「非言語的手がかり」とは

 2022年2月26日に恒例のJSHRMカンファレンスがオンラインにて開催されました。今年のテーマは、「JSHRMコンファレンス2021-企業人事と学生が本音で語る!入りたい企業・採りたい学生-」でした。人材採用分野に精通したゲストによる講演やパネルディスカッションに加え、学生と社会人のグループディスカッションも行われ活発な意見交換がなされました。

 コロナ禍における人材採用の話題の中心は、「オンライン採用」かと思います。対面が許されない社会情勢において、各企業はインターネットなどを介した「会わない(非接触)」採用を模索してきました。オンライン採用に関しては、この間多くの書籍が刊行され、セミナーや講演会も活発に開催されているようです。今回のカンファレンスでもゲストのお一人である株式会社ビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆さんが2021年2月に『オンライン採用 新時代と自社にフィットした人材の求め方』を上梓されています。オンライン採用とリアル(対面)採用との違いを語る中でひとつ重要なキーワードとなるのが「非言語的手がかり」です。

 「非言語的手がかり」とは、上智大学経済学部の杉谷洋子教授によると、言葉以外のコミュニケーションの要素、例えば、表情やジェスチャー、声の調子などのことです。 これらは、時に言葉の意味を正反対に変えてしまうほど、感情的情報を強く伝えます。例えば、相手が「今日はつまらなかった」と言ったとしても、笑顔で言ったのなら、親しみを込めたユーモアと解釈できるでしょう。反対に怒った顔をしていたら、本当につまらなかったと思っているのでしょう。そうした意味を的確に見極めるには、非言語的な手がかりに注意(意識を集中)しなければなりません。対面コミュニケーションにおいて、表情やジェスチャーは重要な要素です。だからこそ、非言語的な手がかりは、脳にそれなりの負荷をかけると考えられるとのことです。

 Zoomなどを活用したオンライン採用面接の場面では、この「非言語的手がかり」に対する理解が求人側と求職者側双方にとってミスマッチを低減する大きな要素になりそうです。

 オンラインにせよリアル(対面)にせよ人材採用における面接場面では、面接官と候補者が接触し、言語、非言語での遣り取りを通じた相互作用が行われます。

 早稲田大学人間科学部の鈴木晶夫教授は、「接触」に関し、直接的・間接的身体接触は基本的な情報伝達手段である。親子関係や親密な人間関係に限らず、人と人とが、精神的にも身体的にも「ふれる」というのは、人間関係の中で重要な場面であり、互いに様々な影響を与え、与えられると述べています。オンラインとリアル(対面)との効果的なハイブリッドが人材採用や入社後活躍(オンボーディング)の成否を決めるということでしょうか。

 オンライン採用を契機に、人材採用の場面では、求人者と求職者の素敵な出会いを紡ぐ「新しい接触の形(カタチ)」が模索されていくことでしょう。


JSHRM 執行役員『Insights』編集長 岡田 英之
【プロフィール】
1996年早稲田大学卒
2016年東京都立大学大学院 社会科学研究科博士前期課程修了〈経営学修士(MBA)〉
1996年新卒にて、大手旅行会社エイチ・アイ・エス(H.I.S)入社、人事部に配属される。その後、伊藤忠商事グループ企業、講談社グループ企業、外資系企業等にて20年間以上に亘り、人事・コンサルティング業務に従事する現在、株式会社グローブハート経営統括本部長、組織・人事コンサルティング部長、グループ支援部長
■日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員 ■2級キャリアコンサルティング技能士 ■産業カウンセラー ■大学キャリアコンサルタント ■東京都立大学大学院(経営学修士MBA)