JSHRM会員の誌面交流の場として、会員の方から寄せられた自己紹介や日ごろ考えていること、問題・課題意識などをご紹介します。

株式会社田代コンサルティング 田代 英治 氏

ゲスト:株式会社田代コンサルティング 田代 英治 氏

 みなさん、こんにちは。株式会社田代コンサルティングの田代英治と申します。
 JSHRMには、2005年、それまで20年間勤めた大手海運会社との関係を雇用契約から業務委託契約に切り替え、インディペンデント・コントラクター(IC)として独立直後に入会しました。これまで、入会直後の2006年にHR Cafeで、2015年には年次カンファレンスで、それぞれお話させていただく機会をいただきました。

 先日オンラインで開催されたカンファレンスは、時間の関係ですべてに参加することは叶いませんでしたが、第3部までどれも面白くためになる内容で楽しませていただきました。
 特に基調講演(対談)の「人事の職分」では、世の中で広く言われている事象に対して、「うそつけ」「本当か?」と反対仮説を提示してみることの重要性を改めて認識しました。
自分の場合もそうでしたが、人事担当者の多くは、「他社はどうしてる?」「過去はどうだった?」と他社事例や先例踏襲で考える癖が染みついていることが多いと思います。物事を批判的に観て、自分の頭でよく考えることの大切さを強く再認識しました。

 ここで、私の人事のキャリアを少しご紹介したいと思います。
 1985年(昭和60年)に新卒で入社した大手海運会社では、4~5年ごとに人事異動がありました。20代の頃、営業や船舶の運航管理等船会社らしい仕事の経験を積み、さあこれから海外駐在だと意気込んでいた矢先に、全く予期せぬ人事部への異動を命じられました。
 失意のどん底でスタートした人事部の仕事でしたが、一通りの業務を経験するうちに面白さややりがいを感じるようになってきました。結局、通算して9年間人事部で勤務することになりましたが、どうすべきか中々正解が見つからない世界で格闘する日々を過ごしました。

 また、会社員時代には、組織と個人の関係は、雇用関係とは別のもっと柔軟な形があってもいいのではないかと悩み続けてきました。それに終止符を打つことができたのは、会社との関係を変えるという発想でした。「会社と社員の雇用関係をいったん解消して、自分のやりたい仕事で会社と業務委託契約を結んで仕事をする」という働き方は究極の解決策だと信じて、会社に提案し、最終的に受け入れられることになりました。

 こうして、2005年に会社との雇用契約を解消し、人事コンサルタントとして独立と同時に、業務委託契約を締結し、引き続き人事部の業務の一部を委託されることになりました。それ以降16年間、社員という立場から離れて、同社との新しい関係を継続しています。

 今でこそ、個人事業主として会社と業務委託契約を結んで働くスタイルが、タニタさんや電通さん等の例もあるように徐々に広まりつつありますし、この4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法でも65歳以降の働き方の選択肢として認められる等、15年以上前に自ら実践したやり方がこうして脚光を浴びていることを感慨深く感じています。

 コロナ禍の最中にあっても、人事制度改定のコンサルティングの依頼が引きも切らず続いています。クライアント企業の多くに共通する課題も感じています。「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。」というアンナ・カレーニナの冒頭部分とは逆に、幸せな人事制度はそれぞれの形があるが、不幸な人事制度はどれもみな同じようにみえてしまいます。

 特に、評価制度については、制度そのものに問題があるケースもありますが、上司の評価スキル不足等に起因する運用面に問題があるケースが多く、共通する不幸な形態の一つと捉えています。なぜ、人事制度がうまくいっていないのか?この原因を見誤ると、徒に制度をいじくっておかしな方向に向かい、不幸な会社になってしまうこともあります。

 クライアント企業が、そのようなことにならないように、導いていくことも私の使命だと思っています。

以上