2022年5月31日に本年度初のMeetUpが開催されました。MeetUp(旧称:月例会)は短時間の学びの他、会員同士の情報交換や実務上の相談等の場として、毎月開催されています。今回は人事制度研究会主催で、株式会社千正組 代表取締役の千正康裕氏を講師としてお招きし、「霞が関キャリア官僚の未来をデザインする~働き方、組織、キャリアの新しいプラットフォームを思考する~」と題してお話を伺いました。

 前半は千正氏のご経歴をたどりながら、勤務されていた厚生労働省を中心とする、霞が関で働くキャリア官僚の働き方、組織、キャリアがどのように変わっていったか、あるいは変わらなかったか、ということを伺いました。昨今、民間企業における労働環境が劇的に変化してきた一方で、今も度を超えた長時間労働が常態化しており、長期求職者の増加、離職増加、採用難といった課題が深刻化している霞が関。24時間働けることを前提とした働き方ができるキャリア官僚がむしろ少数派となる中、未だ24時間365日対応ができることを前提にした働き方が求められる職場で、組織のひずみが表面化している現状が紹介されました。そうした状況に対し、中央省庁自体による改革が必要であるとともに、数字によるガバナンスが効かないという霞が関ならではの課題に対して社会問題として発信し、外部から変化を後押しする重要性が語られました。

 会の後半、話題は『政策』に移り、中でも、自分に決定権がないとき、いかに意思決定権限を持つ人に働きかけて変革を実現するか、という観点から政策提案の技法についてお話しいただきました。政策決定にあたっては、「仲間を増やす」「政策スケジュールに合わせる」など、エビデンスとロジックを持ちつつも徹底して相手に寄り添って意思決定に持ち込むという姿勢が特徴的で、ボトムアップの活動などビジネスの場面でも広く活用できそうな考え方だと感じました。

 千正氏によるお話がひと通り終わると質疑応答の時間となりました。比較的少人数での開催だったこともあり、千正氏には参加者からの質問にざっくばらんにお答えいただきました。全体を通じて、千正氏が霞が関と民間企業の相違点・共通点を常に意識されながら、丁寧に説明されていたことが印象的でした。

 年功序列、新卒一括採用、長期雇用に加え、同質性の高い人員構成といった従来の日本の組織の特徴による成功体験を捨てて、新しい働き方、キャリア構築が実現できる組織へ-キャリア官僚の未来は霞が関だけのものではなく、日本が本当の意味で旧来の働き方、組織を時代に合った形に変革すべく意思を持って実行できるか、ということが試されているのではと感じました。

JSHRM編集員 河村 綾子