第4回のラウンドテーブルでは、メンタルヘルスや健康経営をテーマとし、精神科医・産業医の尾林先生のご講演並びに質疑応答を行いました。

「企業における健康確保の取組」(精神科医・産業医 尾林誉史氏)

四谷にあるクリニックで院長をしており、現在19社で産業医をしています尾林と申します。多忙な状況ではあるのですが、元々リクルートで営業をしており、その時から自分が世の中の役に立ちたいという気持ちを大切に働いています。

産業医として衛生委員会やストレスチェックの実施等の法的な部分を満たすため支援だけでなく、問題を未然に防ぐことにも力を入れています。例えば、メンタルヘルスにおいては初期で対処できたり、予防したりすることが望ましいため、全員面談等を行っています。その時に企業内では産業医という名前を使わずに敷居を下げて従業員の本音を引き出す工夫もしています。全員面談をしている中での気付きですが、悩みが無いと思われる人でも話をしていると悩みが言語化され、本音が出てくることが多いです。また、人数が多いと面談のスケジュールがタイトになりがちですが、時間を十分にとることが非常に重要だと感じています。

精神科医の立場として最近感じることは、テレワークがメンタルヘルスに与える影響が大きいということです。特に新卒者や転職者は会社のカルチャーも分からず、人間関係が出来る前にオンラインで業務をすることになり、自分が役に立っているのか分からないという悩みを抱え、メンタル不調に陥る事も多くなっています。また、都内ではメンタルクリニックの初診予約が取れないというような事態にもなってきており、現場の実態からもメンタルヘルスの問題が広がっているということを実感しています。

【質問:人事担当者】
精神疾患に対して薬剤での治療が進んできたというニュース等を見ることが増えてきましたが、先生の実感としてはいかがでしょうか?

【回答:尾林先生】
薬剤の力はあると思いますが、患者さんの多くは「お薬をいつまで飲む必要があるのか?」と思われており、精神疾患の治療として薬を飲むことにネガティブな感情を持たれています。日本は特にその意識が強いので、投薬に対する意識を少しずつ変えていく必要があると考えています。

【質問:人事担当者】
人事の担当として、精神疾患を抱える従業員と面談をすることがありますが、産業医の視点から、人事に期待することをご教示いただきたいです。

【回答:尾林先生】
復職に向かう際の職場の細部については、産業医も分からないことが多いので、人事の協力が必要になります。例えば、部署異動が必要だと考えた場合に、その理由は説明できますが、各職場の実態までは把握出来ていませんので、再配置先等については人事の意見が重要になります。人事には各職場の人間関係を含めた実態をよく把握しておいていただきたいです。

【質問:人事担当者】
最近、オンラインで従業員面談をする機会が増えてきたのですが、注意すべき点はございますか?

【回答:尾林先生】
面談相手の気持ちを理解しているという事を分かってもらうために、リアクションを大きくする等の工夫が必要だと思います。面談においては、空気感も含めて情報が取れるリアルの方が望ましいですが、工夫次第ではオンラインでも面談はできると感じています。

以 上

JSHRM編集員 中村 薫