分断社会化という症状が顕在化したニッポン
~階層固定化により変化するコミュニケーション~

「分断社会」という言葉を耳にする機会が増えているかと思います。「分断社会」とは、学術的に明確に定まった定義はされていませんが、「ある社会のメンバーが、特定の基準から見て隔絶された階層に分断された社会を指す。特に、所得・資産面での富裕層と貧困層の両極化と、世代を超えた階層の固定化が進んだ社会のことを言う。」と説明されます。バブル経済崩壊後の1990年代以降経済成長が鈍化し、人口構成も高齢化に大きくシフトしました。
ニッポン全体の活力(バイタリティ)も下降トレンドとなり、成熟化した国に変貌しました。本来ならば、このタイミングで成熟国家として相応しい社会・経済システムを再構築しなければならないハズですが、「まだまだ、自分たちは若いのだ!心身ともに成長し続けるのだ!」という根拠の薄い精神論が幅を利かせました。結果、それまでの成長を前提とした社会・経済システムを維持しようとし、身体や精神に無理を生じさせ、不健康な状態となり、長期療養に至ってしまいます。平成30年間の大半の期間は、長期療養期間であったのです。
不健康の大きな原因は、「分断社会化」という症状です。貧困や格差が固定化し、所得水準に応じて生活スタイルが一定程度固定化されてしまう階層社会を産み出してしまいました。これまでのニッポンで経験したことのない症状です。階層社会となれば、職場、地域、学校等でのコミュニケーションスタイルも微妙に変化していきます。これまで相互理解を深める目的で、自由闊達に行われていたコミュニケーション場面でも、相互不信や不寛容といった負の側面が顔を出してきます。みなさんが職場や地域、家庭等で感じる閉塞感や息苦しさの原因が「分断社会化」という症状が原因なのかもしれません。
まもなく新しい時代を迎えます。みなさんで「分断社会化」という症状に正面から立ち向かい、克服し、活力(バイタリティ)を取り戻そうではありませんか!

目次


岡田 英之

編集部から “Editorial Scope”



特集1:平成時代を象徴する“中年フリーター”問題の実態
ゲスト:労働経済ジャーナリスト 小林 美希 氏



特集2:“驚愕のバイトテロ”背景に隠された社会・労働問題とは
ゲスト:NPO法人ホットプラス代表理事、聖学院大学客員准教授 藤田 孝典 氏



特集3:“人口減少の虚実”様々な思惑が絡む人口減少×AIという課題と現実
ゲスト:アセットベストパートナーズ株式会社 中原 圭介 氏



特集4:人材採用難時代に考えるリファラル採用の実態
ゲスト:リファラルリクルーティング株式会社 白潟総合研究所株式会社



【新シリーズ:研究者が語る】
-「人」と「組織」に関する未来と人事の果たすべき役割-
ゲスト:法政大学大学院 政策創造研究科 教授 石山 恒貴 先生



【新シリーズ:小説の中の「人事」を読む(1)】
池井戸潤著『下町ロケット』(小学館)
【執筆者】:法政大学キャリアデザイン学部教授 梅崎 修 氏



【シリーズ:伝統を紡ぐ人々】
2/19 Insightsセミナー報告と動向【番外編】



【シリーズ:Insights版MBA essential】Vol2 イノベーション
【解説】:高山 誠 氏



【JSHRM活動報告】JSHRM特別セミナー
『2020年代の雇用とキャリアを考える』(ワークライフキャリア研究会 企画)



【シリーズ: Book Report】
世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」



【シリーズ:会員の部屋】
アイフォータレント株式会社 藤井 真理



JSHRM事務局だより



読者アンケート:Insights Vol.99 2019.4月号