていくかということ。組織には、マネジメントという役割の人が存在しますが、これまでのマネジメントの議論は、基本的にはリアルな対面コミュニケーションが中心だったと思うんですよね。
今回、テレワークにスイッチしていく中で、考えるべきは組織マネジメント、そこが最重要になる。その仕組みを変えないとテレワークが定着せず、組織の生産性に結び付かないものになる。
では、テレワークが浸透していく中で、組織マネジメントにどんな変化の兆しがあるのか。いくつか事例紹介いただけると有難いです。

成瀬:その前に、少し体系立てたお話をさせていただきます。まず、さっきの本の構成で、ハード面のテレワークの課題を2章でコンパクトに触れ、3章以降は一貫してマネジメントスタイルを変えなければということをお伝えしています。
弊社グループで出している調査結果の中で、管理する側とされる側の不安というものがあります。今、管理される側の現場の不安というのは、ちゃんと評価されるんだろうか、相談とか気持ちを察することまで含めて、ちゃんとコミュニケーションがとれるんだろうかということです。
一方、管理する側を見てみるとコミュニケーションは同じで、もうひとつが業務の進捗状況が分かりにくく、目の前の業務がちゃんと進行できるんだろうかという不安、これが大きい。私も実際、全員テレワークでやっている組織の管理職ですが、私ですらそれは思いますので、とても現実的なデータだと見ています。
(参考:パーソル総合研究所 テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査
https://rc.persol-group.co.jp/research/activity/files/telework-anxiety.pdf
例えば、何万人もいる大手会社の人事の方との会話の中で、上から下を管理する、ということが前提になっているので、同じ時空間で仕事をしない状況では、なんかこう歪みとか無理が生じてくるねというのが共通しておきているなと思いました。
チームという組織の中でものごとを共有する面でも生じていて、日本ではナレッジマネジメントとか、ナレッジシェアなどがずっと言われてきましたが、これがもう日常のコミュニケーションレベルですら、かなり難しくなっているということです。今までオフィスに行って、一緒の場所で仕事をすることで成立してきたものが、だいぶ崩れてきている。
ではどんな工夫をしているかですが、いわゆる働き方改革先進事例として出てくる企業に共通しているのは、管理型から支援型マネジメントへの移行に取り組まれているということだと感じています。
この支援型マネジメントは、今のテレワーク下に発生した話ではなく、もとは働き方改革やダイバーシティー&インクルージョンの中でマネジメントを変えなければと言われていた時のものです。
所謂サーバントリーダーシップ型のマネジメントにしていくという話ですが、実践している企業がやっていることは、大きく3つです。
まず「目的・目標の言語化」を組織単位でやっています。最近のグローバルトレンドでもありますが、パーパスという風に言われています。ミッション、ビジョンでなくてパーパス=目的ですね。
グローバル経営のトレンドとしてもパーパスを言語化しようと言われています。これまで、すごくきれいなビルで仕事できることがロイヤリティを生んでいたものが、むしろオフィスに来ないでくれという話のなかで、会社に所属するというのは一体何なんだということになる。
目の前にある業務ぐらいしかない訳ですが、何のためにそれをやっているかを共通項として言語化する。これを一個のプロジェクトチームや、ひとつの課、組織単位で徹底してやっているというのが共通していると感じます。
二つめは、いわゆる「1on1(ワン・オン・ワン)」です。テレワーク、リモートワークをコロナの前後に定着させている会社に共通しているのは、日常的にワン・オン・ワンをやっているということ。一方で、今回テレワークで苦戦されている会社では、ワン・オン・ワンをやらなくなっていて、それはオンラインになったからやらなくなった、という点です。
我々の様にもともとオンラインも含めてワン・オン・ワンをやっていた会社からすると、別に対面でもオンラインでもやればいい、むしろ場所を選ばなくて良いから、やり易くなったって感覚もあります。このワン・オン・ワンをちゃんと回して根付いている会社は、支援型マネジメントに自然になっているなとすごく感じます。
三つ目は、事例としては少ないですが、ここにきてOKRというキーワードの相談を受けることが増えてきています。

岡田:OKRはMBOの変形ですね?

成瀬:MBOというのは、立てた目標を達成したかどうかで評価をしていく人事考課のひとつのフレームだと思います。OKRの本質はチーム全体で目標を具体化し共有化して、役割のレベルまで落としていくということです。テレワーク時の肝は、全体で共有するという点です。
MBOは、ほとんどの会社では上司が部下の目標と評価を知っているというかたち。一方、メンバーのAさんとBさんはお互いの目標を基本的には知らない。上司の目標と評価も部下は知らない。
一方、OKRの前提は全員が見える、共有化するということで、今自分たちは何のために頑張っていて、どのチームの○○さんはいま何を目標にして役割担っているかということが可視化される。
ワン・オン・ワンをやり、OKRをやっていくと、必然的に何を目指すのか、何のためにというパーパスの言語化をせざるを得なくなるので、これを運用してみようかという会社が増えていると肌感としては感じております。

岡田:それぞれのメンバーがどんな役割を担ってチームが構成されているのか、これまでの多くの組織では明文化もされず、コミュニケーションの中で確認することも希薄だったのかなと思います。今回こういったリモート環境になると、あいつ今日は何やってるんだ…と疑心暗鬼になってくる。
そこで、逆に伺いたいのは、これがうまくできない企業、マネージャーというのは何が障害になっているのですか。企業風土なのか、個人のマネジメントスキルの問題なのでしょうか。

効果的なテレワークは生産性を向上させる

成瀬:ふたつ大きく要因があります。大規模の会社だと、いわゆる課長職以上の平均年齢は、おそらく40代以上だと思います。私以上の世代の方々は、支援型マネジメントを受けてきた世代ではなくて、オレの言う通りにやれ、指示に従え、ルールを守れ、皆と同じようにやれというのが当たり前でした。その方がビジネスの効率がよかったんだと思います。
要は、マネジメントとか、働き方に関する価値観って遺伝するものだと私は思っています。逆に、受けてきてないマネジメントを自分からやれというのは、かなりパワーがかかることだと思います。
私の会社は、今の経営層がどちらかと言うと支援型マネジメントでしたし、もともとワン・オン・ワン文化を持っていました。今、他の会社と会話していると、そういう前提となる文化、考え方というものが、あるのか無いのかがすごく大きい差なんだと感じています。

岡田:支援型マネジメントに少しずつチェンジしていく、そのことがテレワークにはすごく親和性が高いということですね。
ところで、人事部はシフトチェンジしたがっているが、人事部門と現場、各ラインのところでギャップが生じるといった悩みを抱える企業は多いと思いますが、人事部と現場のコンフリクトについては、成瀬さんはどんなアドバイスをされているのでしょうか。

◆『支援型マネジメントが広まらない理由』

成瀬:踏み込んでいるところは、全管理職を集めて私が直接ディスカッションに参加させてもらってるんですが、これは働き方改革の議論の中でも同じことが起きていました。
管理職が変わらなければいけないことはより加速し、現場の管理職の方々も、やっぱりそうだという感覚を持つ方が増えてきているのは事実だと思います。
ところが、組織の原理原則かなと感じていますが、やはり上に従うという大原則があるんですよね。判り易く言うと、経営層がテレワークやらない会社は、出社率はあがってるということです。経営層が、今まで遺伝してきたものとは違う考え方を採り入れる受容性を持とうとしているかどうかが、大きな変換点になってきていると思います。
不思議なもので数年間こういうテーマで仕事をしていると、経営者が替わって、やっぱりやることになりましたとか、時代が変わって改めて考えることになりましたということは、起きています。この歩みのスピードが各社によって違うだけで、確実に、変化しようとする動きは止まらないところに来ていると感じます。で、そのスピードの差を生んでいるのは、やはり上流工程に誰がいて、どういう意志決定をしているのかに、すべて左右されているというのが感想です。

◆『人事部門の人は、経営知識とボスマネジメントのスキルを』

岡田:人事部門の人たちはテレワークを推進しなければいけない。その時にぶち当たる壁はトップの意識改革ですが、残念ながら理解が進まないということが結構多い。そんな時、人事担当の人が無力感を感じますが、そういう人事担当の人に何かアドバイスはありますか。

成瀬:そうですね、私が考える方法論としてはふたつしかないかなと思ってます。
ひとつは、時を同じくして戦略人事ということが言われているように、人事のことだけ勉強すればいいというものではない、経営者といかに同じ目線で話せるようになるか、経営層を突き動かすボスマネジメントをするしかないんだということです。
経営層のアジェンダの優先度に沿ってどう持っていくのか。これはやった方がいいという話をどう上手く飲み込ませるか。それは、政治調整力の話で、人の動かし方を学ばなければいけない。人事の方が人事自体の能力というものをアップデートするしかないと思います。
もう一つは、外部の知見というものをどう上手く取り込むか、さらに、誰の話だと聞いてくれるかという話で、例えば、現場の管理職や社員の中でも声の大きい人や、自社と同じような創業経営者の仲間にどう言ってもらうかです。
意思決定者が見ている景色とか思考を変えてもらうキッカケをどう作っていくか、それに対して、どういう努力・工夫をするのかということが結構重要だというのは、共通して感じるところですね。

岡田:有難うございます。ボスマネジメントという単語が出ましたが、要は意思決定者をどう動かすか、どう影響力を与えるかで、成瀬さんたちのような外部リソースを効果的に活用することも含まれますね。各人事企画部門の人たちが組織内政治スキルを可視化し高められると、人事部が抱えているジレンマやストレスが解消されるんじゃないかと思ったんですけれども。

成瀬:各社で、ずっと人事という方もいれば、現場から人事に来たという方もいる中、共通して感じるのは、前者=人事プロフェッショナルの方が、壁に当たっているケースが多いということです。現場の声とも遠くなり、経営目線といっても何を学べばいいんだという形になっているので…。
実は、戦略人事のキャリアポートフォリオみたいなものって、あまり耳にしたことはありません。
ある教授からの受け売りですが、チェンジマネジメントの中で人事の方にもどういう武器を与え、何を能力として身に着けさせるべきかを体系化し、これから求められるスキルとして再定義しないといけないと感じています。

岡田:やはり組織内政治スキルとか、影響力のマネジメントとか、事業サイドの知見とかが乏しくなっている。同じテレワークを語るにしても、経営層とか営業ラインとは違う方向に語っているような、そんなイメージでしょうか。

成瀬:弊社の人事もそうですが、自分もテレワークやっているので、テレワークやった時の課題感って身をもってわかる訳です。一方、他の会社に行くと、人事なのでテレワークはできません、オフィスにいないといけない、いろいろ起こるのでねと。同じ人事というファンクションなのに何だろうこの差はと思います。
もう営業もやっていたし現場も見て来たし、他の経験もしていて各部署同じで、人事だから特別ということはないという捉え方ができるかどうか。それで取り組み方も変わるというのは各社みていて特徴あるなと感じます。

岡田:よく学習棄却、アンラーニングと言ったりしますけど、人事労務の人が学習棄却できないとまずいですよね。

成瀬:そうですね、最近自社で行った講演ではジョブ型というのを素材にしてたわけなんですが、これだけ答えのない企画業務に取り組まないといけない時代というのは過去なかったんじゃないかと。
ジョブ型とか、テレワークとか、副業とか、いろいろ出てくる中で、それを何故やるのか、対応においてどう動くのか、社員のエンゲージメントにとってどういう意味を持つのかとか、いろんな影響範囲に対して考えなきゃいけない。かつ、それは経営的、ビジネス的にどういう意味を持つんだろうかというところにつなげていかなければいけない。
むしろ人事の方のほうが学び直しというのを求められている時代に入っているのではないかなと言う風に感じているんです。

岡田:先程のお話のとおり、働き方とか生き方で、家族との生き方を含めて多様化していき、これが正解というロールモデルが無い時代ですね。で、多様化と言われて対応できない人、戸惑いや焦りが先行している人が結構いると思うんです。こういう人達に何かアドバイスはありますか。

◆『ABW=働く場所の多様化とマネージャーの役割』

成瀬:そのアドバイスの前に、この先どうなるんだろうという話がいいかなと思っているんですが、アフターコロナ見据えましょうという話の中で、テレワークでなくてこれはABW(アクティビティベーストワーキング)なんだと。

岡田:このABWについて少し説明していただけますか。

成瀬:仕事の目的に応じてどこで働くかを自律的に選ぶ。ABWはオランダに端を発しているものですが、もともと日本ではフリーアドレスを採り入れる時に採り入れられたんですね。これが今、テレワーク時代になって、様々なワークスペースを選べるようになっていくなか、今この仕事をする上で、もっともパフォーマンス高く働ける場所を選ぶということだ、となりました。
ここ10年間を振り返ってもオフィスはだいぶ様変わりし、どのスペースを使うかというのもスペース毎に目的設定されている。そういうオフィスメーキングがこの10年だいぶ流行ってきたんですが、また、コロナを経てオフィスって何だろうみたいな議論がされています。
最近よく聞くワーケーションも、日本においてはワーク×バケーションとは限らなくて、ワーク×○○ションの○○ションは、これはディスカッションかもしれないしコラボレーションかもしれない。日本はやはりビジネス目的で、軽井沢の施設だとコラボレーションに向いてます、南紀白浜の施設だと別の目的に向いてますという風に、各自治体もB2Bで呼び込む際に訴求するようになっていくと思います。
こういう時にはこういうワークスペースでやると、こういう成果が生れますと。これが今あまり整理されて提示されていない中、自分で考えて自分で選べというのは結構乱暴だなと思います。では個人はどうすればいいかというときに、自分で試行錯誤していく人、良く判らないからずっと家にいる・オフィスに通うという人、考えないという人に三極化していくのではないかと思います。

岡田:労働空間を選べなくて、結局毎朝同じ電車に乗っている人達。彼らに変わってもらうためには、先ほどのABWといったものを指導、アドバイス、カウンセリングしてくれる人がいると良いなと思ったんですが、そういう人はまだいないですか?

成瀬:出てくると思いますし必要性もあると思うんですが、今我々はどうしているかと言うと、今日の主題にもどして、その役割を担っているのは支援型マネージャーだと思ってます。
結局、マネジメントの仕事とは大きく3つあって、顧客創造、業務環境の構築、人材育成じゃないかと思っているんです。この中でいう二つ目の業務環境の構築というのが、今テレワーク比率が上がってきている中で課題となります。
先ほどのABWのように選択肢が増えた中、例えばチームはみんな新しい人という組織形成期の場合は、ちょっと集まった方が良いね、そういう機会も必要だねということ。この、どこで仕事をするか設定するのは、日本の今の組織においては、個人個人ではなくてやはりマネージャーではないかなと思っているんです。
管理職には、ハラスメントはダメとか、コンプライアンスを守れとか、今までいろんなことが要求されてきて、マネジメントリテラシーは時代時代でアップデートされていると思いますが、ここに労働空間のどこを選ぶのかということが追加されてくるということです。
大変な話なのですが、これによって生産性が左右されるという話なので、マネジメントやリーダーの重要な機能になると感じています。

岡田:それがマネージャーの新しい仕事だとなると、マネージャーにスキル教育をしなければいけないということですね。

成瀬:そうですね。デジタルリテラシーをどう上げていくかと、このワークスタイルデザインというか、それがたぶん新しい分野ですね。こういったことを事例、選択肢とともに学んでいかなければならない。
一方、人事の方はもっと経営層、経営をマネジメントするような能力を培っていかなければならない。教育されないままアフターコロナの時代をどうしましょうという議論をするのは、結構無理があると思っています。みんながレベルアップしないといけない時代に来ているなと感じます。

◆『キャリア自律と副業』

岡田:最後に成瀬さんの今後のご予定含めて、私どもの会員企業、人事担当にアナウンスメントやメッセージがあれば2、3分、お伝えいただいて終わりたいと思います。

成瀬:有難うございます。テレワークに関しては、まだまだ議論は尽きないんですけれども、ただ、テレワークをどうするかというのは本質ではないと思っています。
こういうテレワークという選択肢ももう避けて通れない、当たり前という世界において、次に何を学び何を考えていくのかと、次に目線を移さないといけないと思っています。
共通してコロナの前から日本の課題になっているのは少子高齢化です。採用や雇用のあり方もどんどん多様化していきますし、それは法律が変わっていきなり変わるというよりは、企業活動の中でいろんなケースが生れ、この方法いいねという話がこの10年いろいろ起きてくると思っています。
その中で、これは注目した方がいいと思っているのが「キャリア自律」です。そのキャリア自律とセットになって、じわじわと来ていると感じるのが「副業」ですけれども、私もこの副業を研究し始めています。
いま多くの企業で副業禁止の状態がまだまだ多い中、みなさん解禁しようとしていますが、むしろ副業を促進していこうというステージ、本業とサブという概念ではなく、複数の本業を持つという複業です。これを既に実践している企業としてヤフー、ユニリーバなどが出てきており、今度さらに副業人材活用のステージへと、段階を踏んでいきます。
労働人口全体が減っていく中、ひとつの組織で人材を抱え込むのんではなく、副業という手段を使いながらキャリア自律した人達を増やし、多様な経験をもった人が様々な組織やプロジェクトで活躍できる人材循環社会を実現するというのが私の次の10年の目標になっています。

岡田:長時間有難うございました。

テレワークの活用は奥が深い世界です!