第3回のラウンドテーブルでは、官民ともに関心の高い働き方改革(労働時間関係)をテーマとし、法改正の背景や企業の取り組みを共有した上で、JSHRMと厚生労働省のメンバーとが活発な意見を交わしました。

「働き方改革」の全体像とは?(元労働条件政策課 三谷氏)

そもそもの働き方改革の狙いですが、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するために、働く人々が「個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で『選択』できるようにする」ということが背景にあります。主な改革の内容としては、次の項目が挙げられます。

  1. 時間外労働の上限規制の導入
  2. 年次有給休暇の確実な取得
  3. 中小企業の月60時間超の残業の、割増賃金率引上げ
  4. 「フレックスタイム制」の拡充
  5. 「高度プロフェッショナル制度」を創設

では、働き方改革を進めた結果どうなったのでしょうか?法改正後の定量データを確認すると年間の実労働時間が低下し、年休取得率も確実に増加していることが確認できます。また、働き方という観点で言えば、コロナを契機に「テレワーク」の実施率が急上昇し、副業の希望者も少しずつ増えています。大きな流れの中で、日本の働き方が徐々に変わってきているということが言えます。

「働き方改革」により現場で何が起こったのか?(三井化学株式会社 片寄氏、小野氏)

政府が進める「働き方改革」の影響は大きいですが、人的資本が重要になってくる中で「働き方」が会社としても非常に重要だとういう認識を持っています。その中で、テレワークや副業についても当社にマッチした形での制度を構築しています。
働き方改革の現場への影響ですが、「時間外労働の上限規制」については、全社共通のガイドラインを作成し、過重労働防止はほぼ問題なく進捗しています。一方、課長層(管理監督者)の労働時間が、他階層よりも長くなっている傾向にあり、課題感もあります。「年次有給休暇の確実な取得」については、就業規則に年間5日以上の年休取得が必須の旨記載をしたり、個別に取得をフォローしたりすることにより、対応はできています。「働き方改革」の中で、現場の働き方も確実に変わってきていると実感しています。

【質問:厚労省職員】
副業について、お金の為なのか?スキルのためなのか?どういった業種で申請あるのかを教えてください。

【回答:人事担当者】
会社の意思としては、外を知りスキルを向上させて欲しいという考えがあります。業種についてはベンチャーや研究機関等の幅広い実績があります。

官民交流から見えたもの

JSHRMと厚労省のメンバーにて「働き方改革の推進における現状の課題と、それを解決するための方策は何か?」というテーマでグループに分かれてディスカッションを行い、ディスカッションの内容を全体で共有しました。

【Aグループ代表者】

若い世代に魅力に感じてもらう企業になるためには、色々な経験を積ませることができる環境を与えることが必要だという意見がありました。一方で、残業規制により、働きたい時に働けないというジレンマも課題ではないか?という意見も出ました。

【Bグループ代表者】

法規制として「働き方改革」を進めたことにより、多くの会社で「働き方改革」に関する制度が設けられました。次のステップではテレワークや年次有給休暇の取りやすい環境を運用面で整備し、従業員が「制度を使っていく」というマインドセットを醸成することが大事ではないかという意見が出ました。

【Cグループ代表者】

壮大なテーマになりますが、時間管理で物事を考えていくという世界観から、違うものをベースに賃金等を考えていくという転換期にきているのではないか?という意見が出ました。

株式会社千正組 千正康裕氏

企業の人事と厚労省の職員で普段扱っているものは違いますが、互いの課題感を共有できたのではないかと思いました。今後も共通の課題感を深く掘れるような場にしたいと考えていますので、引き続き宜しくお願い致します。

以 上

JSHRM編集員 中村 薫